進行性卵巣・卵管・腹膜癌は治療抵抗性であり、治療の選択肢が限られています。

先日ミルベツキシマブソラブタンシンについての記事を書きましたが、ニュースで別のADC製剤を見かけたのでまとめてみました。

 

今回、FDA(米国医薬品局)がプラチナ抵抗性再発卵巣・卵管・腹膜癌の治療薬として、メソセリンを標的とする抗体薬物複合体(ADC製剤)であるRC88をファストトラック指定したようです。

 

 

 

ADC製剤とは、抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)のことで、新しい抗がん剤です。癌細胞に高発現する分子に対する抗体に抗がん剤などの薬を付加したものです。 抗体が癌細胞に発現する分子に結合する性質を利用して、抗がん剤をがん細胞まで運び、そこで薬を放出することで、癌細胞を死滅させます。ピンポイントで癌細胞を攻撃できるため、他の組織に対する副作用を回避しやすく、全体の薬物投与量を抑えられるといったメリットがあります。

 

ファストトラック指定とは、完治が難しい疾患に対し、高い治療効果が期待できそうな新薬をFDAが優先的に審査する制度です。

 

メソテリンとは、胸膜,腹膜および心膜腔の中皮内層の細胞膜表面に発現する糖蛋白です。膵癌、卵巣癌、悪性中皮腫、乳癌、肺腺癌などの悪性腫瘍に過剰発現することが報告されています。

 

RC88

進行卵巣癌ではメソテリンが高発現しています。RC88はそのメソテリンに対する抗体に抗がん剤である微小管阻害剤を結合させた薬です。メソセリンに高い親和性を有するため、メソセリンを過剰発現している卵巣癌細胞に特異的に結合し、腫瘍細胞を死滅させることができます。

 

臨床試験

2023年12月よりプラチナ製剤抵抗性卵巣がん患者を対象に、有効性、適切な投与量、安全性を検討するため、非盲検ランダム化非盲検第2相試験(NCT06173037)が実施されています。

 

 

第2相試験は2026年までを予定されています。新規のADC製剤が次々と出てきています。今後の動向に注目ですね!

 

 

 

参考文献: