今週腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術(Lap-PAN)の症例を経験しました。

忘れぬうちにエッセンスをまとめました。

 

Lap-PAN 保険収載について

  • 2020 年 4 月から子宮体がんに対する腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術が保険適用となりました。
  • 現在の適応は子宮体癌1A期のみで、ⅠB 期やⅡ期では保険適応は認められていません。
  • Lap-PANとして独立で行った場合にのみ保険算定できるため、子宮全摘や骨盤リンパ節郭清とともに行った場合は別に算定できません!現在適応拡大を要望している最中のようです。

開腹手術との比較

  • 本邦での再発中・高リスク子宮体がんに対する腹腔鏡と開腹の比較では、手術時間は有意差はなく、出血量は腹腔鏡群で有意に少なく、術中合併症に差はなく、術後腸閉塞は腹腔鏡群で有意に低く、リンパ節摘出数は腹腔鏡群で有意に少ない結果でした。
  • 再発率には有意な差はありませんでした。

 

後腹膜アプローチか?経腹膜アプローチか?

  • Lap-panのアプローチには後腹膜と経腹膜アプローチ法があります。
  • 術者の判断によるところもありますが、IVC右側・動静脈間リンパ節の郭清には経腹膜アプローチが適していると考えます。

 

術式

  • 準備物品:モノポーラーデバイス(プローベプラスなど)、エネルギーデバイス(ハーモニックやLigaSureなど)、カメラ(直視鏡と30度の斜視鏡)、トロッカー:5mm4本、12mmカメラポート1本、12mmエアシールトロッカー1本、直腸釣り上げ用の綿テープ、2-0プロリンの直針4本程度。⭐︎スネークリトラクター←腹膜を挙上させるのに有用。

Diamond-Flex® Retractors/Forceps - 株式会社ニチオン

スネークリトラクター

 

より引用

  • ポート配置:骨盤内操作時は臍に12mmカメラポート¥、右・下腹部正中に5mmトロッカー、左下腹部に12mmエアシールトロッカーを挿入します。PAN郭清時には下腹部正中を12mmのカメラポートに変更し臍を5mmのトロッカーに変更します。臍の左右に5mmトロッカーを追加します。

  • 右尿管と直腸の間の後腹膜を切開し、A層に入ります。左からも同様に左尿管と直腸の間の腹膜を切開しA層に入ります。直腸側腔を展開し、直腸後腔を展開します。直腸を綿テープで左側へ吊り上げます。
  • 右尿管と右卵巣堤索を同定しポート配置を②PAN時へ変更します。
  • 右の尿管を単離します。後腹膜を左右と正中の3箇所で腹壁へ吊り上げます。
  • リンパ管を腹膜から背側へ落とし頭側へ展開を進めます。この時スネークリトラクターを使用すると展開しやすいです。Gerota筋膜を同定し左右の郭清端を決定します。右卵巣静脈を同定し下大静脈流入部で処理します。
  • 大動脈の長軸に沿って血管鞘を切開します。左腎静脈を同定します。左卵巣静脈はクリッピングしておきます。
  • 下大静脈も長軸に沿って血管鞘を切開します。頭側端はクリッピングして切断します。
  • 下大静脈右側→同静脈間→大動脈左側の順に郭清します。

 

 

参考文献

Tanaka T, et al : Comparison between laparoscopy and laparotomy in systematic para-aortic lymphadenectomy for patients with endometrial cancer : a retrospective multicenter study. J Gynecol Surg 33 : 105- 110, 2017

臨婦産・77 巻 2 号・2023 年 3 月 腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術 の安全な施行のために