今回顆粒膜細胞腫を経験しました。

比較的稀な疾患ですが時々経験します。

その都度勉強してはまた忘れたころにやってくるという印象です。

どうやら婦人科腫瘍専門医試験の頻出項目のようなので基本事項についてまとめました。

 

まず顆粒膜細胞についてですが、卵胞は図のように顆粒膜細胞、莢膜細胞、卵子からなります。

顆粒膜細胞は女性ホルモンであるエストロゲンを分泌します。

顆粒膜細胞腫は卵胞の顆粒膜細胞に似た形態の細胞が増殖する腫瘍です。

 

  • 顆粒膜細胞腫は卵巣悪性腫瘍全体の 2.7%を占めます(婦人科腫瘍委員会年報(2013-2017))
  • 性索間質性腫瘍のうち、純系型性索腫瘍に属します。
  • 成人型と若年型に分類され、成人型が95%を占めます。
  • 成人型は境界悪性腫瘍として取り扱われてきましたが、WHO2014分類からは低異型度の悪性腫瘍と明記されており悪性腫瘍として取り扱う必要があります。
  • 卵胞の顆粒膜細胞が起源として考えられ、FOXL2の体細胞変異(402 C to G )が90%以上に認められるのが特徴です。
  • 様々な年齢に発生しますが、閉経期前後が好発年齢です。
  • エストロゲンを産生するため、若年発生では思春期早発、成人発生では月経異常や不正出血をきたします。
  • エストロゲンにより子宮内膜増殖症や子宮内膜癌を合併することもあります。
  • 片側性が多く破裂や茎捻転による急性腹症として発症することもあります。
  • 腫瘍は充実性で嚢胞部分も含み、黄色調の柔らかい腫瘍であることが多いです。
  • 病理では小型の顆粒膜細胞がびまん性に索状構造またはシート状構造で増殖します。好酸性構造物を取り囲みロゼット状に配列するCall-Exner bodyが有名な所見です。腫瘍細胞の核はコーヒー豆様の縦溝を呈します。
  • 血中エストラジオール上昇は必発ではありませんが、高値の場合は腫瘍マーカーとして有用で腫瘍残存や治療効果判定、再発診断に応用できます。
  • 20-30%で晩期再発を認め、中には10年以上経過してから再発することもあります。
  • リンパ節転移はまれなため、リンパ節郭清術は省略できます。
  • 再発リスクの高い症例(残存病変がある、腫瘍が10-15cm以上と大きい、腫瘍の破綻、進行している、など)ではTC療法などで化学療法を行います。

 

 

参考文献

一冊でわかる婦人科腫瘍・疾患 文光堂

卵巣癌・卵管癌・腹膜癌ガイドライン2020