今回子宮体癌の脳転移の症例を経験しました。

一般的に、肺がん、乳がん、悪性黒色腫などは脳転移を比較的起こしやすい癌腫ですが、子宮体癌からの脳転移はまれであり、報告は少ないです。

今回患者さんへ治療法や予後について説明を行うにあたって論文検索したところ、子宮体癌の脳転移のみをまとめた論文を見つけましたのでご紹介したいと思います。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33321250/

 

2008年から2018年までにアメリカのスタンフォード大学病院を受診した、子宮体癌による脳転移患者30人についての論文を読んでみました。

  • がん患者全体の10~30%が脳転移を起こすと推定されています。
  • 脳転移を有する全患者のうち、 子宮体癌に起因する割合は0.84%でした。
  • 診断時の年齢中央値は62歳(39~79歳)、全生存期間(OS)中央値は6.8ヵ月(1.0ヵ月~58.2ヵ月)でした。
  • 70%の患者に頭蓋外転移を認め、頻度の多いものには肺転移 (50.0%)、骨転移(36.7%)、肝転移(20.0%)がありました。
  • 子宮体癌と診断されてから脳転移が発生するまでの期間の中央値は20.8ヵ月(1.4ヵ月-11.2年)でした。
  • 脳転移個数の中央値は2個(1-20個)でした。
  • 最も多かった症状は、脱力(33.3%)、脳神経麻痺(26.7%)、運動失調( 26.7%)でした。
  • 組織型による生存率に差はありませんでした。
  • 治療は93.3%の患者が放射線治療を受けていました。

 

今回経験した症例はこの論文で頻度の多い頭蓋外転移と同様に、肺転移を認めていました。幸い症状はなく元気に過ごされています。治療としては放射線治療を選択しました。