当初は、子宮体癌の腹膜播種(つまりⅣB期)を疑っていましたが、審査腹腔鏡を行い生検したところ、悪性腹膜中皮腫であった症例を経験しました。

悪性腹膜中皮腫は比較的まれな疾患と思いますのでまとめてみました。

 

悪性腹膜中皮腫

  • 中皮細胞は胸膜、心膜などと共に、腹膜を作っている細胞です。この中皮細胞ががんになると悪性中皮腫と呼ばれます。
  • 胸膜の中皮細胞ががん化したものを悪性胸膜中皮腫、腹膜の中皮細胞ががん化したものを悪性腹膜中皮腫と呼びます。
  • 本邦の悪性腹膜中皮腫の発生頻度は年間85人で全中皮腫の10 %を占めます。
  • 生存期間中央値は12か月5年生存率は19.4 %と極めて予後不良です。
  • 悪性腹膜中皮腫は腹腔内に多発する腫瘤と腹水を生じるために卵巣癌や腹膜癌などの固形癌の癌性腹膜炎との鑑別が難しい場合があります。実際今回も術前には子宮体癌の腹膜播種と考えていました。
  • 腹膜悪性中皮腫の報告は医中誌で2000年以降103例に認めました。
  • 男性 55 例(53%)、女性 48 例(47%)  平均年齢は 65(21~90)歳でした。
  • 胸膜中皮腫ではアスベスト曝露が主要な原因とされているが、腹膜中皮腫でも関連性が示唆されている。
  • 術前に中皮腫の診断がついたものは 24 例(23.3%)であり、術前診断が難しいことがわかります。
  • 本邦では悪性腹膜中皮腫のガイドラインがなく、悪性胸膜中皮腫に準じて治療を行っているのが現状です。
  • シスプラチン+ペメトレキセド併用療法が行われることが多いですが、上述したように予後不良であり新規薬剤の開発が望まれます。
 
日本では悪性腹膜中皮腫を適応症とする薬はなく、悪性胸膜中皮腫に準じた治療が行われています。海外では免疫チェックポイント阻害剤を使用した治療やCAR-T療法も使用されており、日本での新規治療法の治療導入が待たれます。