ガチャストーリー〜織田 信長〜

【今夜、魔王に「おやすみ」を】


(……、ん……)

まぶたに何が触れた気がして、目を開く。

:

()

横たわる信長の目の前に、真っ赤な舞の顔が迫っていた。

舞は慌てたように身体を起こし、目を逸らす。

(一体、何事だ)

起き上がって眠気を振り払い、寝入る前の記憶をたぐりよせる。

どうやら、舞の膝を枕にふたりで月見酒をするうちに、いつの間にか眠ってたらしい。

(また、これか)

信長:俺は今宵も、貴様の膝で眠っていたのだな


:はい

(「はい」ではない)

信長:俺が眠りかけたら起こせと、再三言っているだろう

:気にせず眠ってくださいっていつも言ってるじゃないですか

信長:それがいかんと言っている。貴様とここで共に暮らすようになってから俺はやたらと寝付きが良くなってしまった

:良いことじゃありませんか。前は眠らなさすぎでしたから

信長:まったく、良くない


(舞の膝はこの上なく良い枕だと思っていたが、考えを改めねば)

信長:寝入ってしまっては貴様を抱けん

:えっ……

月明かりの下で、舞の頬が赤く染まった。

:そんな理由で「寝たら起こせ」ってお命じになったんですか

信長:他に何がある

(貴様に触れるひとときは、俺にとって何にも代えがたい)

(一刻たりとも無駄にできるか)

憮然として眉をひそめると、舞がはにかみながら微笑んだ。

:信長様は知れば知るほど、困った方ですね……?あ……

不意に、舞がこちらへ腕を伸ばした。

()

髪に触れられ、意図に気づく。

(寝ている間に乱れていたか)

信長はわずかに身を屈め、舞のさせたいようにさせた。

優しい手つきで、舞が髪をそうっと梳いた。

:はい、もういいですよ

信長:…ああ


身体を起こすと、舞の満面の笑顔が目に飛び込んできた。

信長:どうした

:以心伝心ですね、今の

信長:

:何も言わなかったのに私の考えてることわかってくれて、嬉しいです

(…………)

(そんなことが嬉しいとはな。相変わらずこの女には驚かされる)

胸に火をつけられ、じりじりと煽られる。

(だが……)

信長:俺は、貴様のことを何もかも見通してるわけではない。俺が目を覚ます直前、何をしていた?

:えっ?な、何のことでしょう

信長:とぼけるな

:……

顎をすくい上げ、鼻先を近づける。

信長:まぶたに何かが触れていた。俺に貴様は何をした?


:そ、それは……

耳まで赤く染め、舞が気恥ずかしそうに目を逸らす。

:おやすみの……口づけ、です

(なんだと……)

(まったく、俺の寝ている間に何ということを…)

くすぶってい胸の火が燃え上がり、衝動に変わる。

(舞がそばにいるというのに、寝入るなど本当に不覚だった)

(夢など見ている暇はない)

信長:この俺に勝手に口づけるとは、言語道断だ


:怒ることないじゃないですか

信長:いいや、怒る。口づけるなら、俺が目を覚ましている時にしろ

:……

信長:でないと、貴様に仕返しができんだろう


にやりと笑い、舞の腰を荒々しく抱き寄せる。

:……

倒れ込んできた身体を受け止め、間髪入れずに唇を塞いだ。

:

舞は一瞬、身を強張らせたけれど……すぐに信長の首に腕を回して、口づけにおずおずと答えた。

:んん

(…)

(何度こうしても足りん)

(口づけるほど、俺は貴様に飢えていく)

はぁ、と息を漏らし、同時に唇を離す。

ふたりでこうしていると、時々互いに呼吸を忘れる。

信長:貴様に「おやすみ」を言われるのも良いが、今宵はまだ早い

:……

舞を軽々と抱き上げ、立ち上がる。

そのまま歩き出すと、舞は信長の頭をぎゅっと抱きしめ返した。

:もう、眠くないんですか?

信長:ああ

:お月見の途中でしたけど、それも、いいんですか?

信長:月より、貴様を愛でることにした

(どんな名月より、寝床で乱れる貴様の方が美しい)

信長は月明かりを頼りに、明かりの消えた部屋へ足を踏み入れると、舞をそっと布団へ寝かせ、組み敷いた。

:……信長様

信長:どうした

しゅるり、と帯を解きながら、舞を見下ろす。

舞は信長の方をぎゅっと掴んで、切なげな眼差しを返した。

:本当は、ちょっとだけ……

(……)

:あながが先に眠って、寂しいって思ってました

(………)

(この女……愛らしいにもほどがある)

信長:決めたぞ。二度と、貴様の膝を枕にはせん


信長は力強く宣言し、着物をはだけさせ、舞のうなじにやんわり噛みついた。

:……っ、そ、こまで、言わなくたって

信長:いいや、決めた。貴様より先には、決して眠らん

囁きながら、手のひらを脚に這わせる。

:んっ

媚薬のような甘い声が理性を奪い、熱を加速させていく。

(俺が眠ってる間に、舞がどれほど愛らしい言葉を吐くか、どんな顔をして、何を想うか見逃すのが惜しくてならん)

焦りすら覚えながら、舞の脚を持ち上げ、やわらかな内側の皮膚に歯を立てた。

:……っ、待っ、て、ください。困ります

信長:何も困らん

:もうっ、困るんです

かぼそい抗議の声を聞き、しぶしぶ甘噛みを休止する。

信長:何がどう困る


:私は……「おやすみ」を言うのも、好きなので

(……

:あなたがぐっすり眠ってる顔を見てると本当に幸せな気持ちになるんです。だから時々なら、先に寝てもいいです

(…まったく)

信長:貴様、ずいぶん我儘をいうようになったな

:信長様ほどじゃありません

信長:それは認めてやる

笑い合った後、ゆっくりと脚を押し開いて、再び口づけた。

:っ、あ……

舞のつま先がびくっと跳ねるけれど、容赦はしてやらない。

(もっとわがままを言うが良い)

(そのたび俺も、幸福になる)

舞のやわ肌は火照り切って、触れれば崩れそうだった。

:信長、様……

涙目で見下ろし、乞うように舞の腕が伸ばされる。

信長は身体を起こすと、応えて口づけをし、胸を重ね合わせた。

(……)

狂おしい熱にふたりで身を溶かし、抱きしめ合う。

愛おしさが溢れてやまない。

(この思いが尽きる日など来ないだろうな)

(何度舞と共に眠り、目覚め、口づけを交わそうと…)

(俺は永遠に、舞が愛しい)

舞が腕を伸ばし、信長の髪に指を埋める。

さっきは優しく梳いた指先が、抑制を失い、今度は髪をくしゃくしゃに乱した。

信長:……


:……………

信長:……貴様は、俺の全てだ


囁いた途端、舞は口元に笑みを浮かべ、同時に涙をひと粒こぼした。

幸福な証の雫を、唇ですくい上げその夜はいつまでもおやすみは言わずに、愛を交わした。