イケメン戦国 伊達 政宗

本編 ご褒美ストーリー⑦

【烈しく燃える炎のように】


政宗:安土に帰ったら連れ出す難易度が上がるだけだ。今攫わなくていつ攫うんだよ



(信長様の前でそんな……)

信長:ほう。面白い、やってみろ



信長様は怒るでもなく、この展開をむしろ愉しむかのように笑みを深くした。

:わっ!?

私を抱えあげると、政宗はうやうやしく一礼する。

政宗:では、しばしお暇を頂戴致す



言うが早いか、政宗は愛馬へ私を乗せて飛び乗り、止める間もなく駆け出した。

信長:追え、逃すな

背後から、どこか笑いを含んだ信長様の号令とともに、数頭の馬の蹄の音が聞こえる。

政宗:追っ手がかかった、急ぐぞ

愉快げに笑いながら、政宗がさらに脚を締め、馬は速さを増す。

(ま、まさか本当に攫って逃げるなんて)

:ま、政宗!大丈夫なの!?政宗の家臣たちもまだ残ってるのに!

政宗:こんな時まで自分は二の次か。あいつらになら、ちゃんと指示はしてある。大丈夫だ

そもそも本願寺の一件で、信長様を狙った顕如の討伐のために俺たちは招集されたんだ。その件が解決した今、同盟相手の居城に長々居座る理由もない

:そ、そっか

政宗:まあこれは、信長様との鬼ごっこだと思えばいい

追って:待て!

追っ手が馬上から何かをこちらへ向けて投げかける。

(縄!?鬼ごっこに縄はルール違反じゃない!?)

政宗:おっと

私たちを捉えようとした縄を、政宗が鮮やかに斬り捨てた。

:お、お見事……

政宗:どうも。舞、捕まれ

:え?わっ!

太い木の根が道に張り出しているのを、政宗の愛馬が軽々と飛び越していく。

追って:くっ……

政宗:まだついてくるか

追っては数を減らしたものの、ニ、三の騎馬がまだついてきてる。

:あ、そうだ

私は胸元に隠していた、佐助くんがくらた煙玉の存在を思い出した。

(縄がOKなら、これもルール違反じゃない……よね)

政宗:なんだ、それ

:これはね……こうやって使うの

(追っ手の皆さん、ごめんなさい)

心の中で謝りつつ、煙玉を力強く地面に叩きつけた。

追って:うわっ!?

ぶわっと煙幕が立ち込めて、追ってはひるんで馬の歩みを緩める。

またたく間に、追っ手と煙幕は後方へ遠ざかっていった。

:……これにて、ドロン

政宗:っはは!

佐助くんの決め台詞を思わず口にすると、政宗は愉快そうに笑った。

政宗:これで立派な共犯者だな

(怖がって、部屋に閉じこもろうとしていたあの日が嘘みたい)

(戦国時代は、楽しい)

(政宗と一緒なら)

気づけば私も、一緒に声をあげて笑っていた。

光秀:珍しいですね、信長様があのようなお戯れをなさるなど

信長:あれの怯える顔もしばし見納めと思えばだ



信長は二人の去って行ったほうを見やり、くつくつと喉の奥で笑う。

秀吉:政宗はともかく、舞には酷なのでは?本気にして怯えているかも

家康:案外、一緒になって楽しんでると思いますけど



光秀:そうだな。舞がそんな殊勝な小娘なら、政宗が惚れてなどいまい


それからしばらく馬で駆けてから、ようやく政宗は馬を止めた。

街道から大きく外れたその場合は、人影どころか、民家の明かりすら見えず、幻想的なその光景に、この世界に二人きりだと錯覚しそうになる。

政宗:ったく、本格的に追ってきやがって

:けっこう遠くまで来たね喉乾いちゃった

政宗:図太くなったな、お前

:政宗のおかげでね

顔を見合わせると、再び笑いが込み上げた。

走り通しの馬を休めるため、ふたりで草の上に降りる。

政宗は馬をねぎらって、水場へ連れて行った。

(夜風が気持ちいい……)

政宗:

風に目を細める私を、戻ってきて政宗が引き寄せる。

政宗は慈しむように私の髪を梳くと、顔の輪郭をつ、と指でなぞった。

政宗:攫われた気分はどうだ、お姫様



:……すごく幸せ

答えた私の唇に、政宗の指先が触れる。

政宗:俺もだ



熱を帯びた政宗の眼差しに、じわりと身体の熱が上がる。

:……

ゆっくりと重なった唇は、触れるほどに飢えるようで、すぐに深くなる。

あっという間に身体の芯がとろけて、政宗にすがる指先に力がこもる。

舌が擦れ合うたびに、甘えるような声が勝手に漏れた。

:ん、ま、って……ここで……

なけなしの恥じらいが、理性を放り出すのをかろうじて止めていた。

政宗:どこならいいんだ?

私の下唇をやわく噛みながら、政宗が尋ねる。

:宿とか、ん、壁がある、っところ

やまない口づけに、途切れ途切れに言葉を紡ぐけど……

(自分で言っておいてなんどけど……全然説得力ない)

政宗:そこまでお預けでいいんだな



:ふあっ

尋ねながら、政宗が首筋に甘く噛みついた。

びくっと身体か跳ねて、お腹の奥が熱く疼く。

:ま、さむねは、どうっなの?

政宗:お前が待てって言うなら

:……ふっ、う……

つつ、と政宗の唇が首筋から耳元へ肌をたどる。

じれったい刺激に、思わず吐息がこぼれて、足元から崩れ落ちそうになる。

(うう……)

政宗の指先が、乱れた裾の奥、期待に熟れた脚の上をなぞる。

もっと奥まで、触れて欲しい。……今、すぐ。

恥じらいと欲の間で、政宗の感触だけがどんどん鮮明になっていく。

(言えない)

(待って、なんて)

政宗:……、嘘だ



私の乱れた吐息の狭間、余裕のない政宗の声が、不意に聞こえた。

:……、え

政宗:待てない。もっとお前に触れたい、今すぐ

:………

なけなしの理性が陥落する。

(いつも、いっぱいいっぱいの私を、余裕でからかうばっかりの癖に)

(なんで……)

はあ、と、静かに政宗がこぼした熱い吐息が、私の胸元に落ちてぞくりと身体が震えた。

:……ど、して……

政宗:お前を

ひた、と私を見据えた目は、戦場で見たあの目のように、静かに、烈しく、燃えている。

政宗:特別だと思った理由を、思い知らされた

:

政宗:惚れ直したって、言っただろ



ついに脚からふっと力が抜けて、崩れる私の身体を、政宗の腕だけが支えている。

政宗:……あんな大声で、好きだ何だ叫んでおいてこういう時だけ、黙るなよ

幼な子をなだめるような、優しい声で囁いて、政宗がもう一度唇を塞いだ。

(だって、こんな気持ち……….、どんな言葉も、違う気がして)

:ぁ、あ………、んん!

望み通り、政宗の指先に、疼く熱の中心を暴かれると、それだけで全身の熱が膨れ上がって、弾けるように頭が真っ白になる。

:あ、やひあっ

陶酔する間もなく弱いところを責められて、思わず政宗の首筋に爪を立てた。

:…………………….……好き、政宗

じくじくと熱に苛まれながら、うわ事のように何度も囁くけれど、どれだけ言っても身体の中で渦巻く感情のほんの一欠片も伝わらない。

:好き政宗、愛してる

もどかしくて、にじむ涙を、政宗の唇が拭った。

政宗:わかってる



:あ、

どめどないな言葉を飲み込むように、政宗がまた唇を食んだ。

:ん、んん……っふ、はあっ

熱い手のひらが私の身体を探るたびに、歓喜に喘ぐ私の呼吸が言葉よりも何よりも、この気持ちを伝えてくれる気がした。

政宗:愛してる。誰にもやらない。お前の吐息も、声も、血の一滴すら



違いを立てるように、政宗が囁く。

これ以上、言葉は無意味に思えた。

あとはただ、お互いの熱をその身に刻みつけるように、私たちは月明かりの中、飽きもせず求めあっていた。