イケメン戦国 伊達 政宗

本編 ご褒美ストーリー④

【追いかけっこの結末】


:ひ、卑怯だ……

政宗:捕まえたら離さないって言っただろ?


(なっ……)

ふん、と得意げに笑う政宗を見て、ドキッと鼓動が跳ねる。

ただそれだけのことでときめいてしまう自分に、ため息が漏れそうだった。

(……重症だな、私。政宗のこと、好きすぎる)

政宗:帰りたかったら、俺から奪い返してみな

私の気持ちなんてつゆも知らず、また政宗が挑発してくる。

:……けが人だからって、容赦しないからね

政宗:おー怖い。やってみろよ

(あっ)

草履へ手を伸ばすと、政宗がひらりと一歩引いた。

:……っ、待って……

政宗:待たない。欲しかったら、追いついてみな

(……っ、もう!)

余裕の表情でこちらを振り返りながら、政宗が御殿の廊下を小走りに駆けていく。

:あんまり走ると、傷に障るんじゃないの……っ?

政宗:いや、まったく。痛くもなんともないな

それよりどうした?けが人だからって容赦しないんじゃなかったのか?

:……

(たしかに、言ったけど)

意外と広い子御殿の中を駆けまわってるうちに、だんだん息が切れてきた。

(前に、政宗に追いかけられたことあったっけ)

(今度は、私が追いかけてるってなんか、変なの)

懐かしい記憶が、頭をよぎる。

(そうだ。たしかあの時、キスされるのが恥ずかしくなって)

(ようやく、政宗に恋をしてることに気づいたんだった)

遠くなる背中を追いかけながら、焦がれる気持ちがどんどん強くなる。

(追いついたら、抱きしめてほしいいっぱい触って欲しい)

(……好きだって気がついた、あの時よりももっと政宗のことが好きだ)

(……もっと、ずっと……好きだ)

御殿中を駆け抜けて、結局、政宗の部屋に逆戻りした。

(いまだ!)

政宗の着物に、指先が届いて、すかさず掴んで引き寄せ、政宗の背中にぎゅっと抱きついた。

:……っ、捕まえた!

息を切らして顔を上げると、愛おしげな眼差しと視線が絡む。

政宗:捕まってやったんだよ


呼吸を乱しもせずに、政宗が囁く。

艶を帯びた声に、きゅうっと胸の奥が締め付けられる。

政宗:ほら、草履、返してやるよ

:……っ、いらない、よ

政宗:何だ、いらないのか。必死に追いかけ回しといてじゃあ、何が欲しいんだ?

罠に掛かった獲物を眺めるように、政宗は楽しそうに笑った。

:それは……

(……ああもう、こんなの、政宗の思う壺だ)

きっと政宗は、私の気持ちを見抜いてる。

私が捕まえたらはずなのに、いつの間にか立場が逆転していることに気づく。

(ほんと、たちが悪い)

(捕まえたら獲物を食べる前に……弄んで、楽しんでるんだから)

政宗の着物を握ったままの手に、きゅ、と力が入る。

心の中でいくら反抗しても、胸に湧く愛しさは、もう止められそうにない。

:……政宗が 政宗が欲しい

言葉が選べずに、直球な物言いになってしまった。

赤く染まる頬を、隠す余裕すらない。

政宗:……よく出来ました


満足げに笑う政宗の手が、私の身体に触れる。

ただそれだけで、おかしくなりそうなくらい、歓喜に胸が震えた。

政宗:お望み通り、全部お前にくれてやる


:んっ

唇を塞がれ、乱れた呼吸ごと奪われた。

舌が柔かな隙間をまさぐって、甘い水音が耳に響く。

:んっ……

手足を絡ませるようにして、敷布団の上にもつれるように倒される。

政宗の舌先が、気持ちいいところばかり刺激して、唇の隙間から、吐息がこぼれ落ちた。

政宗:威勢よく宣言したわりには、その程度か


(……)

ふいに唇を離した政宗が、悪戯っぽく囁やいてくる。

形のいい唇が、私の耳元へと降りてきた。

政宗:もっと、欲しがれ


:………

低く艶めいた声に、鼓動が震えた。

視線を上げると、政宗の青い瞳が私を据える。

(……欲しいよ、ぜんぶ)

愛おしさが、恥じらいを拭い去っていく。

:……っ、

鎖骨にやわらかく歯を立てられ、するりと喉から甘い声が滑り出た。

びく、と跳ねた腕を持ち上げて、政宗の襟足をくしゃりと握る。

政宗:可愛い反応。ちょっと前まで、口づけひとつで騒いでたのに


ちゅ、ちゅ、とわざと音を立てて、政宗は鎖骨から耳元へたどるように口付ける。

:ぁ、それっ、は……、恋人でもないのに、政宗が、してたから

かすかな刺激に言葉を途切れさせながら、反論する。

政宗:じゃあ今はいいのか、俺の好きにしても


(……)

からかうように口角を上げて囁かれ、また心臓が跳ねた。

大人しく口を閉ざした私を見て政宗の目が一際、熱を増す。

政宗:お前のそういう顔、いいな

:っ、そういう、顔って……

政宗:恥ずかしくてたまんないくせに、俺が欲しくてたまりませんって顔。わけわかんないくらい可愛い


(……そんな顔、してるんだ)

政宗の目に自分がどう映ってるのか、想像するだけで全身沸騰しそうになる。

:うんそうだよ。私、政宗に何されたって嬉しいの

政宗:……

政宗の襟足から、うなじへ指を滑らせて、引き寄せる。

:好き……政宗が好き。大好きだから

(もっと、もっと欲しい)

(政宗がくれるもの、なんでも嬉しい)

:どうなってもいいくらい愛してるから私を、政宗のものにして

政宗:……っ、ばか


唸るように短く言って、政宗が私の唇に噛みついた。

:っ、ん、んん

荒く着物を乱した指が、身体の一番熱い場所に触れた。

その直後、甘美な刺激が私の全身を駆け巡る。

あふれてくる声と一緒に、涙で視界が滲んでいく。

政宗:泣くな可愛いから

:……っ、だって、嬉しくて、止まらないの

政宗の手が私に触れて、私も政宗の身体に触れられる。

(それが嬉しいから)

私を見つめる政宗の顔が、穏やかにほころんだ。

政宗:ほんと、可愛いやつ


:……

また柔らかく、唇が重なる。

優しい熱に包まれながら、私は政宗にすべてをゆだねた。

(…)

抱き合ったままどれくらいの時間が経ったのか、目覚めた時には、月明かりが煌々と辺りを照らしていた。

政宗:起きたのか

起きて見ていた政宗が、縁側から顔だけでこちらを振り返る。

政宗:そのまま寝てろよ。月が空にあるうちは、城に帰すつもり、ないからな

:……私も、帰るつもり、ないよ

寝床から出て、政宗の隣に座る。

政宗はやけに真剣な顔で、何か考え事をしているようだった。

:……どうかした?

夜空に浮かぶ満月を見つめ、政宗は静かに口を開いた。

政宗:舞、俺は、戦うことをやめる気はない

:……?うん、わかってる

政宗:だからお前は、俺のそばにいる限り、また怖い思いもするだろうがお前の手は、絶対に汚させない。勝手に死ぬのも許さない。お前のことは、俺が守る。だからお前は、俺のそばにいろ

:……うん

(これから先、また、どんな危険なことがあっても…)

(政宗と一緒なら、きっと大丈夫)

隣にある政宗の手に、そっと自分の手のひらを重ねた。

:政宗こそ勝手に死んだら許さないからね

政宗:……生意気

くすりと笑って、政宗が静かに手を握り返してくれる。

今は一秒でも長く、触れ合っていたかった。

(どんな未来が待っていても、私は政宗のそばにいたい)

(ずっと……)