[大好きがあふれてる。1/10]
変わり映えのない毎日の中で小さな幸せを見つけては、2人で分け合う。
そんなふうに、私とリクは穏やかに恋を育てていた。
(まだ、帰って来てないみたい)
[映画の撮影今日で終わりなんだ。頑張った俺にご褒美ちょうだい]
リクからそんなメールが入ったのは今日の昼過ぎのことだった。
仕事を終え誘われるままリクが泊まるパラダイススイートを訪れた私は、彼を待ってソファへ落ち着く。
(忙しいそうだから連絡しないようにしてたけど…映画の撮影、うまくいったのかな)
(…ううん。うまくいった。だってリクはこの間…)彼が私だけに打ち明けてくれた秘密話を思い返す。
[夢を抱いて、キラキラ輝いてる彼には悪いけど…俺引き立て役にはなれなさそう。主役を食うつもりで演じる。]
(あの時リクは、共演者のまぶしさに、ほんの少しひるんでたんだと思う)
(だけど引き立て役にはなれないって言ったリクの顔は、吹っ切れたみたいに良い表情だった)
そんな彼が臨んだ映画は、抜群の仕上がりに決まってる。
一人結論づけたところで、部屋の鍵が開く音が聞こえてきた。
リク:ただいまー。リンカちゃん?
私は、ソファを立ち、帰ってきたリクに駆け寄る。
リンカ:お疲れ様です。
クランクアップの際にもらったのであろう、大きな花束を手に、リクは両腕を広げてみせた。
リク:はい。ご褒美。
リンカ:ふふ…っ
満開の花びらに誘われる蝶のような気分で彼の胸に飛び込んだ。
リク:待たせてごめんね。
リンカ:ううん
ぎゅう、と抱きしめてられて、私も抱きしめ返す。
ため息をついたのは示し合わせたかのごとく同じタイミングだった。
リク:はぁ…癒される。
[大好きがあふれてる2/10]
リンカ:そう?
リク:うん。リンカちゃんあったかいし、いい匂いするし。後、全体的に柔らかい。
(全体的にって、何…)
リンカ:その言い方、なんかやらしい。
変な言い回しをするリクの背中を、手のひらでペチと叩いて抗議する。
リク:そういう想像しちゃうリンカちゃんがやらしい。
(もう…)
茶化す彼に対抗する術は、素知らぬ顔をしてみせることだけだ。
リンカ:このお花すごく豪華だね。それにいい香り…。
リク:あ、話そらした。こうなったら花束にはご退場いただこうかな
リンカ:え?あ
リクは花束をそっとテーブルへ置いた。
リンカ:待ってリク。早く花瓶に入れなきゃ
リク:うん。後でお願い
リンカ:後って…
しれっと花を後回しにしたリクは、離れかけた私を満足げに抱きしめ直す。
リク:今は俺がご褒美もらう時間だから。
花に水より俺にリンカちゃんでしょ。
リンカ:…うまいこと言った、って顔してる
リク:ぐっとこなかった?
リンカ:きたけど…
リク:俺も。言ってからすごくしっくりきてた。
ご機嫌なリクに抱きしめられながら、私はそれでも気になってしまう。
リンカ:このお花現場でもらってきたものでしょ?
リク:クランクアップお疲れさまーってやつ
(そうだよね…ってあれ?撮影最終日だったってことは…)
リンカ:リク、クランクアップしたなら、打ち上げとかあったんじゃ…
(それにしては早く帰ってきた気が…行かなくて良かったのかな)
リク:んー
リクは少し考えるそぶりを見せる。
リク:それも説明しないとダメ?
(え…)
あごを取られた私の唇はリクにふさがれていた。




