最後の恋
三浦しをん・谷村志穂・阿川佐和子・沢村凛
柴田よしき・松尾由美・乃南アサ・角田光代
2021/03/06
★ひとことまとめ★
過去の恋を思い出しながら読みました
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
この想いはきっと、人生に一度しかおとずれない奇跡――誰の胸にも永遠に輝きを失わない恋がある。女性作家8人が磨きあげた、宝石箱のような恋愛短編集。
【感想】
図書館パトロールしているときに、アンソロジーが読みたくなって借りました
どの作者さんのお話も読みやすかったのでサクッと読めました
中でも良いと感じたお話のあらすじを書きます
・海辺食堂の姉妹(阿川佐和子)
海沿いの町のはずれにある、こぢんまりとした一軒の食堂。
かつて、脱サラしてこの地にやってきた夫婦がこの地を気に入り、廃屋を立て直し食堂にしたのが始まりだった。夫婦とその二人の娘の努力により、町一番とは言わないものの、そこそこに評判のある食堂として繁盛していた。
二人の姉妹は性格が真逆で、明るくて社交的な姉と極度の人見知りの妹。体に不調の出てきた両親に代わり、客からの評判も良い姉が接客を行い、母から料理の技を教え込まれた妹が料理を担当。両親は二人がなかなか嫁に行かないことを心配しており、特に人見知りの激しい妹のことが気がかりだった。
そんなある時、母親が心臓発作で亡くなってしまい、後を追うように父親も亡くなってしまう。
両親を亡くした姉は気丈にふるまうが、物事を悲観的にとらえてしまう妹は過労がたたり高熱を出して寝込んでしまった。
シェフがいなければ店も開けられないため、食堂はしばらく休業せざるを得なくなってしまった。
妹が熱を出して4日が経ち、まさか妹まで亡くなってしまうのではと考え心細くなる姉。こんな時に頼りになる男性がいてくれたらどんなに心強いか…そう考えているところに、農場主の息子がやって来る…。
→男性とは縁もなさそうな妹が実は…というのが面白かったです 小さな町の中だったら、複数の男性と関係を持っていたらバレそうな気もするけれど、それがバレないというのもすごい…計算高い女だ…
妹の心配をしていた姉のほうが、実は妹に心配されているという。
作品の中で母親も姉も妹が男性と縁がない、とても恋愛なんてできなさそう、と思っていましたが、現実でもこういうことありますよね。
友達の中で結婚が早かった子って、学生時代あんまり恋愛っけがなかった子が多い気がします
見た目とか自分の印象だけで人は判断しちゃいけないですよね~
阿川佐和子さんってテレビで見ているとなんとなく苦手なイメージがあったのですが、作品は好きです。わかりやすくて、快活なイメージです。
・スケジュール(沢村凛)
天音妙の特技は、自分のやるべきことについて、スケジュールを立ててそれを守ることができること。学生時代の夏休みの宿題も8月24日には終わらせるようスケジュールを立て、実際毎年24日には終えていた。
そんな天音が人生最大のスケジュールを立てたキッカケは、高校時代の友人・チャコ、いでっちとの年1回の集まりの際の会話だった。
22歳の時の集まりの際いでっちの言った、「現代は恋以外にもたくさん感情をたかぶらせるものがあり、しょっちゅういろんな人に恋をしている必要はない」ということ、そして、23歳の時の集まりの際チャコの言った、「好きになっちゃいけない人を好きになりそうになったときは、相手の生理的に引いちゃいそうな部分を見る」。
二人の発言をもとに、妙は、「24歳の前半くらいまでに恋をしなかったり、その恋が短く終わるようなら、予定の年齢をひとつずつ上げる。でも、予定通りこの時期に恋をして、相手も私との結婚を望むようなら、それを最後の恋にする。
その後の人生で思いがけない恋愛をして、誰かの足元をすくうようなことはしない。恋をしないと心に決めて、油断なく感情の防波堤を築いておく。」と決める。
24歳の誕生日からほどなくして恋人のできた妙。順調に1年が過ぎ、妙は25歳になり、着々と自分の立てたスケジュール通りに人生が進んでいたはずだったが…。
→私はまったくスケジュールどおり進められない人間なので、自分の決めたスケジュール通りに物事を進められるというのはすごいなあと思いました
ましてや、人生の計画なんて…もっとまじめに高校生くらいからどんな人と恋愛して何歳に結婚する、というのを考えておけばよかったなあと今でも思います
妙のスケジュール管理・進行能力についてはただただすごいと感じたのですが、このお話で印象に残ったのは高校時代の友人2人との集まりの部分です。
どんなに仲が良くても、社会人になるとやっぱりだんだんと会わなくなってくる。それぞれの誕生日に会おう!と決めても絶対には守れないかもしれないので、絶対に集まれるであろう日を事前に決めておき年1回だけ必ず会う。友人と会うその日だけは社会人の自分から少女のころに戻れる。
いまはコロナ禍でなかなか気楽に会える状況ではないですが、友情を長続きさせるには会うのが重要だと感じています。学生時代の思い出を語り合うのも楽しいですが、できれば新しい思い出も作っていきたい。なかなかスケジュール合わせて旅行とかも難しいんですけどね。
どうしても自分の生活でいっぱいいっぱいになってしまって、気が回らないこともあるのですが、お誕生日のお祝いの連絡くらいは最低限友情を継続させる上で必要だな~と感じます。じゃないと、本当に連絡しなくなっちゃう。
独身の友人たちがどんどん結婚して子供が生まれて、年1回すら会うことが難しくなってきているので、このお話を読んで少し寂しくなってしまいました
何のしがらみもない、あのころに戻ってワイワイみんなでまた過ごしたいな~と思ったりもします
ほかのお話も読みやすく、角田光代さんの「おかえりなさい」は亡くなった祖父母を思い出して少ししんみりもしました
作者さんによって”最後の恋”の表現の仕方がそれぞれ違うので、悲しいお話だったり、ほっこりとするお話だったりいろいろなお話があり、いろんな気持ちが追体験できます
どのお話も読みやすいので、サクッと読みたい気分のときにおすすめです