残穢
小野不由美
2020/02/16
★ひとことまとめ★
穢が身近にあるのかもしれないという恐怖
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
書物の中の恐怖が現実を侵蝕し、読者の日常を脅かす人が変死した家屋や集合住宅などのいわゆる「事故物件」について、不動産業者は次の入居者に告知しなければならないし、そういった物件の情報を提供するサイトも広く知られている。誰しも、自分の住む家で過去におぞましい事件があったと知れば厭な気分になるだろう。小野不由美の第二十六回山本周五郎賞受賞作『残穢(ざんえ)』は、そんな事故物件への忌避感という人間心理を刺激する、史上最恐クラスの怪談小説だ。小説家である「私」は、読者の久保さんという女性から、彼女が住むマンションで起きている奇怪な現象について記された手紙を受け取る。「私」は久保さんとともに真相を探りはじめたが、調べれば調べるほど、怪異の連鎖は時空を超えて拡大してゆく。恐怖の因縁は、いつ、どこで始まったのか?作中には平山夢明や福澤徹三といった実在のホラー作家が登場するし、「私」は明らかに著者自身がモデルである。ドキュメンタリータッチで描かれているため、作中の出来事はどこまでが事実でどこからが虚構か見分けがつかない。
人間や物品が土地から別の土地へと移動するに従って怪異は枝分かれし、曰くのある家に住むだけで人々は陰惨な悲劇に自動的に巻き込まれてゆく。
本書の怖さは書物の中に留まってはくれない。現実を侵蝕し、読者の日常を脅かさずにはおかないのだ。なお、本書読了後には、福澤徹三の怪談実話集『怖の日常』(角川ホラー文庫)のラスト二話も読んでいただきたい。小野不由美本人も知らない筈の現実の事件と、『残穢』の内容との不可解な類似。現実と虚構はここでまたしても境界を喪失し、怪異は日常を黒々と不吉に染めるのだ。(百)評者:徹夜本研究会
【感想】
Amazonプライムで残穢がおすすめに出てきて、だいたい「来る」の時もそうだったのですが、多くが原作超えはできないだろうということを知っているので、じゃあまずは原作を読もうと思って読むことにしました

作家をしている私のもとに、ある一通の手紙が届くところから話は始まります。
手紙の内容は、手紙の主である30代の女性・久保さんが体験した話であり、久保さんが澄んでいる首都郊外にある賃貸マンションの和室から、畳の表面を何かが擦るような音がするというもの。さっという軽い音で、畳を箒で軽く掃くような音だった。
ホラー小説を好んで書いている私だが、いわゆる「霊感」はなく、幽霊や心霊現象だとのかの存在についても懐疑的であり、久保さんに対しても換気扇の音ではないかなどの返事をするが、後日また久保さんから連絡があり、和室の床をなにかが這うのを見たとのことだった。
久保さんとともに、彼女の住む部屋、そしてマンション自体について調べていく私たちだったが…
この作品は、澤村伊智さんの作品とは違って、ひえ~!!怖い!!というような、登場する化け物に対しての恐怖みたいなものはないのですが、それよりも現実的な恐ろさがあります。
ぼぎわんなどでは、ぼぎわん自体が怪異、元凶ですが、こちらの作品はそうではないです。
作者の私が懐疑的というところもあって、久保さんの体験した床を何かが擦る音に対しても虚妄ではないかと感じ、合理的な説明を探していきます。
そして到達した考えが、穢れ。日本に古来から伝わる「触穢」という考え。穢れは伝染し、拡大する。清めるための祭祀が行われなければ、広く薄く拡散していく。
穢れになってしまった存在自体は人に禍をなそうと意図していたわけではなく、未来永劫誰かを呪おうなどとは考えていなかったはずだが、ただ、その異常な存在が健全ではない何かに接触したとき、不幸な結果を引き起こすことがある。
多くの場合、もしある部屋で自殺者が出た場合、自殺者が化けて出ないかと不安になると思います。けれど、自殺者自身も何らかの穢に感染していたとしたら。自殺者自身だけではなく、自殺者が感染した穢についても調べなければいけません。
このように、床を擦る音自体が元凶ではなく、元凶はもっと別のところにあるのではないかと、久保さんの部屋でかつて自殺や事件などがあったのか、原因はマンション自体にあるのか、マンションが建つ以前からのものなのかなど、時代を遡って調べていきます。
穢れになってしまった存在自体は人に禍をなそうと意図していたわけではなく、未来永劫誰かを呪おうなどとは考えていなかったはずだが、ただ、その異常な存在が健全ではない何かに接触したとき、不幸な結果を引き起こすことがある。
私というのはおそらく作者の小野さんのことなのかなと思いますが、そう思うと更に恐怖を感じます。あまりにもリアリティのある作品なので、全て本当にあったことなのではないかと思わせる凄みがあります。
さらに、もしフィクションではなかった場合、接触するだけで感染してしまう穢れがどこかに存在するということになります。
その場所に住んでしまったから、行ってしまったから、その話を聞いてしまったから、記してしまったから、感染してしまう、そんな穢れが身近にあるのではないかと思うとさらに恐怖が増します。
そして、この本自体がもしかすると読むことにより伝染する穢れなのではと考えると、それはそれで怖いです

映画も見ようと思っているのですが、小説だからこそ想像で補うため恐怖が増すのですが、映像で見るとなんか陳腐な感じがしないかな~と思ってしまいます
