仄暗い水の底から
鈴木光司
2019/08/14
★ひとことまとめ★
怖いけど読みやすい!夏にオススメ
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【内容紹介】
巨大都市は知っている--海が奇蹟を胎んだことを。ゴミ、汚物、夢、憎悪…打ち捨てられた生の残骸が流れこみかきまぜられる世紀末の水たまりに満ちる破滅と希望の予感。戦慄の超リアリティ小説。
【感想】
世の中は夏休み終盤になり、最近アクセスが結構増えまして
なんでかな~?と思ってアクセス解析見ていると、「十五少年漂流記」とか、重松清の本のアクセスが急に増えていて。
ここからおそらくわかるのは…きっと課題図書かなにかの読書感想文の宿題だな…?と笑
夏休み終盤になり、きっとやばい!読まねば!書かねば!ってなったんですね。。。
でも申し訳ないことに最近のブログはあらすじってかネタバレ方式で書いている(書かないとまじで内容を忘れてしまうので。忘れてまた借りて読み進めて読んだことのある本に気づくということもある…)けれど、前の本とかは感想だけなんだよね~役に立たなそうw
ってか自分でも前のブログ読み直しても、その本の内容がまったくわからないから(アイネクライネナハトムジークとかいい本だったはずなのに、感想が薄っぺらすぎて本の内容が全く分からない感想だし)これじゃ備忘録にもなってないなと思い…
手が空いたら前に読んだ本の感想文書き直しをしようかな~。
さて本題。
映画版見てから原作はどうなのかと気になってしかたなかったので読むことにしました
・浮遊する水
夫と離婚し、女手一つで娘・郁子を育てる淑美。
夫と過ごした武蔵野を離れ、以前から憧れていた海辺の生活を手に入れるため港区の築十四年のマンションに移り住むことになった。
マンションはほとんどの部屋が事務所として利用されているようで、住居目的で住んでいるのは数人。かつ家族で暮らしているのは現在は淑美たちの405号室だけだった。かつては二階にも家族連れがいたようだが、不幸により転居してしまったらしい。
マンションの屋上で娘と花火をしていた際、淑美たちはキティちゃんの赤いバッグを発見する。管理人に相談するも、このマンションにはやはり淑美たち以外には子供はいないと言われてしまう。バッグは落とし物としてカウンターに置かれるも、誰も名乗り出ることなく結局はゴミ箱に捨てられていた。
しかし、またも娘と花火をするために屋上に行くと、そこにはなぜか捨てたはずのバッグが置かれていた…
娘が「ミ…ちゃん」という誰かと話し始めたり、夜中に急にいなくなり探している際に勝手にエレベーターが二階で止まったり、屋上を探している際に何者かの気配を感じたり、奇妙なことが起こり始め、とうとう管理人に二階に住んでいた家族の不幸について尋ねる淑美。
かつて二階に住んでいた家族には美津子という娘がいたが、近所で遊んでいる際行方不明になってしまい、とうとう見つからなかったことを告げられる。
「ミ…ちゃん」「ミっちゃん」「美津子」
失踪した日付と、受水槽・高架水槽清掃の日付が同じであることから、淑美はある想像をする…
映画では水びっしょびしょでしたが、原作はそんなことはないですね。淑美もそこまで精神的に追い詰められられてない。(男性への嫌悪感がすごいけれど。)
お化け美津子が映画ではバンバン出てきたけど、原作では存在を感じるくらい。
ダイナミックに水びしゃびしゃよりも、原作のほうが実際に起こったら怖いなあ。。ただただ美津子が可哀想だけど、その高架水槽の水を今まで飲んでたりその水に浸かってたかと思うと…具合悪くなってくるよね…
・孤島
理科教師である謙介はかつての恩師・佐々木から、第六台場、通称幽霊島に実地調査に行かないかと誘われる。この九年間、第六台場は謙介にとって特別な場所であった。小中学校からの付き合いの阿相に聞かされた話が事の発端だった。
九年前阿相が謙介の家を訪れた際、彼はガールフレンドの中沢ゆかりを連れてきていた。ガールフレンドにも関わらず、阿相は彼女に対して罵詈雑言を吐き続けた。彼女はどうやら新興宗教にはまっているらしい。いままで阿相に謙介から帰ってくれなどと言ったことはなかったが、阿相が彼女に浴びせる悪口に耐えかね、その日は謙介からお開きの申し出をした。
中沢ゆかりと会ったのはそれが最初で最後だった。
中沢ゆかりと会った二ヶ月ほど経った頃、阿相は今度は一人で謙介の家に訪れ、「ゆかりを第六台場に捨てた」と告げる。ゆかりは阿相の子を孕んでいたが、彼女の宗教団体では堕胎を禁じており、結婚を迫る彼女に嫌気が差し捨てたという。
阿相からの告白からしばらく経ったあと、謙介は阿相が癌で入院し、先が長くないことを知る。死に際の阿相に第六台場の件が本当なのかを尋ねると、阿相は満足気な表情で頷いた。
果たして彼女は今も第六台場で生きているのか。本当なのか。とうとう謙介は佐々木たちと第六台場へ上陸する…
このお話は現実的ではないけれど、もしも自分が無人島に置き去りにされたら…って誰もが一度は考えたことあるよね
心理テストとかでもあるよね?
にしても阿相はどうしてそこまで罵詈雑言吐いたのかな?
置き去りにしたのは彼女の言う理想郷を作る手伝いをしたんだろうけど。ゆかりは果たして理想郷を作れたと思って死ねたんだろうか。志半ばで亡くなってしまったんだろうか。
・穴ぐら
これが個人的に1番怖かったかな。
あなご漁で生計を立てる裕之は、親から受け継いだ血なのか、感情的であり暴力的であった。ぼんやりしている息子の克己、失語症になった娘の春菜、痴呆の父・勝三、そして自分に敬意を払わない妻・奈々子。結婚も愛し合ってしたものではなく、妻が克己を妊娠したため仕方なくの結婚であった。
そんな裕之に愛想を尽かしたのか、ある日妻がいなくなった。探し回るも見つからない。どうも気分が乗らず漁に行く気も起きない。
しかしそんな自分を奮い立たせ船に乗り込み、漁に出るが、どうやら雲行きが怪しい。風が吹き船が揺れイケスに溜まった水が跳ねる。いつもと微妙に音が違う。何かがぶつかる音がする。
網を海に放ち、イケスの中に入っている「何か」を確認する裕之。
イケスの中に入っていたのは妻の奈々子であった…。
このお話の怖いところはこれ以降の部分なんだけど、詳しくは書きません〜
生死の境での裕之の妄想だったのか…?でも妄想にしては鮮明だよな…。妻が見せた妄想?あなごが罠から出られないように、妻も裕之を捕えたのか…。
裕之のみた妄想を現実と置き換えるとすごい怖い、、特に「レギュレーターを噛み」「二度と離すものかと強くレギュレーターをくわえ」の部分…恐ろしい…
そして残された家族はどうなるのだろうか。。
・夢の島クルーズ
主人公の榎吉は全OBが参加する高校の同窓会で七年先輩の牛島に出会う。
彼が所有しているヨットに乗らないかと誘われ、牛島夫婦と共に東京湾を眺めるヨットクルーズに参加する。
しかし参加してわかったのは、牛島夫婦は外資系マルチ商法の販売員であり、逃げ場のない船上で勧誘することが目的だったと言うこと。
彼らの勧誘にうんざりしていたところ、急にヨットが止まってしまう。止まった原因を調べるためプロペラを見るとそこには「かずひろ」と名前の書かれた子供用の靴が挟まっていた。
靴を取り除くもなおも動かないヨットに彼らは危機感を感じる。
もしかするとヨットのキール部分になにかロープのような物が絡まったのではということで、牛島が船下に潜ることに…。
船下を確認した牛島はまるで溺死する寸前のようで、榎吉は彼を海から引き上げる。牛島は船下で何を見たのか…
このお話はゾッとするなあ…自分の乗る船が海で急に止まって、動かなくなったら、、、。
しかも、キールに引っかかっていたのが人だったら…
ただでさえ海って怖いのに、それも夜の真っ暗な海に潜るってそれだけで恐怖を感じる…
クラゲとかも怖いのに、真っ暗な海を陸まで泳ぐのも恐ろしい…
亡くなった子供がかわいそうだなぁ。
・漂流船
第七若潮丸に乗船する和男は、一年に及ぶ航海が間もなく終わることを実感していた。
そんなとき、第七若潮丸の航路を邪魔するかのように小型のクルーザーが現れる。
中を調べてみるも、人のいた形跡はあるものの、肝心の乗組員が誰もいない。海上保安庁からの希望もあり、第七若潮丸がクルーザーを途中まで曳航することとなった。
和男にとってクルーザーは憧れだったこともあり、曳航する際にクルーザーに乗り込むことに。
クルーザーには水も燃料も充分あり、破損箇所もない。船に残された航海日誌を頼りに、和男は推理を始める…
ざっとだけあらすじですが、これもやだねぇ、、海であんまり物を拾わないほうがいいなぁと思うお話…
幸せそうな家族が、たった一つ拾っただけのものによって全滅…(みんな夢通りに海に落ちて死んだのかな?)
拾ったのは何だったんだろう。人間の目と貝のハイブリッドみたいな見た目ってことだよね。グロテスク、、よくそんなの拾ったな。
海の死神みたいなものだったんだろうか、、
・ウォーターカラー
このお話は怖くなったし、なるほどなーってなった!
舞台の役を降ろされて腐って音響やってるだけかと思ったら、それも劇の一部だったか。
けど、最後のホラーっぽい部分は本当に台本だったのかな??
・海に沈む森
このお話は悲しかった杉山には助かってほしかった。。
引き返そうって気持ちもあったけれど、好奇心からどんどん洞窟の奥に入ったら、岩が崩れて入口が塞がる。しかもその岩によって一緒にいた友人の頭が潰れて死ぬ…。もう戻れない…。
自分と友人の死体以外誰もいない暗闇の中、出口を探すのも気が狂いそうだし、残した家族のことを考えるのも辛い。。助けは来ない、なんとかして脱出する方法を考えるしかない。
洞窟にある地底湖の底に水の流れがあることがわかって、どうやら外部への横穴があるのではないかと推理する杉山。
そして家族への手紙を書き濡れないようにフィルムケースに入れ厳重にしまうと、腹を決め横穴があるであろう地底湖に潜った…
本当に助かってほしかった。。そのあとの息子の話もうるっときた。。父親の意志を継ぐところね。。あとちょっと出口が広ければ出られたかもしれない。出られないことを知ったときは絶望だよね。
ホラーゲームのFORESTを思い出したわ。あんな洞窟で一人になったら発狂すると思う
この本はプロローグとエピローグもあるんだけど、読むとなるほどね~とわかるようになっています
海って見てる分には綺麗だけどよくよく考えると怖いよね。プールみたいに海水を入れ替えるわけじゃないし、その海水には魚の死骸やら話にも出てくる人間の遺体、雨の成分とかその他もろもろが混ざってるわけでしょう?いくら海がめちゃめちゃ広いとはいえ…真面目に考えてると海に入れなくなりそうだ
怖いけど読みやすいのが不思議
恐ろしい幽霊、妖怪が出てきて殺しにかかってくるというよりは、静かに忍び寄ってくる感じ。バーン!!!!ってインパクトはないんだけれど、ジワジワ怖い。
確かに人知を超えるものも出てくるし、それによって不幸に見舞われるお話もあるけれど、どちらかというと人間の欲とか甘えみたいなお話かな~と思ったかなあ。
好奇心に負けてあんなものを拾わなければ、好奇心に負けて進んでいなければ…みたいに自責の念とか後悔に苛まれそうな話だと感じた