29歳
山崎ナオコーラ・野中柊・栗田有起・宮木あや子
柴崎友香・中上紀・宇佐美游・柳美里
2017/01/15読了
1)私の人生は56億7000万年(山崎ナオコーラ)
本屋でアルバイトをしているカナ。その友達でデパート勤務の留美子。
カナは出版の仕事につきたくて出版の学校に通い、留美子は英会話に通う。
20代後半になるとみんなスクールに通い出すんだよなあ。タイトルは釈尊の入滅から弥勒菩薩がこの世に現れるまでの年数。
「自分で納得できる形で好きなものと関わることができれば、それでいいのだ。本が好きだ。でもだからといって、必ずしも本に関することでメシを食う必要はない。」(P41)
これは今の自分にも言えることだなあと感じた。
2)ハワイへ行きたい(柴崎友香)
電気設備会社で務める由宇子。旅行が好きだけど、なかなか休みもとれないし、行く子も見つからず行けない。高校時代の友達は知らないうちに妊娠していた。
彼氏の信宏とも遠距離で3週間会えてないし、言いたいことも電話じゃ言えない。アラサーのモヤモヤがすごく伝わってきた。
最後由宇子は「ハワイに行きたい」と信宏に言ったけれど、心の底にしまっていて本人も気づいていなかったかもしれないけれど、きちんと伝えることはやっぱり大切だなあと思った。
3)絵葉書(中上紀)
この話は”私目線”で話が進んでいくので、主人公の名前が出てこなかった。
友達の真帆にカフェをやろうと言われたけれどお金を持ち逃げされたり、彼氏はどうでも良さそうだし、一人で雲南の、昔一人旅で心惹かれたカフェで働き出した。
結局のところ、幸せって人によるんだなあ。彼氏と結婚せず、一人で海外のカフェで働くのが”私”にとっては幸せだった。
一人ひとりなにに幸せを感じるかは違うのだと改めて思った。
4)ひばな、はなび(野中柊)
文具メーカーで事務をしているのんちゃん。
彼にプロポーズされたとき答えられず、好きだったのにそのまま彼は海外へ行き、離れ離れに。時が経ち、帰国する元カレ。
けど、のんちゃんが気になっているのはマンションの上階の岡本さん。大好きでも、時が流れれば気持ちも変わる。懐かしいけれど、それ以上でも以下でもない。そういうのあるよなあ。
5)雪の夜のビターココア(宇佐美游)
秘書の凛子。不倫をしている。友達のあゆみもせっかく結婚したのにまた不倫。
「あなたの奥さんなんて死んでしまえばいいんだわ」と言った日、本当に奥さんが死んでしまった。
上手く行くかな?って言う男は付き合ったら実は騙されていて何股もされていたという。重すぎる。
孤独を感じて、自分の将来はお局かなと思うあたり、すごく辛い!もしかしたら自分も…と思ってしまう。
6)クーデター、やってみないか?(栗田有起)
婚約相手が実は不倫していて、しかも相手を妊娠させた。それが原因で別れ、仕事も辞め、これだけで死にたいくらい辛い!
友達の瞳は子供もいて幸せに見えるけれど、不安で泣いている。
やっぱり、一人ひとりどんな立場になっても、悩みは尽きないんだよなあ。一人なら一人の悩み、結婚すればまた別の悩みが。
理恵は仕事を頑張る決心をしたわけだけど、人と比べたりせず、大事なのは自分の気持ち、経験だなあと感じた。
7)パキラのコップ(柳美里)
職場のお客様とメールして身体の関係を持つけど、なんと相手には婚約相手がいた。またまた辛い。
美羽は相手に問いただしもせず、失いたくないから好きで居続けるけど、29歳でそれは…私はそうなりたくないな。
8)憧憬カトマンズ(宮木あや子)
仕事辞めたい占いとか、CC派遣の話とか、ヴィレヴァンから離れないとことか、まさに私がぶちあたるようなワードがてんこ盛り。ここでも出てくる不倫。
「大人になるとキスとイチャイチャとセ○クスが同日、2時間くらいに凝縮される」に妙に納得した。
この話を読んで、そうか、派遣だと人に話せるような名の通った会社に行けるのか。だから派遣したい人もいるのかと知った。
たしかに、タワーの上階で仕事はしてみたい。
「見つめ直す自分なんてない。私は私できちんと生きてる。
いい加減だとか、欠損してるとか、そういうことを言われ続けたとしても、生まれて29年の間に培ったものなどそう簡単に変えられやしない」(P339)
まさにその通りで、29年生きてて、不倫とか、裏切られたり、いろんなことがあって、いろんなことを考えて悩んで…それでも生きている。
最後がこの作品で良かった。前向きに生きていこうって気持ちになれた。