果たして──


 それは、私が面白くなったのだろうか。

 それとも、妻のツボが浅くなったのだろうか。






倒れる前の妻は、私がどんな冗談を言っても、
ほとんど笑わない人でした。

「へー」と流すか、スルー。

決して仲が悪いかったわけではなく、
たぶん私が調子に乗るのを防ぐため……

と今は、前向きに解釈もしています。


──それが、
介護生活に入ってからは一変。



笑いのツボが浅くなったのか、
それとも、私がツボりまくるのかは

──分からず。


ただ、妻の笑顔は以前よりも、
たしかに増えていました。





ある日──

食事をしていた妻が、
私の顔を見るなり、とつぜん吹き出しました。

食べ物を口から飛び散らせて、
むせながら大笑い。


「食べてる時に笑わせないで!」
と涙目になりながら…


ちなみに、私は何もしていません。


ーーー


また別の日には──

テレビを見ながら、口角を上げ下げする
“顔の体操”をしていた私。

それを見掛けた妻は、再びブーッ。

「待って、お腹痛い、死んじゃう」

と、言いながら笑い転げ──


しまいには、

「やめてって言ってるのに、
何でやめないの!」

と、怒りだす…


……いや、もう止めてるんだけど。





倒れる前には見られなかった、
妻とのこんなやり取り。



果たして──

私が面白くなったのか、
それとも妻のツボが浅くなったのか

それを知る由はなく。


けれど、妻の笑顔が増えたことは、
介護が変えてくれたものの中で、

とても喜ばしいことと思っています。






私が面白くなったのか、
妻のツボが浅くなったのか【完】