本当は二人とも、「私」を独占したいのだと思う。
でも、どうしても片方だけでは成立しない。
見つけ出しても、守り切れずに失い続け…
見つけられないまま、虚しく時を刻み続け…
それが骨身に染みた時、
二人は協力するようになったのだと思う。

何の因果か、転生を繰り返す「私」。
なぜそうなるのか、「私」は知らない。
いえ、「私」に前世の記憶なんてないから、
誰かの生まれ変わりである事に気づきもしない。
転生を繰り返しているは、二人が教えてくれたこと。

距離は関係なく、人種も関係なく、
様々な国で、様々な肌の色で、再び生まれる「私」
繰り返し、繰り返し、
同じ魂、同じ輝きを持って、生まれてくる「私」…

その都度、「私」を見つけ出すサソリ。
そして、サソリが見つけた「私」を、
死ぬまで護り続けるクモ。
何度も、何度も、数限りなく…
「私」の知らない、前世の「私」
二人だけが知っている「私」の秘密。

二人が協力しなければ、「私」との時は過ごせない。
そんなこと、二人とも分かっている筈なのに、
それでも中々上手くは行かないみたい。

サソリが呟く。

「今度こそ、三人仲良く家族のように暮らせるかも知れない」

今度こそ……

クモは、今回はなぜ?と言ってるけど、
これまでに何度も、壊れてるんだよね…?
ある時は、サソリのせいで…
ある時は、クモのせいで…
そしてある時は、「私」のせいで…

「私」も、思うの。
三人で仲良く暮らせたなら…
それは「私」の望みでもあるの。

だけど、均衡は崩れてしまった。
「私」を連れ出そうとしたサソリは、
暗い地下牢に鎖で繋がれて、
クモは私の自由も奪った。

足枷なんて無くても逃げないのに。
逃げ出す気なんてないのに…
「私」一人では生きられない。
そんなこと、分かってる。
二人と一緒でなきゃ、「私」はあっという間に死んでしまう。

だけど「私」は… 
それでも「私」は…

あの夜、ミュージアムで耳にしてしまった二人の会話。
「私」は長くは生きられない。
もうじき「私」の命は終わる。

だから「私」は、見てはならない夢を見た。

サソリは自分のせいだと言ったけど、
多分、それは違う。
全ては「私」の為、
サソリは、「私」の夢を叶えてくれようとしたんだと思う。
外の世界をもう一度見たい、
世界の広さを肌で感じたいという「私」の密やかな夢を…
でも、クモは絶対にそんなことは許さない。
限りある命。二人からすると、つかの間の命。
そんな「私」と、一日でも長く一緒にいたいと望むクモは…

だからサソリは…

クモだって、本当は分かってる。
「私」の気持ちも、サソリの思いも。

それでもクモは…

どちらかなんて、選べない。
選べる筈ないじゃない。
二人とも大切なのに…
父であり、兄であり、友であり、教師であり、
大切な二人… 愛しい二人…
「私」の全てである二人…
「私」を永久に愛し続ける宿命の二人…

そして、「私」も…

三人仲良く本当の家族のように暮らせたなら…
「私」の命が終わる、その瞬間まで一緒に…
これは、私の願いでもあるのに…

なぜ、こんなことに………

*****

リアルで誰かに恋をしていたり、
好みの声であったりするならば、
感応時間9も、全然別の見え方をするのでしょう。

ただ、クモにも、サソリにも、
演じ手の声優さん達にも、
どれにも強い思い入れの無い私には、
こんな風に見えてしまうのです。

選べない。
いいえ、選びたくない。
貪欲な私は、どちらも得たいと望んでしまうのです。

サソリの優しさ、そして熱さも愛しく、
クモの孤独、不器用さも愛しい。
どちらも、深く「私」を愛し、求めているのですから。

今回もまた、悩ましい作品なのです。
私の思い入れも、半端ではなく強いようで……
ただ今回は、2枚、2キャラという事で、
私の中に混乱が生じているのです。

どちらが…? どちらを…?
リスナーである私は、選ぶ必要なんて無いんですけどね、
この世界に囚われている「私」は、真剣に悩んでしまう(笑)
いまだ、収りどころに収まっていない気分。
まぁ、少しは落ち着いてきたのですが……

ちなみに、今回の「私」視点の文章は、
感応時間9赤&黒の本編とブックレット記載のSS、
特典CD2枚の情報をベースに綴ったものです。
私の中では、このように世界が広がり、
それは今も進行中なのです。