「紫龍、馬鹿なこ。
いえ、馬鹿なのは私なのかしら…?
かつては貴方に、
恋心のようなものを抱いたこともあった。
その時私は、伝統と格式を守る為に、
自らの手で自らの想いを封じました。
その後もずっと、
貴方には、店の主としての顏、
師匠としての顔しか見せなかった。
あの時私が、
自分の気持ちに正直になっていたら…
素直に思いを伝えていたら…
私の傍らに貴方が立っていたのかも知れない。
でも、全ては過去の話。
私にとっては、終わった話。
今更の話。
私は明日、あの方のもとに嫁ぐのだから…」
私が師匠なら、心の中でこんな言葉を
呟いているような気がします。
ちなみに、密やかな「恋心」は、
初回特典SSと、オフィシャル特典SSの中に
匂わせてあったことです。
オフィシャルのショートストーリーでは、
我がままで、強引で、気まぐれな師匠の姿が
描かれていたりするのですが…
今回の舞台は、深夜の日本家屋の一室。
明日嫁いで行く師匠と愛弟子との最後の逢瀬が
えがかれます。
全篇を通して、とても甘ったるい作品です。
この弟子ですけど、
憧れの師匠にただひたすらに恋焦がれつつも、
けっして弟子という立場からはみ出そうとはしない。
それだけに、内に秘めたる思いの強さ、
師匠を求める激しさは、
シリーズ中でこの弟子が一番かも知れません。
面白いのが、ブックレットに記載されている催眠の説明部分。
作品ごとに色々趣向を凝らしてくれるんですが、
今回は弟子の日記という形で書かれています。
ただ、これを読むと、甘味屋に催眠の手ほどきをしたのは
師匠なんですよね。
催眠と、職人修行と何の関係があるんでしょ?
師匠の趣味?
和菓子の修行はどうしたー! …です(笑)
今作のトラック分けは五つ。
以下のようなタイトルがついています。
第一章 紫龍の間
第二章 息の緒
第三章 綸子
第四章 赤瑪瑙
第五章 衣衣
最初のトラックで師匠への想いが語られ、
2、3トラックで催眠状態に導き、
4トラックがメインステージで、深い官能の世界へ…
最後の5トラック目では、
催眠の解けた後の切ないやり取りが表現されます。
弟子役は『檜山修之』さん。
オフィシャルの制作日記の中では、
「ローカロリーの檜山を味わって欲しい」と
仰っているのですが、
この作品の中では、終始穏やかで丁寧な口調で、
甘い言葉を囁き続けてくれます。
普通に話しているシーンよりも、
囁きかけるシーンの方が多いくらいです。
始めて聴いた時には、余りに柔らかなトーンなので、
2トラック目くらいで、眠くなってしまいました。
…が、改めてじっくりと聴きなおすと、
この柔らかなトーンがなんとも心地よいだけでなく、
じわじわと心を浸食し絡みつき、官能の世界に誘う。
この辺りの微妙な感触は、上から目線のキャラの多かった
これまでのシリーズとは一味違いますね。
メインステージでは、抑えたトーンではあるものの、
テンションが上がり、声に熱がこもってくる。
息遣いからして、本気モードに…
ここらは、実際に聴いて頂くのが一番でしょう。
しかし、嫁ぐ前日の最後の逢瀬という事は、
これまでに何度も逢瀬を繰り返していたということ…?
さすが感応時間、背徳の香りからは離れませんね。
まぁ、弟子の言葉からは、身体を重ねる事はあっても、
最後まで許したわけではなく、
催眠状態の中での逢瀬、夢の中の逢瀬であろうと
予想できるのですが…(^0^;)
この辺りの曖昧さは、感応時間シリーズの特徴ですね。
イメージの仕方次第で、限りなくエロティックにもなるし、
軽いファンタジーで済ませる事も出来る。
どんな場面を想像するかはリスナー次第。
だからこそ、かなり際どい内容にも関わらず、
R指定を免れているのでしょうけど。
何はともあれ、今作もまた期待を裏切らない作品でした。
まだ手にしてから日が浅く、作品を捉えきれていないので、
これから暫くは何度も繰り返し聴いちゃうでしょうね。
聴きこむ程に、新たな姿を見せてくれる感応時間です。
たぶん聴いている内に、別の面を見せてくれることでしょう、
これまでの作品のように、ね♪

