「和を以て貴しと為す」の本当の意味/十七条憲法の正しい理解

2021年10月30日

 

「和を以て貴しと為す」は、ほとんどの日本人が知っている言葉で、その意味を理解している・・・はずであるが、実は、学校で習ったことは嘘でした。


十七条憲法には、「和を以て貴しと為す」と説かれており、「日本人は何よりも和を大切にする民族なんだよ」と思っている。多くの日本人が、そのように誤解している。
ところが、日本書紀の原文で読んでみると、そのようなことを言っているのではないということが解る。
そして、上述のように思っている日本人は実は"現代人"だけで、もともと戦前/戦中までの日本人は、十七条憲法全文を学習しており、その意味をしっかりと理解していたのだ。

 

【十七条憲法の1条、17条の原文】

一曰、以和爲貴、無忤爲宗。人皆有黨。亦少達者。以是、或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦、諧於論事、則事理自通。何事不成。

十七曰、夫事不可獨斷。必與衆宜論。少事是輕。不可必衆。唯逮論大事、若疑有失。故與衆相辮、辭則得理。

 

【現代語訳】
第一条
和を大切にしなさい。相手を呪ってはいけません。相手の名誉を奪ってはいけません。

人には誰でも主張するものがあるものです。一方で、真理に達している人というのは、本当に極わずかしかいません(そんな人はいません)。その為に上司や父に順わず、無用な争いをしてみたり、或いは、隣の村と諍いを起こしてみたりすることが起こるのです。
けれども、上に立つ者が意図して態度を軟化させて、下の人たちも心を開いてお互いに問題を討論していくならば、お互いの心の思いは必ず通じるものです。

そうなれば、どんな難問だって解決できます。

<補足>
どんな難問だって解決できる。その為には、しっかりと話し合うことが大事である。しっかりと議論することが大事であると言っている。言いたいことがあっても我慢して、周りを見て皆に合わせるということを言っているのではない。まず、本当に言いたい事を全部出して、ちゃんと議論しましょう。と
多少ムキになったりすることもあるかもしれないが、とことん話し合う。それが、日本の伝統なのである。
言いたいことがあっても、それを我慢することではない。全く逆なのです。
とことん議論する。そして、その際に重要なことは、相手の名誉を傷つけないことです。

第十七条
上に立つ者は、物事を独断で決めてはいけません。必ず皆とよく討論して物事を決めなさい。
些細な、手軽なことまで議論しなさいと言っているわけではありません。そういうことは、皆で決める必要はありません。しかし、大事なことは必ず、皆と討論して決めるようにしなければなりません。なぜなら、もし大事な意思決定に誤りがあっては、取り返しがつかないことになってしまうからです。
そして、この時の皆との議論にあたっての言葉は、必ず筋道を立てることを大切にしなさい。そうすることによって、初めて道理が立つのです。

<補足>
十七条には、「論う:あげつらう」という漢字が2回も書かれている。通常、同じ漢字を2度使うことは避けられるので、同じ漢字があえて2回繰り返し出てくるということは、"重要語"だということである。あげつらうことが大事だと言っている。皆と議論することが大事だと言っている。
最初の「和を以て貴しとなし」は、議論する時の心構えとして書かれている。
まずは、大切なことはしっかりと議論しましょう。その時の心構えとして和が大事だよと。
「議論もしないで、和が大事だから、上の言うことに逆らうなよ!」という意味では全くない、ということである。(全体主義の方向に仕向ける道具にされていませんか?)

 

今こそ本来の意味に立ち返り、これを実践することが大事なのではないでしょうか?



<動画の目次>
・十七条憲法から読み解く日本人の文化
・「以和為貴」の本当の意味
・歴史認識の誤りを招く教科書の嘘

 

【動画】

教科書に載ってない十七条憲法の嘘|小名木善行