1.病気としての問題点

 

①胆管炎

 

発熱や腹痛などの症状とともに肝機能が悪化する胆管炎は葛西手術後には避けがたい合併症ですが、原因は明らかではなく有効な予防法が見つかっていない。症状が先行し血液検査の異常が遅れて現れることも少なくない。成人に達するまでに約6割以上の人が一度は経験している中、成人以降も約4割近くが発症しているので、どんな年齢になっても注意すべく合併症と考えたい。

食事や睡眠・排便など規則正しい生活をし、水分を十分とって(アルコールはダメ!)

脱水を防ぐことにより、肝臓からの胆汁分泌が滞る事の無いように努める。また腸管の運動が極端に不規則になること(便秘や下痢)も避けたいもの。流行性感染症(インフルエンザ等)が契機になることもあるので予防を心掛ける

基本的な事ですが、手洗い・うがい・予防接種などを励行する

幼少児期とは違って年長例には特有の誘因がいくつかある。それまで胆管炎を全く経験したことの無い人も安全とは言えない

葛西手術で肝臓に張り付けた腸管にトラブルを起こし、しれが胆管炎の原因となることがある

腸管の狭窄や捻転、屈曲などによる胆汁のうっ滞が原因と考えられるが、腸管の中に大きな結石が出来ることも稀に起こる

狭窄を解除したり石を摘出する手術が行われる

一方、画像検査でもともと肝臓や腸管はほぼ正常の形状だった場合でも、年齢とともに肝臓の内部に少しずつ異常が出現してくることがある

胆道閉鎖症では大抵肝臓内の胆管にも異常があるので、何らかのきっかけで胆管炎を起こすと肝臓の中の胆管は傷みやすく。胆汁の流れが滞ったり、不規則な拡張が起きたり、結石が出来て胆汁の流れがますます悪くなるという悪循環を起こすことがある。

肝内結石の治療は非常に困難であり、石のある異常な部分だけ肝切除を行ったとの報告があるが病状の進行を止めるとは限らない

より異常が広がって何度も胆管炎を繰り返したり、肝機能が悪化してくれば肝移植が避けられない

 

 

②肝の変形や腫瘍

 

画像検査をすると年長児では肝臓の形にかなりの変化が起きている事が多くある。

胆汁の排せつは肝門部に集まってくる多数の微細な胆管が葛西手術であてがった腸管とつながることによってはじめて可能になるのだが、この繋がりが上手く出来ないと肝臓の一部分が委縮し、あたかも肝臓が切除されたかのような形になったり、反対に胆汁の流れが良い部分が大きく肥大することがある。

さらに肝臓内に色々なタイプの腫瘍が出来ることがある

大抵は、良性のものだが、肝臓移植の時に摘出した肝臓を調べたら悪性腫瘍が見つかったとの報告がある

常々行っている外来での定期的な血液検査や画像診断の有無を検査しておくことはとても大切

 

 

③消化管出血

 

肝硬変になると肝臓は硬くなる為、腸管から肝臓に向かって流れる門脈の血流は流れにくくなる。そのため血管内圧(門脈圧)は高くなる。これを門脈圧亢進症という。

血液は流れにくい肝臓を迂回して別のルートを通り心臓に流入するようになる

その迂回路が食道や胃を経由すると食道及び胃静脈瘤になる

万一これが破裂すると大出血を起こし、場合によっては命取りになる

幼少児期から計画的に内視鏡検査を行い、必要なら予防的な内視鏡治療を施することが一般的になっているので、成人になってからこのような静脈瘤が破裂する患者さんはほとんどいなくなった

ところが食道でも胃でも無く簡単には出血源のわからない消化管出血が年長例では増えて来た

大抵が小腸からの出血と考えられる

胆管空腸合部付近(葛西手術で肝臓と腸をつないだところ)からの出血の場合もある

出血点を見つける為には腹部CT、小腸内視鏡検査、出血シンチ、血管造影など行うが、動脈と違って静脈の出血は常時続いているわけでは無いので出血点を見つけるのは容易ではない

出血点が見つかると治療は内視鏡による方法や血管内カテーテルを用いた方法など工夫して行う

但し肝硬変そのものを治す治療では無いので、止血効果が何年も続く事は無い

 

④脾機能亢進

 

肝硬変になると門脈血流は流れにくくなり、血管内圧(門脈圧)は上昇し、門脈と繋がっている脾臓は大きく腫れるようになる

これを脾腫といい、大きくなった脾臓が旧い血球のみならず正常の血球をも破壊するため血球減少(貧血、白血球減少、血小板減少)を起こす(脾機能亢進症)

血小板が5万以下となり出血傾向にある場合には脾臓に流れ込む血管を部分的に止めて脾臓をしぼませる治療(部分的脾動脈塞栓術)や脾臓を取り除いてしまう(脾摘術)ことがあるが、大抵は成人期になる前に何らかの治療が実施されることが多い