2025年6月28日
『臨時ニュースです!』
ラジオ番組を聞き流しながら非番の休日を謳歌していた悟は、突然の声に飛び上がる。
「な、なんだ?怪獣でも出たのか?」
『現地から送られてきた映像をそのまま放送しています。何かが起こったと…』
「は?どういう…」
悟は小さなモニター画面を見る。そこから流れる映像を見るうちに、顔が青くなる。
『あ、あれは巨大生物です! 人が襲われています!』
「嘘だろ…」
『7年前に絶滅したはずですが、巨大生物は生き残っていたのです!』
象程もある巨大な影。それは人に襲いかかり、軽々と持ち上げる。
映像はかなり遠くから写している筈だが、悲鳴がラジオから漏れる。
と、悟の携帯がけたたましく鳴り響く。
『緊急出動要請です。詳細は不明』
「…マジすか」
『7年前に絶滅したはずの巨大生物を見た者がいるとの情報があります』
「巨大生物…フォーリナーもいないのに、何故…」
『ありえない話ですが、とにかく現地に向かってください』
要件だけを伝えると、携帯は黙り込む。
悟は顔を両手でピシャリと叩くと、装備保管庫に向かっていった。
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「巨大生物を見た者がいるらしい。この目で確かめる!」
悟はレンジャー1に同行し、現地へ向かった。
輸送車両をその辺りに駐車し、他と隊員たちと共に市民とは逆の方向に向かう。
「ストームチーム、ついて来てくれ」
「了解。何かあれば指揮は俺が執る」
「了解した。行くぞ!」
「「「Yes,sir!」」」
巨大生物が出現した。それは衝撃的なニュースである。
7年前まで人類を脅かし続けた存在、それが再び現れたと言うのだから。
本当に出現していたなら、街のパニック状態も頷ける。
「何かの間違いだよな?」
「そうに決まってる!」
「巨大生物は全滅したはずだ! 7年前に…!」
隊員たちは口を開きつつも、周囲を警戒しつつ前進する。
大きな交差点に差し掛かった時、巨大な影がビルから生える。
「…巨大生物だ!!」
「でけえ…」
「なんてこった…」
一瞬呆然とする悟であったが、すぐにAF17を構える。
「いやぁぁー! 降ろして!!」
「うわぁぁぁ!!」
「…市民が襲われている! 撃て! 市民を助けろ!!」
レンジャー1もすぐに巨大生物へ攻撃を開始する。
しかし、数年前のデータより明らかに強い。何より人を持ち上げる。
「どうなってんだ…なんで巨大生物が?」
悟は1人呟く。疑問に思う事はあるが、今は目の前の敵を減らす。
やがて数が減り、余裕がでてきた所で通信が入る。
『レンジャー1、状況を報告しろ!』
『巨大生物と交戦、数匹を撃破しました!』
数匹というか数十匹というか、と悟は呟く。
別の場所に巨大生物がいる事をレーダーは示している。数が多すぎる。
『なんだと!? そんな馬鹿な!』
流石に本部も驚いている。それどころか、本部もパニック状態になっているようだ。
それほどに、巨大生物再出現の衝撃は大きいのだ。
「最後の巨大生物が倒されたのは、7年も前だぞ! なぜ今頃…」
「巨大生物は7年前に全滅したんじゃないのかよ! アリゾナで倒されたのが最後の1匹の筈だ!」
「生き残りがいた。7年も潜んでいやがるとはな」
しかし、7年も潜んでいるということは、もっと巨大な地下巣穴を築き上げている可能性もある。
悟はその考えを口にしなかったが、最悪の可能性は留意しておかなければならない。
「こんな日のために我々がいる!」
レンジャー1隊長は先陣を切り、市民を掻き分けて進む。
隊員たちと悟は後に続く。
少々力強くなっているとはいえ、今のEDFにこの程度の敵は相手ではない。
まもなく十数匹いた巨大生物を殲滅、別ポイントの市民の避難を助けるために向かう。
「7年ぶりの巨大生物だ。今や絶滅危惧種だぞ!」
「危惧は無用だ。絶滅させろ!」
「Yes,sir!」
今度の市民たちは道を開けてくれる。
レンジャー1を見て安堵し、「EDF!」と叫びながら避難する人さえいた。
「最後の巣が駆除されてから7年…その間、こいつらはどこに隠れてやがったんだ」
「絶滅したっていうのは、嘘だったのかよ…!」
「こいつらは地底に潜んでた。俺達は、こいつらの上で暮らしてたってことなのか!?」
疑問に答えるように、別ポイントから巨大生物の反応と市民の悲鳴が聞こえる。
「くそ、キリがない…」
「レンジャー1より本部へ。巨大生物の数が多すぎる。このままでは市街地が埋め尽くされる!」
『こちら本部。他の地域でも多数の巨大生物が確認されている。何とか踏ん張れ!』
「ちっ、ギガンテスでもあれば…」
今度は悟が先陣を切って、巨大生物を掃討する。
しかし、どこに潜んでいたのかと思う程の圧倒的物量であり、早くも3時間が経過している。
「今度はあっちからかよ!」
『こちらスカウト! 巨大生物の中に酸を出す個体が確認された! 注意しろ!』
「むしろ噛み付きが怖かったくらいだぜ!」
日が傾き始めたが、巨大生物はどこからか出現している。
勢力自体は弱まっているのだが、まだ市街地は黒い影に覆われている。
「…援軍か! 助かったぜ!」
ここでようやく援軍のレンジャー2が到着した。
「巨大生物だ!」
「襲われてるぞ!」
「撃て! 市民を守れ!」
レンジャー2隊長が発泡許可を出す。
慣れた手つきでアサルトライフルに弾倉を差し込み、戦士が吠える。
「「「Yes,sir!」」」
レンジャー2が援軍として来たことで、殲滅の効率は飛躍的に上がった。
市民も最初に比べれば避難してくる数が減っており、誤射を懸念する必要もなくなってきた。
彼らは公園周辺に展開し、巨大生物を掃討。次のポイントに向かおうとしていた。
『状況を報告しろ!』
言わなくても分かるだろうと思ったが、生存しているかを知りたかったのかも知れない。
レンジャー1と悟の疲れこそあるが、まだまだ戦える状態である。
悟が無線に答える。
「巨大生物です! 市民が襲われています!」
『巨大生物を攻撃、市民を救え!』
「…了解!」
EDFの役目は地球を守ること。
巨大生物の脅威から市民を守るのもまた、EDFの仕事である。
『あー、あー…』
「誰だ…?」
全く聞き覚えのない声が無線に入る。
市民かと思ったが、様子が違う。EDFの関係者だろうか。
『私はフォーリナーの研究者、オハラだ。兵士諸君にアドバイスしたい』
「オハラ博士… 5年くらい前からフォーリナー研究の第一人者として活躍しているという…」
「マジかよ。お前よく知ってるな」
「…って、昨日のニュースで言ってた」
「おい」
呑気なものであるが、戦場であるからこそこうあるべきなのだろう。
逃げ惑う市民からしたら困ったものではあるが。
『死んだ巨大生物を調査した結果、驚くべき事がわかった』
「もう解剖でもしたのか」
「3時間くら経ってるしな…」
「マジかよ。そういや、夕日が傾いてるな」
本当に呑気なものであるが、原因は悟である。
ストームチームの人間がいればどうにかなる、という安心感があるのだ。
『奴らは7年間で進化し、強くなった。より硬い甲殻に包まれ、簡単には倒す事はできない
「???」
「倒せてますけど…」
『だが問題は無い。EDFの装備もまた、7年で強力になっている』
「今更っすよ博士」
『進化した巨大生物といえど、必ず倒せる! 健闘を祈る!」
「……」
「よし、各員装備をチェックしろ。次のポイントに向かう!」
「了解!」
『こちらレンジャー1-6! データと違います!』
データと違う。例えるなら、MMF40で倒せた筈の巨大生物が倒せない。
まるでオフラインとオンラインの違いみたいだ。
『巨大生物は7年前よりも強靭で凶暴です! 我々だけでは手に負えません!!』
『レンジャー1-6、巨大生物と戦う訓練を積んできた筈だ! 踏み止まれ!』
『こちらレンジャー2! 巨大生物と交戦中! ウイングダイバーの出動を要請します!』
「…ウイングダイバーってなんだ?」
「す、ストームチーム…?」
「おいおい、ウイングダイバーを知らないのか?」
悟は知らないようだ。
無理もない。彼はずっとレンジャーとしての訓練と、ビークルの訓練をしていたのだから。
加えて、元々時事問題などにも疎いのである。
『なんて鋭い牙だ!』
『こちらレンジャー1-6! 奴らは人間を軽々と持ち上げて… うあああーっ!!』
「市民の避難が完了次第、全力で撃ち込め!」
「了解!」
『こちらレンジャー6! ウイングダイバーの救援を!』
「…なぁ、ウイングダイバーって何なんだ?」
「略称はWDで、対巨大生物の…」
「後にしろ! 撃ちまくれ!」
「マジすか…」
レンジャー1隊長に途中で遮られてしまい、ションボリする悟であった。
『WDの到着には時間がかかる! 持ちこたえろ! 市民を守らなければならない!』
「1つやったぜ!」
「やるじゃねぇか! …ストームチーム!右だ!」
「へ? ちょ、うわぁぁぁぁ!!」
悟は回り込んできた巨大生物(蟻)に接近され、大きな顎で持ち上げられる。
頭をガッチリとホールドされ、生身であればそのまま首がポッキリしそうである。
「いて!噛むな!離しやがれ!!」
闇雲に手足を振り回すが、ビクともしない。
銃弾をぶつけられてようやく怯むような相手であるから、至極当然である。
「ストームチーム! 今助けに……チッ、この虫野郎!」
「くそが! 振り回されてAFをマトモに構えられやしねぇ…」
『相変わらずねぇ…』
無線から聞き覚えのある声が出た。
「その声は…」
「ちょっと眩しいわよ!目を閉じてなさい!」
一筋の光が迸り、悟に噛み付いていた巨大生物が吹き飛ぶ。
闇雲に手足を振り回していた悟は、そのまま地面を転げまわってしまう。
「あんまり進歩してないわねー」
「う、うるせぇ。今までどこに行ってたんだ!」
周囲の巨大生物が大体片付き、レンジャー2が悟とレンジャー1を気遣って掃討に向かった。
隊員たちは「やれやれだぜ…」と言いながら装備の確認を怠らない。
「私はWDなの。…まぁ、ストームチームなんだから精鋭でなければならないって言われてね」
「……」
「な、何よ」
「痴女っぽゲフゥ」
「…あれがストームチームか」
WDの蹴りが悟の腹部を直撃し、悟は再び地面を転げまわる。それを見て隊員の1人が言う。
やはり可笑しかったのか、段々とみんな笑い始める。
『WDはまだなのか!?』
まだ他の区域では戦闘が続いているらしく、無線の向こう側は非常に騒がしい。
『…どれ程奴らが進化していようと飛ぶ事ができない以上、空中からの攻撃で殲滅できる』
「ストームチーム、レンジャー1、待たせたな。退却するぞ…って、どうした?」
レンジャー2は顔を真っ赤にして仁王立ちするWDと、地面を転げまわるストームのレンジャー。
そして、それを見て笑っているレンジャー1を見た。
「…状況が分からない。どうなってる?」
『WDさえ到着すれば、勝負は決する!』
オハラ博士の台詞には誰もツッコミを入れなかったが、フラグっぽいと誰もが思った。
7年間も隠れていたのだから、空を飛べる巨大生物がいてもおかしくはない。
「いや、それがな…」
レンジャー1の隊長が説明する。レンジャー2の隊長は呆れ顔になってしまった。
「これがストームチームか…」
こんなんでやって行けるのか?と思った台詞である。彼らの実力がはるかに上である事も知っているが…
「…明日も晴れるといいな」
「その続きは明日だ」
空は真っ赤に染まっていた。
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コメント♪
とまぁ、こんな感じである程度纏めてしまおうと。
できれば週1以上のペースにしたいですが、果たして…
WDは空音です。まだ名前は出てませんが、仕方ないね(ぇ