今回はEDF仲間であるSGF-004さんに、本編でチラッと出た鳥取での戦闘の様子を執筆していただきました。
こうやって設定などが追加、固定されたりするのでとてもありがたいです。ありがとうございます。
ご本人から掲載の許可をいただきましたので、こちらに掲載します。
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■西暦2040年
連合地球軍EDFは、四度目となるインベーダーとの戦争に突入した。
彼らとの和解など不可能、どちらかが滅びるまで戦い続けるしかないのだろうか。
鳥取県。
ここには日本では珍しい「砂丘」が存在する。
山と海に囲まれたここには、自然の多いこの国では普通見られない生態系が存在し、観光名所にもなっている。
だが、砂を蹴散らし轟音と共に砂丘を踏み荒らしながら進む、鉄の塊がいくつか見えた。
『E-551ギガンテス』。
連合地球軍の主力戦車であるが、今となっては仮想敵であるインベーダーに対等に戦うだけの性能はない。
後継車であるE-555ギガンテスMk-4はすでに実戦配備に就いているが、今だ数は多くない。
『目標補足』
「敵はただのダロガだ。戦車が未だ一線級の兵器である事を教えてやれ!」
戦車隊の指揮官が、鼻息荒く叫んだ。
世界規模でのインベーダーの一斉侵攻と、極めて強力なレーダー妨害により、今まで整備されてきた監視網は一挙に前時代へと戻された。
現在の総司令部がある日本に敵戦力が集中しており、現在地である鳥取県にも、歩行戦車の大群が押し寄せようとしていた。
陸戦歩兵部隊の展開は終わっておらず、さらに総司令部御用達の人型兵器「カノン・ブラスト」も配備されていない。
彼らは『主戦力』を欠いた状態で戦いを挑まなければならないのだ。
「全車、各自目標を攻撃せよ」
『敵車両ミサイルを発射!』
「射撃開始!」
五両のギガンテスが、主砲である120ミリ砲を一斉発射した。
陸戦歩兵部隊から『自走砲』と罵られるほど特異な戦車砲も、専門職にかかれば的確に相手を破壊できる。威力不足ではあるが。
ダロガの発射する大型ミサイルは誘導性能が高い半面、低速である。歩兵に避けれるものが避けれない訳がない。
戦車隊は分散しつつ相手との距離を一定に保ち、射撃を続けた。
あまり近づきすぎると戦車砲では狙いづらいし、弾速の早いビームや「魔のバルカン砲」が飛んできたら避けられない。
21世紀初頭の主力戦車でも、走りながらの正確な砲撃は可能である。
しかし、「あの」ギガンテスの主砲でそれをやるのには相当の技量が必要である。
特攻兵氏の話によると現実にいるらしいが…
何発も当てているうちに、数機のダロガは掃討された。
「どうだインベーダー!」
「隊長、まだ同じような部隊がいくつもあるんですが」
さて、歩行戦車はダロガだけではない。ディロイも歩行戦車である。
では奴らはどこから来るのであろうか?
『隊長! 地下から反の――』
金属を貫く轟音と共に、右端のギガンテスが持ち上がった。
地下から伸びる『それ』は、串刺しにしたギガンテスを数回振りまわして地面に叩きつけた。
『ディロイだ!』
「地下から出てくるだと!? 全車(ディロイから)離れろ!」
ディロイとギガンテスの相性は最悪である。
装甲が薄い車両上面に強力な攻撃を撃ちこめるだけではなく、ヒョロヒョロしたボディと素早い動きは戦車砲では非常に狙いづらい。
部隊が全力で離れようとした直後、ディロイの主武装であるレーザーの雨が、無慈悲にも一両を焼いた。
直撃を受けた装甲はロウ細工のように溶けだし、弾薬が発火したのか大爆発して砕けた。
続けての『脚』による刺突。
これは身軽な陸戦歩兵でも回避難度が高く、戦車では人型のような動きができない。
先端のピックに三度貫かれ、犠牲となった車両はバラバラになった。
『ギガンテスはブリキ缶だぜ』
『他のゲームのネタ言ってる場合か!』
残る二両は相手からかなり離れたが、ディロイの走行能力はその差をすぐに縮めてしまう。
このままでは陸戦歩兵が展開する前に、後方の第二戦車隊もろとも壊滅してしまうだろう。
一瞬、太陽が何かに遮られた。
『こちら第01CB実験中隊指揮官。ロケット弾を発射、『Danger Close』(至近着弾注意)!』
使い古された車載無線機から、唐突に声が飛び出た。
その警告の通り、数発のロケット弾が上空から飛んできてディロイを破壊した。
全弾全ての爆破範囲にディロイを入れた形である。一発の無駄もなく、味方への流れ弾もない。
攻撃に遅れて、上空から二人の巨人が舞い降りた。
全高6メートル程の巨大な機械人間。右手に巨大な機関銃を持ち、脚に装着された筒からは煙が噴き出ていた。
『カノン・ブラスト』。略称をCB。
全く新しい兵器体系のそれは、どう見ても趣味の領域である。
『優先命令#050。戦車部隊は後方部隊と合流、砲撃支援を行え。以上』
女性らしきCB部隊指揮官からの無線は、非常に簡潔だった。
「隊長、【#050】ってなんですか?」
「総司令部直属部隊に与えられる命令権限だ。どんな内容だろうが、発令されりゃ従わなきゃならん!」
隊長は苦虫を潰したような顔をしつつ、部下に命令を下した。
「全車後退! 第二戦車隊と合流するぞ!」
職業軍人である彼に、近年の隊員に見られる反骨精神(というよりも身勝手さ)は存在しない。命令は絶対なのだ。
「エリート風情の趣味人どもめ」
彼はペリスコープ越しに、こちらを見ている機械の巨人をにらんだ。
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■視点/第01CB実験中隊 ジョーカー隊1番機
「丸聞こえだな、どうする隊長?」
『いつも通り放っておいて。無駄だしね』
非常に狭いCBのコクピット。彼らの職場はここである。
彼らを動かす中隊長らは、上空からホバーコプター機で戦場を見守りつつ命令を下している。
身を委ねるCBのタイプは『CB-11AFX』。
試作CBの一機種で、ある程度耐久性や防弾性能を落として機動性を確保しつつ、限定的な空戦能力を持ち合わせた機体である。
『ジョーカー隊、全機展開完了。各機は上陸中の敵歩行戦車群を遊撃せよ、二機一組を崩すな』
「J1了解。J2、前方に三両だ。やるぞ」
『J2了解』
二機のCBは僅かに地面から浮かび上がった。
背中のユニットに収められている重力遮断ドライブは自動制御だが、実験型である本機は半手動型。操縦者の技量が試される。
背中のブースターを吹かし、十数トンある機体は地面を滑るように飛び出した。
その加速度は対策を施していない限り、常人には耐えられない。
だがCBは違う。重力遮断ドライブを使えばそのGを相殺する事ができるのだ。
視界に映る三両のダロガが、ぐんぐんと近づいてくる。
それぞれの触覚状アンテナが光を灯す。レーザー攻撃を準備しているのだが、CB隊の方が数倍早かった。
「攻撃(アタック)!」
二機はダロガ同士の間をすり抜けると同時に、中央にいるダロガの足を引っ掛け、ブーストダッシュの勢いをそのままぶつけた。
足をすくわれる形となったダロガは横転し、無理に追従しようとしたレーザーでわが身を焼いた。
残る二両のレーザーが殺到するが、鋼鉄の身体をひねるだけでやり過ごした。
『跳べ!』
ブースターの推力を下へと偏向し、大地を蹴って跳び上がった。
ダロガの背丈よりも高く跳び上がったところで、反転しながら武器を向けた。
『CB-SNR230Dマシンガン』。
陸戦兵用の大口径スナイパーライフル「SNR-230D」と弾丸を共有する事から、ストレートにこの名がつけられた。
だが、単発式の当該銃器と異なり、これはマシンガンである。威力数値1千の弾丸が何百発とばらまかれるのだ。
SNR-Dタイプ独特の非常にうるさい発射音が連続して鳴り響いた。
EDFゲームのユーザーが解る例えをするなら、弾無制限チートを適用した状態でSNR-230Dを使った時と同じである。
狙いは正確。
銃弾の雨を浴びせられたダロガ二両は、火を噴き大爆発した。
続けて、着地と同時にマシンガンを腰のハードポイントに下げつつ、右肩の後ろに下げていた火砲を展開した。
『130ミリ低反動速射砲』。ギガンテスMk-4の砲弾と同規格の徹甲弾を連射可能である。(ただし、サイズの関係で装弾数は少ない)
本機の『主砲』であり、『カノン・ブラスト』に分類されている最大の要素である。
発射。
一両のダロガに対して、まるでいじめのごとく砲弾を浴びせかけた。
こんなものに耐えられる装甲は、インベーダー兵器でも存在しないだろう。
「【クイーン】(※)、こちらJ1。敵車両をせん滅した」
※中隊指揮官のコールサイン。トランプに由来
『こちらクイーン。避けろ!』
『避けろ』の一言だけで意味を察知し、二機は後ろへ飛び退いた。
その直後、地面から特徴的な『脚』が飛び出した。先ほど戦車隊を攻撃していたのと同じ攻撃法。
「バンカーを使う。スタンバイ」
『J2了解』
左肩に下げられていたラージシールドが接続部から移動し、左腕へと固定される。
シールド内部に存在する『槍』の安全装置が解除され、発射の時を待っている。
「GO!」
『ディロイ出現!』
一番機が跳び上がったのと、ディロイが砂を掻き分け立ち上がったのは、ほぼ同時だった。
「打ち抜け!」
強力な火薬の爆発を利用し、槍ないし『杭』を打ち込む。いわゆる【パイルバンカー】。
このロマン溢れる武器は扱いが極めて難しく、使いこなせる者は少ない。
だからこそ、その威力があるのだ。
中心を貫かれたディロイは、その動きを止めた。
「こちらJ1。ディロイを撃破」
『了解。J3・J4と合流して掃討に当たれ』
「了解」
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数時間に渡る激戦の末、鳥取近辺から内陸部へ入ろうとする敵部隊は殲滅された。
しかし、間に入る各地の司令官が無能なのか、最新技術に頼り切ったが故の慢心故か、明らかにEDFは押されていた。
■鳥取県 境港市 航空自衛隊 美保飛行場 兼 米子空港
航空戦力をあまり持たない(理由は不明)EDFは、日本各地に専用の飛行場を建設するほど金回りはよくない(例外:開発部)。
それが故に、彼らもこの飛行場を利用していた。民間機は殆ど退避しており、エプロンには自衛隊機と数機のEDF所属機がいるのみである。
EDF専用施設内にある通信室から、赤い制服に身を包んだ女性士官が出てきた。
彼女は、昼間の防衛戦に参加した『第01CB実験中隊』の中隊長である。少佐という階級にも関わらず、非常に若い。
「隊長、戦況は?」
扉の横で待っていた隊員が、中隊長の後を追いながら問いかけた。
彼もまたCB中隊の所属であり、現場指揮官『ジョーカー(J1)』でもある。階級は大尉だが、中隊長とは例外的にタメ口で話す仲である。
「ボロ負けね。一日足らずで北海道・九州・沖縄を見捨てたわ。四国も時間の問題でしょう」
「は?」
「もう一回言う?」
「いや、いい」
二人は二年前の前大戦を経験しており、EDF極東本部全体の実力は把握しているつもりだった。
だが『事実は小説より奇なり』。長距離レーダーを妨害されただけでこの有様である。
「ゼリス、今のEDFはこんなに無能だったか? 俺は少し信じられない」
「事実は事実よ。いくら総司令部や末端の兵士が優秀でも、間に入る司令官組が無能じゃ軍は動かない」
「二年前のレーガス総司令官が行方をくらませていた一時期、EDF全体が旧体制に戻りかけたと聞いた事がある」
「そういう『連中』がまだまだ居るって事だろね。巨大組織のクリーン化なんて無理に決まってるもの」
あまりにも腐敗していたかつてのEDF。それを軍事クーデターで覆したのがキセノ・レーガス率いる現首脳陣だ。
その後十数年の時を経て、第三次大戦時にもそれらの『膿』を取り除いた。
だが、所詮は人間である。という事なのだろうか。
「私たちは間もなく到着する第02実験中隊に後を任せ、北上しろと命令が出てるわ」
「北海道だな?」
「ええ。撤退命令に反発して残った部隊の支援活動、これが任務。それと……」
「それと?」
中隊長はようやく隊員の方に振り向き、言い放った。
「非公認任務。対巨大生物戦へ参加する事になったわ」
「……なんで非公認なのかは聞かないぞ?」
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地球は四度目となる滅亡の危機に晒されている。
しかし、守りの要となるべき極東本部は、半ば麻痺したような状態だった。
この先どうなるかは、誰も知らない……。