「…しかし、不気味な程に静かだな」
荒野を疾走する戦車。それを操縦しながらぼやく章太郞。
それに同意を示すのは、彼の妻でありPWのミキ。
「いつどこから敵が来てもおかしく無いですよねぇ…」
前日で調査はほぼできておらず、こうして2日目に突入している。
ギガンテスの上で振動に揺られながら辺りを見渡すのは結城だ。
「……」
周りを見渡しているが、操縦席の章太郞とミキと違って無言である。
今回もいつも通りに白衣だが、下にEDFの戦闘用アーマーを着ている。
「…石ノ森さん、止めて下さい」
「え?」
結城が突然止めろと言い出し、ギガンテスは停車した。
彼は完全に止まる前に降り、どこかへ向かって歩き出した。
「え、ちょ、博士?」
「敵がいました。10匹程度だと思います」
「え!?」
結城の進む先には、巨大なクレーターとも小さな盆地とも言える地形があった。
そこには確かに、巨大生物がいた。
5匹は蜘蛛、3匹は黒蟻。そして残りは2匹は…
「銀色…」
「あれが恐らく、鏡蟻でしょう」
太陽光を跳ね返し、銀色に輝く蟻がいた。
結城はリュックをおろし、兵器を準備し始めた。
「…実戦試験、ですか」
「ええ。このために開発部から色々と拝借してきました」
「え、無断でですかぁ?」
「飯綱さんが素直に渡してくれそうに無いものもありますからね」
結城の顔は、子どものように無邪気な笑顔だった。
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「まずは周りの敵を一掃しましょう。…石ノ森さん、ギガンテスはいつでも発進できるようにして下さいね」
「分かってます。これは引き撃ちしながらのパターンですよね」
「ライサンダーF程度で充分…ですよね?」
「私たちに聞かれても困りますけど…」
ミキの言葉が三点リーダを発する直前に連続した発砲音。
それが3秒ごとに何回か続き、結城が声を発する。
「……OK。蜘蛛と蟻は掃除しましたよ。これからテストに入ります」
「「はーい」」
「まずは、同じくライサンダーFを撃ってみます。…速度が随分ありますね。出して下さい」
銀色の蟻は、赤蟻とは言わないもののかなりのスピードで迫ってきていた。
結城の指示を受け、ギガンテスは勢いよく発進する。
「うぉっ、まぶしっ!」
そう言いつつ、ライサンダーFの引き金を引く。
銃声が響き、蟻に命中した…と思いきや、あらぬ方向に飛んでいった。
「……」
「…こりゃ完璧に鏡面円盤と同じ性質ですね」
後方視認用カメラを見た章太郞が言う。
「まだ分かりませんよ。何せ三次大戦ではヘラクレスが弾丸を跳ね返したんですから」
「…そんなのいましたね。結局どうやって倒したのか知りませんけど」
「あの時は大出力レーザーでしたね」
言いつつ、結城はPW用のレーザー兵器を構える。
「…やけに大きい兵器ですねぇ」
ミキがカメラを見つつ呟く。
ジェノサイド砲と同クラスの大きさならば、サイズ的には確かに大きいと言えるだろう。
「対特殊装甲用のレーザー兵器です。名前はまだありません」
「えと、ヘラクレスみたいな実弾や貧弱なレーザーを跳ね返す装甲相手の兵器って事ですか?」
「そういう…事です」
特殊な発射音が車内にも響く。
白い光が片方の鏡蟻を捉えたかと思うと、途端に爆発を起こした。
「…えっ?」
「最近になって発見された技術です。何かにぶつかる直前で爆発を起こさせる技術ですね」
「何ソレ怖い」
「とは言ってもそのままレーザーとして到達させる事もできます。…ただ、欠点として…」
結城は白い霧を細い目で見つつ言う。
「爆発させた場合は膨大な熱量の拡散によって、視界が酷く悪くなります」
「…X線のバイザーとか無いんですか?視界不良を改善するための装備として」
「いえ、要望として全く上がってこなかったもので…」
「え…」
「…分かりました。あと1匹片付けたら開発部に連絡します」
爆発は衝撃の力もあるから跳ね返せないようですね、と言いながら結城は最後の兵器を握る。
ゴテゴテと赤く塗りたくられたその蝸牛のような形状は、異質の兵器である事が伺える。
「…博士、一応聞きますけどソレは何ですか?」
「コア・ディフュージョンというものです。本来は鏡獣で実験する予定の兵器でした」
「…結局爆撃っぽいもので焼き払ってましたよね」
「これは来る『全身鏡面装甲』に対抗するために作成しておいた兵器です」
詳しい解説は地の文であるこちらで行いましょう。
とはいっても物理的な性質などを述べるつもりは一切ありません。
要は『[超高温]のマグマのようなものを[鏡面装甲が反射できない程度に拡散させて]熱で溶かす兵器』です。
訳が分からないでしょう?私にも分かりません。
「ただし欠点がいくつもあって、それが私は魅力とも思っているのですが…」
「良いですから速くして下さい!あれだけ離れてたのに追いつかれそうなんですよ!」
「…何とも、釣れないですねぇ」
言いながら、結城は引き金を引く。
久しく聞かない時限式Gランチャーの射出音に似た音が聞こえ、いかにも熱そうな赤いものが蟻に向かう。
蟻に当たった瞬間、蟻は動きを止める。
章太郞が『何が起こったのか』と聞く前に、蟻は熱したチーズのようにとろけつつ形を崩した。
「……」
「……」
「問題点は、射出する銃or砲と弾頭の問題です。どちらも規格外に程があるものですから、生産性が…」
石ノ森夫妻の絶句を華麗にスルーしつつ、欠点について語る結城。
しかしそれに興味を持つ者はなく、語りさえも通信で妨害されてしまった。
『ザッ…こちら本部。結城博士、応答せよ』
「何ですか?折角欠点について話していたのを…」
『博士、色々な部隊が本州の部隊と合流して判明した事が幾つかある』
余計な事にツッコミを入れないのは、作戦行動中な司令の声である。
『まず1つに、我々EDF極東本部に連絡を入れようにも妨害があったとのことだ』
「開発部ではありませんね。…となると、インベーダーくらいしか見当がつきませんが」
『次に、これまで確認されていたものと同じ容姿にも関わらず、異常発達している生物がいるらしい』
「と、言いますと?」
『情報が交錯していて詳しい事は分からん。しかし、レーザーを発射する百足がいるとか…』
「…二次大戦後のインベーダー兵器シミュレーターじゃないんですから」
『だが、話によるとそういった個体がいるとの事だった。博士も注意して欲しい』
「……成る程、私が妙に高揚感と恐怖心を抱いていたのはそういう理由でしたか…」
「博士、どんな内容だったんです?」
通信が終わったのを見計らい、章太郞が声をかけてくる。
結城は
「絶望の始まりです。これは日本どころじゃないかも知れませんよ」
と無表情で答えた。
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作者コメント♪
というわけで、今回も作者自ら首を絞める形となりました、ええ←
冷静に考えると、連絡が取れないとか敵の場所が分からないとかで本州まで撤退とかあり得ませんもんね…
さてさて、次はどうしたものか…