真珠湾攻撃70周年記念(?)で公開されるのでしょうか?

ほぼ同じ題名(「聯合」か「連合」かの違い)で、43年前に東宝が三船敏郎主演で製作した作品がありました。こちらは、円谷英二の特撮を売りにした戦記スペクタクルの趣がありました。と言っても、真珠湾攻撃とミッドウェイ海戦のシーンは、60年の『太平洋の嵐』からの流用でしたが(以後の東宝戦記ものも同様)。しかし、後半のソロモン沖海戦やガダルカナル島撤退、そしてラストの山本の戦死シーンなどは、新規撮影で見事な特撮の連続でした。

で、今回の作品です。宣伝文句に「戦争スペクタクル」みたいな文言が入っておりますが、戦闘シーンは割りと控えめ。どちらかというと、山本の人間ドラマが軸になっています。

三船はその後も『激動の昭和史 軍閥』とアメリカ映画『ミッドウェイ』と、合計3回も山本を演じたので、いわゆる「当たり役」と言っていいでしょう。今回は役所広司。私、以前から「今の日本映画界で山本五十六を演じるなら、役所広司あたりかな」などと(根拠はないですが)漠然と思っていたのですが、なぜか当たってしまいました。本当にふさわしいのかは私には分かりませんが。でも、映画を観ているうちに、時々役所さんの顔立ちが三船さんっぽく見えたのは気のせいでしょうか?

この映画、一人の新聞記者の視点も大きく導入されています。その記者役に玉木宏。恐らく、原作者の半藤一利がモデルなんでしょう。戦時下における報道のあり方に苦悩します。
この展開、『軍閥』で加山雄三が演じた毎日新聞の記者・新井(こちらも実在の人物がモデル)を連想させます。新井は、東条英機の独裁状態と戦局不利の真実を国民に隠している軍部のやり方に耐えかねて、日本の戦局が不利になっていることを報道します。ここでの新井と東条との対立の構図が劇的緊張感を生んでいました。さらに、連戦連勝だった開戦初頭は東条を持ち上げて国民を煽った新聞の「罪」にもきちんと言及していました。
一方、この映画の玉木記者は山本の人柄に感銘を受けるという程度の役回りですそういった点では、この作品での新聞の描き方や本筋への絡ませ方は(少なくとも『軍閥』と比べると)若干弱いという印象を受けました。

とは言え、当時の日本がいかにして戦争への道を歩むことになってしまったか、そしてその流れに抵抗しようとした山本の「良識」は、分かりやすく丁寧に描かれていて、その辺に詳しくない若い世代には勉強になるかも知れません。もっとも、実在の軍人たちの名前や役職を示す字幕(これも戦記ものの定番)がまったく出ないのは、ちょっと不親切かな?とも思いましたが。

役者さんは皆さん好演です。個人的には、新世紀ゴジラシリーズでの自衛官役や刑事役が多い中原丈雄(熊本県出身)が南雲忠一役に大出世したのが感慨深いですな。

あと、その「地味め」な戦闘シーンの特撮ですが、センスは非常にいいと思います。大半が記録映像のような雰囲気で撮られております。ミッドウェイ海戦で日本軍の空母3隻が炎上しているシーンでは、1隻ずつパンして映すという、『太平洋の嵐』(の円谷特撮)へのオマージュのようなカメラワークで撮りながら、それぞれを映す際に一瞬ピントが合わずにボヤけるというドキュメンタリー風映像にしているところがユニークです。特撮監督の佛田さん(こちらも熊本県出身)、相変わらずいい仕事してます。

不満はいくつかあるものの、まあ手堅い出来ではないかと思います。