1週間前に観せて頂いていたのですが、あれこれ忙しくて感想を書くのが今頃になってしまいました。


いやあ、やっぱり矢口監督は上手いですな。


家電メーカーで地味な立場(=窓際)にいる男性社員3人が、社長の思いつきだけで、作ったこともない2足歩行ロボットを開発し、ロボット博に出品することに。ところが、当然うまく進まない上に、ロボットは不慮の事故で大破。思い余った3人は、ロボットの外装の中にピタリと入る人間を探し出して、ロボットの中に入ってもらうことに。その、とんでもない「着ぐるみショー」の主役に抜擢されたのが、73歳の偏屈じいさん。


じいさん役は、往年のロカビリー歌手ミッキー・カーチス。本作ではエンドロールに流れる主題歌も歌ってます。まあ、古くは岡本喜八、最近では三池崇史の作品のセミレギュラーのベテラン俳優でもありし、落語家でもあるので、この主人公役はバッチリ.

ロボットおたくの女子大生に吉高由里子。トーク番組やインタビューでの不思議ちゃんぶりを見ていると、この役は彼女の「地」に一番近いんじゃないかとも思ったりします。


で、ちょっとマニアックな部分を自作に入れる矢口監督。私が見るに、今回はヒッチコックネタをいくつか注入したと推察。ロボットのことがほとんど分かっていない3人が、大学生たちの議論を通してアイデアを盗むところは『引き裂かれたカーテン』と見た(板書というところがポイント)。それに、クライマックスはモロに『●●●』だなあ(これは間違いなくネタバレになるので、詳細は自粛)。

関係ないけど、『ハッピーフライト』の時に矢口監督にインタビューした際、『サブウェイ・パニック』の話で異常に盛り上がってしまいました。


私が思うに、矢口作品の特徴のひとつは「いろんな意味でベタついていないところ」。

『スイングガールズ』では、上野樹里と平岡祐太の間に(青春ものの定石通り)恋が芽生えそうになったと思ったら、思い切りなし。

『ハッピーフライト』でも、あれだけ女性キャラがたくさん出てくるのに、恋が芽生え(そうにな)るのは、綾瀬はるかたちスッチーではなく、地上勤務の田畑智子。

このように恋愛要素に限っても、あっさりめというかベタベタしてない。


この映画でも、「人生はおろか老人会の出し物でも主役になれないじいさんの“主役“への憧れ」と「孫に相手にしてもらえないじいさんが、ロボットになることで孫たちのハートを掴む」といった“芯”があるのですが、他の監督の作品と比べると、かなりあっさりとした描き方をしているような印象を受けます。でも、観終わった時にはしっかり心に残っているんです。

こういう芸当は、なかなか出来るもんじゃない。ここが、矢口監督の「上手さ」なんでしょうな。