浅田次郎の終戦秘話ものです。


ポツダム宣言受諾が決定し日本の降伏が秒読みになった頃、陸軍将校の堺雅人、大蔵官僚出身の中尉・福士誠治、中国戦線で活躍した総長・中村獅童たちは、陸軍のお偉方から極秘任務を仰せつかる。山下奉文が手に入れた莫大な財宝を、「戦後日本の復興のために」山中の壕に運び込んで隠すこと。その労働力として、今で言えば中学生の年代の女学生たちを使う。彼女たちを引率するのは、反戦思想で要注意人物扱いを受けているユースケ・サンタマリア先生。箱の中身を「本土決戦用の新型手榴弾」と偽っていたが、純真な少女たちはこの重労働を「国のため」と信じて疑わない。それが、やがて悲劇を生むことに…。


山下将軍の財宝は出てくるわ、任務開始までの堺たちの隠密行動がスパイ・サスベンスもどきだったりと、個人的にはミョーにワクワクしてしまいましたが、そこに女学生たちの悲劇が絡むと『ひめゆりの塔』状態。。


女学生の生き残り・八千草薫と、占領軍でマッカーサーの側近だった日系人の元軍人ミッキー・カーチスの回想で話が進むのだが、それぞれ別の国にいて深い繋がりもないこの二人の回想が時折ゴチャゴチャになっているところが、ちょっとツラい。現代パートに関しては原作をかなり変えているみたいですが、その処理がよかったかどうかは疑問です。


とはいえ、軍人にしても民間人にしても、終戦のまさにその時までムダに命を落とした(落とさせられた)人たちがたくさんいたんだろうということを真摯に伝えようとしているのは伝わってきます。


で、ここからは、どうでもいい話。


堺雅人たちに司令を下す連中として、阿南陸軍大臣、東部軍の田中司令官、近衛師団の森師団長など、『日本のいちばん長い日』に登場した人物がゾロゾロ出てきますが、森師団長殺害や阿南の自決など、『長い日』では「見せ場」になっていたエピソードが(『長い日』と比べると)かなりあっさりと描かれています。


物語の中で、女学生たちが何度も歌うのが、「♪いざ来いニミッツ、マッカーサー、出てくりゃ地獄へ逆落とし~」という、非常にインパクトが強い歌詞の『比島決戦の歌』。『長い日』の鬱憤から岡本喜八が作った『肉弾』では、ナースたちが歌っていたので、ミョーに記憶に残っていました。ということで、私の中では、この歌は女子が歌う歌というイメージが出来上がってしまいました(強引)。エンドクレジットで知ったのですが、この歌の作詞は何と西条八十。伊福部さんみたいに、軍部によって「否も応もなしに」書かされたんでしょうか?


しかし、戦時中に財宝を偽装して隠匿する話と言えば、特撮映画ファンとしては『電送人間』を思い出してしまいます。だから途中で、「作業中に箱の中身を知った女学生とユースケ先生が壕に生き埋めにされるが生き延びて、戦後になって物体電送機で堺雅人たちに復讐する話」なのか?と思ってしまいました(そんなことあるか!)。まあ、そんな面倒臭いことは中丸忠雄がやってくれるでしょう。


八千草さんの女学生時代に扮していた子、どこかで見たことあるなと思っていたら、実写版ちびまる子をやった森迫永依ちゃんだった。しばらく見ないうちに大きくなってたので分からんかった(恥)。


ぱっと見コワいがが根は優しい曹長の中村獅童ははまり役。で、その66年後がの八名信夫。つまり、やっぱり獅童は悪役顏という結論(おいおい)。


しかしよく考えたら、『日本のいちばん長い日』、『肉弾』にも出てきた『比島決戦の歌』、それにミッキー・カーチスと、偶然にも非常に喜八さんの香りが強く漂う映画でした。


8月27日公開。