先週の日曜日に、娘と一緒に『午前十時の映画祭』で鑑賞してきました。


ヒッチコック映画の中で、恐らく最もハデな見せ場に満ちた作品ではないでしょうか。

この映画についても、語りだすとキリがないので、話題を限定します。


ヒッチ映画の魅力の一つに、オープニング・タイトルの面白さがあります。最近の映画の大半は、すでに始まっている物語をバックにした、正直言って味気ないものがほとんどですが、昔の映画はほとんどがオープニング・タイトルのみでした。それも、映画の物語世界を凝縮して表現したものが結構あり、そこだけでも独立して楽しめるものが多かったのです。


『007』シリーズがいまだにその流れを守っていますが、あのシリーズを観ればオープニング・タイトルの面白さが納得できるでしょう。


タイトル・デザインにも名人がいて、ヒッチとよく組んでいたのが、「タイトル・デザインの神様」(?)ことソウル・バス。作品によって見事に作風を変えて、観客を一気にその作品の世界に引きずり込んでしまいます。


この映画では、まずいきなりバックが緑一色になるところから目が離せません。グリーンをバックにMGMのライオン(確かこいつの名前も「レオ」だったような…)が吠えるヴィジュアルのインパクトは強烈です。

で、ライオンが消えると、画面の上下左右から直線(やや斜め)が伸びてきて、それに沿って主演者たちの名前が現れては消え、を繰り返し、映画のタイトルが出現。と、線を残して緑色が消え、高層ビルの窓ガラスへと変化…。私が文字にすると分かりにくいし面白くないですが、要するに格子状の線はビルの窓ガラスの枠だったということが分かります。画面は変わっても、窓枠に沿ってキャストやスタッフの名前が上や下から現れては消え…の繰り返し。つまり、スタッフやキャストの名前を窓ガラス掃除のゴンドラ(しかも超高速で移動!)にしちゃってるワケです。このシャレっ気というか遊び心がバスの作品、ひいては昔の映画のタイトルの魅力なんですね。

ちなみに、「監督:アルフレッド・ヒッチコック」の文字が消えた途端に、お約束のヒッチ登場シーンがあります。ネタバレですがすでに結構有名だし、ここの面白さも実際見ないと味わえません。


で、このタイトル部分の音楽が、映画の主人公・ロジャーの酒酔い運転や国連本部からの脱出、そしてクライマックスなど劇中で何度か流れる、いわば「ロジャーの逃走のモチーフ」の曲。ほとんどの場合、作曲のバーナード・ハーマンらしい、厚みのあるオーケストラ・サウンドで重厚に鳴り響く、いかにも活劇然とした演奏。これが、例のユニークな画面のバックに景気よく鳴り響くワケです。この時点ですでに観客のテンションはかなり上がります。まさに「つかみはOK!」(古いっ!)。


こんな調子で、映画全体も最後まで一気に見せてくれます。


今回のプリントの画質は、50年前の映画としてはかなり良い方なんでしょうが、オリジナル版のヴィスタヴィジョンなら、もっと鮮明で緻密な画面だったのだろうなあ、とちょっと寂しくなりました。ただ、よく聞いたら音響がステレオ!恐らく、最近になってドルビーデジタルにリミックスしたものなんでしょうが、それにしても、そんなプリントを使っていることに感心。


娘もかなり面白がっていたのですが、前週の『裏窓』との2週連続効果(?)で、娘は小5にしてヒッチコック映画の魅力にハマってしまったようです(困)。った父親だ…)。


ミスターYKの秘密基地(アジト)

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