ポスターなどのビジュアルから、堤真一が『白い巨塔』もどきでもやるのか?と思っていたら、まったく違いました(恥)。ここでのツツミンは、財前五郎風のクールな切れ者ではなく、医学界の慣例(という名の悪習)に挑戦する熱血医師。時代が平成になった直後に、田舎町の病院で脳死肝移植に挑戦することになります。
本当に、まったくヒネリがない熱血漢ぶりですが、そんなストレートなキャラ設定が、逆に現代では新鮮かも知れません。ちょっとヒネってあるとすれば、都はるみの歌の大ファンで、オペの最中に『アンコ椿は恋の花』なんかをBGMとしてかけたりするところでしょうか。ここら辺は、コメディもこなせるツツミンの面目躍如と言えそうです。
ヒロインの夏川結衣、素敵です。しかもナースです。たまらんです(そっちかよ)。いや、ツツミン医師に出会ったことで自分の仕事に誇りを取り戻していく様子を好演しています。
余貴美子さんも相変わらず素敵です。他にも、脇役陣がかなり充実しています。
観る前は、監督が『ミッドナイト・イーグル』の人だと聞いていたので、正直言ってほとんど期待していなかったのですが、意外な拾い物でした。
ツツミンの熱血医師ぶりも見事だったのですが、逆にツツミンの『白い巨塔』も見てみたい気がしました。私にとって財前=田宮二郎の公式はまったく崩せませんが、現代でやるんだったらツツミンがあのキャラには一番似合っているような気がします。
あと、まったくどうでもいい(というか、ヘンな)ことなんですが、冒頭の海辺の火葬場、いいなあと思いました。親など自分に近い人を送るには、一人で物思いに耽ることが出来る場所が近くにあった方がいいですね。うちの親父が焼き上がるのを待つ間、とにかくシンドかったですからね。この映画の海辺とか、小津安二郎の『小早川家の秋』の川べりの火葬場なんか、いい立地です。