サブマリン

著者:伊坂幸太郎さん

家庭裁判所調査官の武藤は貧乏くじを引くタイプ。

”「武藤さんはそういう面倒な仕事を受け持つことになっているんだよ。

星のめぐりあわせで。」”

無免許事故を起こした19歳は近親者が昔、死亡事故に遭っていたと判明。

また、15歳のパソコン少年は

「ネットの犯行予告の真偽を見破れる」と言い出す。

だが一番の問題は傍迷惑な上司・陣内の存在だった!

 

 

前作の『チルドレン』から十数年待望の「サブマリン」待ちに待った続編!!

すっごく楽しみで本屋さんで見つけたとき早速購入し数時間で読破した本です。

先日行った紀伊国屋書店で何年も経っているのに

チルドレンと並んでお薦めされていて

読み返しました。

 

今回の語り手武藤 家庭裁判所調査官。

陣内 家庭裁判所調査官で武藤の上司。

木更津安奈 家庭裁判所調査官で武藤の同僚

(3人で1チーム)

 

棚岡佑真 19歳のアルバイト少年。

小山田俊 青白い顔をした試験観察中の高校生。

田村守  棚岡佑真の幼いころの友人現在浪人生。

若林 29歳の青年、過去に自動車事故を起こしている。

 

永瀬 視覚障碍者の男性。陣内の友人。

優子 永瀬の妻で永瀬の友人

 

棚岡佑真は、佑真は両親を事故で亡くしています。そして5年後9歳、

小学生のときに交通事故で友人を亡くしています。

その事故を起こしたのは、当時19歳だった少年。

そんな彼が、10年後なぜ無免許で運転し、事故を起こしてしまったの?

 

小山田俊は「脅迫てきなことを誰かに言えちゃう人間は

自分が同じように脅迫されたらどういう気持ちになるか」を

知りたくてネットに脅迫文を投稿した脅迫者たちの

住所を割出し脅迫文を送りつけた。

“「いくら匿名を貫いても、どこかに隙はあるんだよ。」”

 

やりたい放題。言いたい放題いいパなしに見える陣内、

小学生の通学途中に防犯に出かけ小学生たちを眺めながら

 “「まぁ、こいつらも大きくなれば、身勝手で臆病な大人になるわけだ」”

本当に家庭裁判所調査官らしからぬ暴言や振舞いだけど・・・

“「いいか、もう二度と弱い奴らを狙うなよ。というか、狙わないでくれ。」”

『チルドレン』の時から数十年経っても変わらない、

大人の身勝手で、大人の都合で、大人の言い分で振り回され、

言いくるめられる子供たちの嫌悪感や寂しさ、悔しさを

しっかりと掴んで【俺はそんな大人にだけはならない】

陣内の本質は全く揺るぎがない。

そして陣内の先入観のない勝手な解釈でも真意を

つかんでいるところに、私はいつも痛快さと温かさを感じます。

 

題名になっている「サブマリン」

“彼の起こした事故は、十年経っても消えることがなく、

姿が見えない時もどこか、視界の外に潜んでいる。水中の潜水艦の如く、

そしてことあるたびに、急浮上し、若林青年に襲いかかるのだ。”

 

少年事件もニュースなどで事件を知ったときなど

ワイドショーやSNS、ネットの中で勝手に憶測や尾ひれのついた情報に

振り回されるときもあるけれど・・・

“わざとやる人、自覚的に罪を犯す人もいれば、

偶然、自分でも思いもよらぬ理由で、

もしくはやむを得ない事件に関わる人もいる。

すべてをいっしょくたにできず、さらに言えば、

「わざとかどうか」の区別もまた難しい。”

 

本書の内容のように

本当にそういったことって判断が難しいし、

どの立場に自分がいるかでも気持ちも変わってくると思う。

 

ラストにちょっと心わくわくする希望的な感じや、

永瀬の相変わらずの姿勢も

楽しく読めました。

 

「サブマリン」は、この本に出合って、

陣内のような一見無茶苦茶な家庭裁判所調査官

貧乏くじを引くタイプだけど本気で一緒に心痛めてくれる武藤のような

大人に出会って罪を抱えてたり、心のやり場が無く

グルグルした気持ちの子供たちに

「こんな大人もいるかもしれない」

「大人にも頼ってもいいかもしれない」と感じてもらえる。

そして、大人も子供だった時の気持ち思い出せればいいなと思う物語でした。

 

””の箇所は本書からの引用です。

 

「チルドレン」は以前にTVドラマや映画になっていましたが

個人的には、出来れば間宮君の陣内のすがたが見たいので

ドラマとかやってくれないものでしょうか・・・

と小さい希望も持っているのですが・・・