(前置き)

2026年2月初日から「妄想てつたび記」を書き始めました。これは、ほとんど乗り鉄経験のない鉄道好きが、行ったことのない全国の著名な鉄道路線を、行ったかのごとく想像して旅日記風に記述したものです。現在進行形風に表現して、本当に体験したかのように書いていますが、ほとんど想像の記述となります。その点をご了承いただいてご一読ください。

 

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なぜ富山県の鉄道路線なのか?

 

「妄想てつたび記」のトップバッターとして富山県を選んでみた。なぜ富山県なのか?富山県は全く縁もゆかりも無い地域である。富山と言えば、立山連峰のお膝元で、ダムで有名な黒部峡谷や海の幸で有名な富山湾というイメージしか浮かんで来ない。それが1年半ほど前から鉄道に興味を持ち始めた瞬間、なぜか富山県の名前が真っ先に浮かんで来た。思えば、鉄道に興味を持つ前、2006年から営業運転を開始したLRT(低床電車)の話題が頭の隅にあって、「そう言えば、富山県ではヨーロッパ風のかっこ良い電車が走っていたな」と思い出したことがきっかけで、富山に興味を持ち始めたようである。「なぜ富山はあんな格好良い電車を走らせようと思ったのか?」と疑問に思い、ネットで調べてみると、「鉄道王国富山」というタイトルが目についた。その記事を読んだことから、富山が鉄道王国であることを知ったのである。

 

そして富山県を選んだ理由はもう1つある。想像(夢想)しながら書く旅行記なので、行き先は自由に選べるはずで、それこそ誰もが知っていて人気のある東京山手線だとか、九州新幹線の旅だとかを選ぶこともできるのである。しかし、地方と鉄道との関係に関心があることも私が鉄道に興味を持つ理由の1つなので、鉄道を愛している地方都市富山は、私にとって特別な地域になりつつある。ということから、「妄想てつたび記」を書き始めようと思った時から、一番に富山県を取り上げて、妄想の旅に出ようと考えていた。ただ、富山は「鉄道王国」と呼ばれるだけあって、魅力的な路線がいっぱいある。一つ一つの路線を想像しながら旅していたのでは、かなり旅費と時間がかかる気がする。適当なところで打ち切ろうと思っているが、気力が続く限り多数回の連載になることは間違いないであろう。

 

愛媛松山から富山へ行くルートはどうするか考えてみた

 

私の住む四国は本州や九州と海で隔てられている分、物理的にも心理的にも本州や九州に出て行くのは遠いと感じてしまう。もちろん、飛行機を使えば日本全国どこでも近いものである。しかし、鉄道好きとすれば極力飛行機は使いたくない。鉄道趣味のために移動する時、自家用車を使うことも私は好まない。やはり鉄道を楽しむためには鉄道を利用したいものである。あるいはバスを利用したい。鉄道もバスも人との出会いと広い車窓越しに見える景色が良いのである。

 

鉄道趣味のために私が移動する時の基本的なルールは以上だが、それを踏まえて、私の住む松山市から富山市に行くのにどうすれば良いだろうか?とにかく松山市から富山は遠い。ネットで飛行機の利用を除いたルートを検索してみると、良さそうな方法として次の2つが見つかった。

 

[ルート1]

【愛媛】JR松山駅(JR特急しおかぜ10号)→ → →【岡山】JR岡山(JR新幹線さくら544号(N700系))→ →→【大阪】新大阪(JR特急サンダーバード21号)→ → → 【福井】JR敦賀(JR新幹線はくたか568号(E7系))→ → →【富山】JR富山

●JR松山駅出発 8:10  富山到着 15:10

●交通費 20,730円 

 

[ルート2]       

【愛媛】松山市駅(伊予鉄高速バス ハーバーライナー)→ → →【神戸】神姫バス三ノ宮BT→【神戸】三ノ宮(JR新快速)→ →神戸線→ →京都線→ →湖西線→ →北陸本線→ →【福井】JR敦賀(JR新幹線つるぎ28号(E7系))→ → →【富山】JR富山

●松山市駅出発 8:10    富山到着 17:03

●交通費 15,690円

 

[ルート1]は通常考えられる手段だが、[ルート2]の方がコスパが良い。また、乗換回数は、[ルート1]が4回であるのに対し、[ルート2]は2回で済む。それに、[ルート1]にある松山から岡山までのJR特急と、岡山から新大阪までの新幹線は何度も利用している路線なので、少々飽きが来ている。それに対して[ルート2]の神戸までの高速バスとJR新快速は目新しい手段である。特にJR新快速で神戸の海岸線を走るのと琵琶湖の湖西を走るのに魅力を感じた。そこで[ルート2]の方法で富山まで行くことにした。

 

鳴門大橋と明石海峡大橋

 

春も終わりかけて初夏を迎えようとする5月半ばに富山に向かって出発することにした(あくまで空想上のことだが・・・)。残雪期の立山連峰を背景にした富山鉄道を写真におさめたいからである。五月晴れの吉日、朝8時10分松山市駅発の伊予鉄高速バス「ハーバーライナー」に乗り込んだ。この高速バスは、松山から明石海峡大橋を渡り、主に神戸の中心部である三宮のJR三ノ宮駅前を経由する。 車体のカラーは2種類あって、白地に青やピンクのラインがリボンのように入ったものと、伊予鉄のコーポレートカラーであるオレンジで塗られた車体である。私が乗ったバスはオレンジであった。車内は3列に並んだブルーのシートがやや窮屈に並んでいた。このシートは思ったよりリラックスできるものであった。

 

この高速バスは昼行便なので、途中で明石海峡大橋の展望を見るのが楽しみであるが、徳島自動車はほぼ吉野川に沿って延びているので、吉野川の景色が時々見れることにも期待したい。あれやこれやと楽しみな空想を敦賀あたりまで延ばしてみた時、はたと北陸新幹線が全くの未知であることに気がついた。すると「そうだ、この旅は鉄旅なんだ!高速バスに乗っている場合じゃない」という思いに頭が飛んで、徳島自動車道からJR徳島線(よしの川ブルーライン)がよく見えそうな場所がないかと調べてみた。

 

徳島自動車道は、吉野川に沿って走るJR徳島線と多くの区間で並走しているのである。特に阿波市付近から吉野川市、徳島市にかけて列車を車窓から見ることができそうである。なるほど、三好市辺りから徳島自動車道とJR徳島線が並行しているのを確認することができた。のどかな田園風景の中を普通列車が反対方向に去って行くのも確認できた。しばらくすると、特急「剣山」がバスとしばらく並走した後過ぎ去って行った。私は何だか得したような気分になって嬉しくなった。鉄道に興味を持ってよく行き交う列車を見るようになったが、列車に出会うことを期待してもなかなか見れるものではない。特急などの特殊な車両になると余計そうである。特に四国は鉄道の便数が少ないので出会いの確率もそれだけ低くなる。

 

特急「剣山」

クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 4.0 国際 パブリック・ライセンスのもとで公表されたウィキペディアの項目2020年7月18日 下浦~牛島 撮影 キハ185系 特急剣山2号を素材として二次利用しています。

 

今回北陸に行くと、同じ地方でもまた違った光景に出会うことだろう。富山までの往路の一番の楽しみは北陸新幹線に乗ることとそこからの展望かも知れない。そんなワクワク感で興奮していると、いつの間にか吉野川サービスエリアにバスは到着していた。ここで10分の休憩を取る予定になっていたが、時間調整のために15分の休憩となった。そこで私は急いで隣接する吉野川ハイウェイオアシスに駆け込み、遊歩道から眼下に見える吉野川をスマホのカメラに収めた。この施設をゆっくり見て回る余裕はなかったが、1階のパブリックスペースにはピアノが置いてあって、誰でも自由に弾けるようになっているらしく、小学4年生ぐらいの子が今の季節を愛でるようにヴィヴァルディの四季「春」を弾いている光景に心を引かれた。その軽快なメロディーがいつまでも頭に残っていて、私は踊るように高速バスに舞い戻ることとなった。

 

吉野川SAを出れば、あと1時間弱で鳴門大橋(大鳴門海峡大橋)を見ることができる。その前に伊予鉄高速バスの「ハーバーライナー」にとっては鬼門となる場所を通らなくてはならない。この高速バスは、昨年(2025年)の7月に徳島県阿波市の徳島自動車道で中型トラックと正面衝突をし、バスが炎上する重大事故に巻き込まれたのである。この事故でトラック運転手とバスの乗客の2人が死亡し、12人が重軽傷を負ってしまった。 これは、央分離帯のない箇所でトラックが対向車線にはみ出し、高速バスと正面衝突したことから起きた事故らしい。その事故の場所がどの辺りか探り当てるために、注意深くスマホで位置情報をチェックしようと思ったが、何だか性格がねじれた人間のように思えたのでやめにした。

 

藍住インターチェンジを過ぎて10分も走らない所でJR四国の高徳線が徳島自動車道と直角に交差している。この路線は、高松と徳島を結ぶ都市間鉄道であるが、車窓風景は日本のローカル線の車窓を詰め込んだように多彩だと聞いたことがある。非電化路線であるが、時速130km運転に対応していて、特急うずしおが1時間ごとに運転されている。そう言えば、徳島県は全国で唯一電車が通っていない県だと、鉄道好きになって初めて知った。ただ、高徳線の歴史を辿ると、元々は、1916(大正5)年7月に阿波電気軌道によって開業した路線なので、やがては電化される予定であった。ところが、どんな理由かは知らないが、結局電化されることはなく、1926(大正15)年に「阿波鉄道」と改称された。そして、JR発足後の1988(昭和63)年6月に「高徳線」と改称されたようである。徳島自動車道からこの高徳線の汽車が見えないかと首を長くしたが、見ることはできなかった。この路線はそれほど長くはないが、峠越えや瀬戸内海、吉野川やレンコン畑など、バラエティ豊かな風景を窓から見るのが楽しみな路線なので、いつかはこの路線の乗り鉄を楽しみたいと思っている。

 

春の陽気に身を任せて少しうたた寝をしていると、いつの間にか徳島自動車道を通り過ぎていて、バスの中が少し騒がしくなって目が覚めた。するともうバスは鳴門大橋を渡っている最中で、車内の人々が下の海を見て騒いでいたのである。すぐに鳴門の渦潮だと直感した。私は間髪入れずに窓際に行って下を覗いてみたが、大きな渦潮は嘲笑うかのようにすでに後ろに去ろうとしている最中だった。それでも渦潮を見られたのはラッキーな方である。鳴門の渦潮は鳴門大橋の下で見られるが、いつも見られるというものではない。むしろ見られない場合の方が多いだろう。 1日2回の満潮・干潮の前後1、2時間が最適で、特に春と秋の満月や新月の大潮時が最も渦が大きくなると聞いたことがあるが、高速バスで大橋の上から見ようと思えば、よっぽどタイミングが合わないとできないことである。一瞬でも大渦潮を見られたことで、何だか今回の旅が成功したような気分になって嬉しくなった。

 

鳴門大橋

ここから写真を転載

 

気分が良いことに加えて、私はすぐにワクワクした気持ちになった。四国から淡路島に入ると明らかに空気が違ったからである。四国を高速で通っていると、快適ではあるがどこか沈んだ気分だったのである。周囲の風景もそうだが、とにかく人や車の数が少ない。しかし、淡路島に入った途端、人も車も多くなってきたのである。鳴門大橋や明石海峡大橋を含む神戸淡路鳴門自動車道は、やはり田舎から都会への大きな橋渡しとなっている。もしかすると、都会から田舎へ流入する人よりも、田舎から都会へ流出する人を増幅させているのがこの自動車道なのかも知れない。

 

四国という田舎が、京阪神方面の都会を呼び込もうと小さなあがきを見せた跡が、鳴門大橋にあるのをご存知だろうか?鳴門大橋は本来は新幹線規格の鉄道と自動車道の併用橋として計画されて1985年に開通した橋である。 全長約1629mの長さを誇る吊橋で、四国地方と近畿地方の交通の要として重要な役割を持つ。現在は道路のみが供用されていて、下部空間は鉄道用地として確保されている。完成時は上部に6車線の自動車専用道路、下部に新幹線規格の鉄道を備えた2階建て構造になる予定だったようだが、現在は道路4車線が供用されており、将来は道路2車線と鉄道2車線を追加できる構造となっているようだ。鉄道計画は凍結されているが、将来的な鉄道導入の可能性は残されていると言える。 「四国が近畿地方を呼び込もうとしているあがき」と言ったのはこのことである。

 

明石海峡大橋は、全長3911mの世界で2番目に長い吊橋である。兵庫県神戸市垂水区と淡路市岩屋を繋いでいる。高速バスの広い車窓から見える海がとても綺麗だった。春の日差しにキラキラ輝いている海面はいつまでも見ていられる。当然のことだが、高速バスからは明石海峡大橋の雄姿を遠景から見ることはできない。しかし橋上を通過している時は、大いなるものの中を通っているような空気感があった。やはり人類が造りあげた偉大な建造物である。大橋を渡り切る寸前の所に高速舞子というバスストップがあって、そこは地上50mの橋の上に位置していた。そこから明石海峡大橋を振り返るとその巨大さがよく分かった。それにしても、鳴門大橋が鉄道と自動車道の併用橋になっているのに、明石海峡大橋はなぜ自動車専用の橋になっているのだろう?鉄道と自動車道の併用橋と言えば、岡山県早島と香川県坂出市を結ぶ瀬戸大橋があるが、この橋があるのであれば、わざわざ四国に行くのに2つも鉄道と自動車道の併用橋はいらないだろうという魂胆か?3つの本州四国連絡橋を建設する際も、経済後進地域の四国に3つも橋を架ける必要があるのかという反対の声があったと聞くので、その辺の思惑が絡んでいるのかも知れない。これでは、四国新幹線など夢のまた夢であろう。永遠に実現はしないのかも知れない。

 

明石海峡大橋

ここから写真を転載

 

そうこうしているうちに、高速バスはミント神戸バスターミナルへ到着した。松山市駅からの所要時間は4時間20分ほどだったが、私にとってはあっという間の時間であった。このバスターミナルはJR三ノ宮駅の目の前にあって、鉄道とのアクセスが非常に良い。ここへはJR線、阪急神戸線、阪神本線、神戸市営地下鉄、神戸新交通ポートライナーが直結している。

 

バスターミナルからJR新快速神戸線に乗り込むのに30分もなかったが、できるだけターミナル周辺を見ておこうと思い、周囲を少しだけ散策してみた。やはり四国の街とは賑わい方が格段に違う。田舎者だと思われたくないので平静を装っていたが、やや興奮状態で、人で賑わう展望台の「舞子海上プロムナード」や「孫文記念館」の外観を見て回り、コンビニで昼食を買ってJR三ノ宮駅へと入って行った。

 

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孫文記念館

 ここから写真を転載

 

 

(あと書き)

この調子で「妄想てつたび記」を書いてしまうと、なかなか目的の富山へは着かないが、次回もJR新快速と北陸新幹線に乗って富山に行くまでの道中を綴ることになる。ま、自由気ままな空想の旅なので、ゆっくりと行くことにしたい。