平安時代 在原業平の異母兄である
 在原行平 は 天皇の怒りを買い
一時期須磨に 蟄居 していました 




その折 、 海岸に 潮汲みに来ていた
 美しい姉妹を見初め 
それぞれ 松風、 村雨と呼び愛するようになりました



この絵皿を骨董屋さんで見つけた当時は
優しい色合いの絵柄に惹かれたものの、
 肝心のこの絵の 物語性
( 松風村雨の姉妹の事など )を
正確には
理解できていませんでした


 店主からの説明も別になく
 底面には窯元などの 名はありませんでした






ですから
このお皿に描かれている右の男性が
源氏物語の須磨の巻に出てくる
行衡(ゆきひら)とは
夢にも思いませんでした



5枚あったそのお皿は 
私にとっては随分高価で 

迷っていると

お皿たちが
連れて帰って 」
と私に言っているような気が しました


意外と
重かったのですが
とてもワクワクとした気持ちで
持ち帰りました


私のライフワークは 
【源氏物語の語り 】でした

幸運にも 月1~2回は
源氏物語 の語りの依頼があるという
忙しいけれど 楽しい年でした 


大きな舞台だけでなく 
お茶席のあととか
喫茶店 やレストランの 別室
 また個人のお宅のお座敷とか

 源氏物語】 フアンの方への
「語りの出前 」という感じでした

古典の語りを
 気軽に聞いていただきたいというのが
私のモットーなので
 こんなスタイルの語りは理想的でした



【若紫 】を語っている時 
ちょうどお寺の鐘が 
ゴーンとなることがあったりして
擬音効果も 抜群



山陽電車須磨寺駅から
 徒歩5分のところにある【現光寺】 は 
光源氏の住まい跡とされていて


昔、
【源氏寺】  とも呼ばれていました





これはそのお寺のすぐ近くにある
骨董品に埋もれるような
喫茶店の2階での語りの会


一階が喫茶店で 
2階は 20人くらいが お食事できる
大きなテーブルがあるお部屋と 
お座敷がありました



毎月一回 開かれる
【 源氏物語 の語り 】
  の会に 出させていただいておりました





演目は
春 は 若紫
秋は 須磨


他に桐壺
  夕顔 
   明石など







大好きな須磨の巻は

ドナルド.キーン氏が
 【冒頭の「須磨にはいとど心づくしの秋風に」から始まる いち文は
私が知り得る最も美しい日本語表現の一つ
若い頃には
繰り返し何度も読んで暗記したものです 
この部分は須磨を舞台にした能楽松風にもほとんどそのままの形で引用されていて、日本の古典の中で一番美しい文章は須磨の巻である】と語っておられました




   ー 画像はネットでお借りしましたー



【須磨には いとど心づくしの秋風に、海は少し遠けれど、行平の中納言の『関吹きこゆる』と言ひけむ浦浪、夜よるはげにいと近く聞こえてまたなくあはれなるものはかかるところの秋なりけり】
(源氏物語須磨の巻より)

書道家の友人が
 私に書いてくださった【須磨】

惚れ惚れとするような字です



又 、原文だけでなく
 現代京ことば訳でも語ります


須磨ではひとしお心づくしの秋風が吹き染め海辺からは少し入り込んではいますけど、行平の中納言が、【関吹きこゆる】と詠んだ浦波が、夜になるとほんまについ近いとこに聞こえてきて、この上ものう悲しみをそそりますのは、こんな所の秋景色でござります 

  中井和子 現代京ことば訳 【源氏物語】より
         大修館書店発行


須磨寺の近くで
【須磨】を語る時は
身震いがするような感覚を
覚えました

物語の登場人物が この部屋に
集まってきて、
 じっと私の語りを
聞いてくれているような.....


また、須磨の地名には

【行平 町 】【衣掛町】
【松風町 】【村雨町】 
など があり とても趣があります


古典の 現代語訳 では 日本語の美しさは伝わりきらないので 私の古典の語りには必ず原文も入れています

源氏物語も
原文と
「中井和子氏の 現代京ことば訳」を 
取り入れながら四苦八苦の毎日 

もちろん語りなので台本を持たない二時間です

そして
その当時しばらくは 
難しい語りを自分のものにすることに
 没頭して いて
私はあのお皿のことを忘れかけていました 


そんなある日 
早稲田大学図書館蔵 
             のこの絵を
      偶然目にしたのです


私が持っているお皿の絵と 同じでした









【行平と松風村雨姉妹の
出会いの場面】と
 明記されているでは
ありませんか

衝撃でした!

  ー画像はネットよりお借りしましたー  





ピカソとルノワール



(少女の背景の色とピカソの瞳の色が
  全く同じ エメラルドグリーン







   ーー  次回に続きます ーー