東京マラソンが中止になるに至り、どうやら今後もしばらく続きそうなこの話題です。
本来このブログなどで取り上げる内容ではありませんが、正しい知識を仕入れる一助になればと考え、今回だけこのようなエントリを書かせていただきます。
大して人が見ないブログですが、少しでも。
- サマリ
・重症率、死亡率は現時点で不明。若く健康であれば「ほとんど」命を落とすことはないというのはおそらく正しい。ただし、それは「ゼロである」ことを意味しない。
・感染力はインフルエンザ程度か。
・「封じ込め」は不可能であり、おそらくこのまま国内に広がる可能性が高い。
・マスクや手洗いの効果も限定的である可能性がある。
・病院の機能を停止させぬよう、入院患者さんを守れるよう、発熱があってもすぐに病院へ行かないことが望ましい。
・まず、相談センターに相談する。
- 重症率、死亡率について
これは、現時点でははっきりしたことを言える人間は世界のどこにもいないと思います。
中国のデータも、症状のない感染者を含めた本当の母数は全くの不明であり、計算のしようがないからです。
今のところ、健康な60歳以下の方であればそうそう命を落とすことはないという内容はおそらく正しいです。
とはいえ、20代であっても致命的となる可能性も低いながら存在すると思われます。
油断をせずに、しかし自分に病気がなければ怖がりすぎずに日々を送りましょう、としか言えません。
- このウイルスの感染性について
このウイルスは、どうやらエアロゾル感染をする可能性があることが示されつつあります(確定ではありません)。
だとするとパニックを起こすのは本意ではないですが、マスクはおろか手洗いもそれほど大きな意味を成しません。
感染力(再生産指数)そのものは、いわゆる季節性インフルエンザと同程度のようであり、麻疹などと比べれば小さい数字です。
しかし封じ込めを行うに当たり、大きな問題があります。
それは「症状出現前にも人から人に伝播しうること」「症状がない人が多く、しかし症状がなくても人から人に伝播しうること」です。
以前中国を中心に流行したSARSや、韓国で院内感染を起こし問題になった中東呼吸器症候群(MERS)は、これらの特徴を持ちません。
感染するとほぼ間違いなく症状が出現し、多くが重症化し、かつ感染直後は人に移しません。
だから、封じ込めることが可能だったのです。
このような特徴を持つ以上、確定的なことは言えませんが「封じ込め」は不可能に近いウイルスだと考えられます。
つまり今後はどのような手を打っても、例えばあらゆる交通機関を止めたとしても、遅かれ早かれ日本国内に広がっていくことは避けられません。
したがって考えるべきは、このウイルスが社会に広がることを前提に、如何にその影響を抑えるか、です。
- 目標は院内感染を防ぐこと
ここから考えるべきは、まず院内感染を防ぐことです。
院内感染が起こると、病院そのものの機能を一部停止させざるを得ません。
実際、院内スタッフに感染者が確認された和歌山や東京都大田区の病院では、外来機能を現在ストップしています。
そうすると、もはやコロナウイルス以外の疾患を診療することすらままならなくなります。
和歌山の病院や大田区の病院は、地域においてそこまで大きな役割を担う病院ではなく、また感染が広まっていてもまだ潜伏期間のうちにあります。
ですのでその影響は顕在化していませんが、もしも地域の救急を一手に担う病院で感染が広がった場合、極めて難しい事態になります。
役割を果たすために来院した方がどんどん感染することを承知の上で機能させ続けるか、患者さんに不便をかけ、場合によって患者さんを見殺しにすることを覚悟で外来・救急を閉めるか、どちらかしかないのです。
その上、このウイルスは上記の通り一度院内に入れば排除できないと思われ、しかも入院患者さんは皆さんが基礎疾患をお持ちですので、相当な死亡率を出すことが予想されます。
- たまたまこれを見た皆様へのお願い
よって、これはいち医療従事者としてのお願いですが、まず発熱があってもすぐに病院を受診することは避けて下さい。
そもそも、このウイルスは軽症であれば病院で治療のしようがありません。
言い換えると、早期発見が治癒につながる病気ではありません。
今は隔離という扱いになるでしょうが、上記の通り、今後は全員を隔離することが不可能なくらいに感染が広まる可能性が高いと思われます。
そうなると、仮に検査をして陽性になっても、医師ができるのは次のような指示のみです。
「自宅で外に出ず安静にしてください。他人との接触は可能な限り避けて下さい。呼吸が苦しかったり、食事が摂れなかったり、だるさが非常に強いようなら、病院に連絡して下さい」
つまり、もともとこの内容を知っていれば、軽症の方が病院に来ることは「本人も大変で、周囲には感染のリスクを背負わせる」だけであり、誰にとってもメリットがないのです。
肺炎が悪化し、食事が取れなくなったり体に酸素が足りなくなった時のみ、酸素吸入や点滴(補液)をするために入院する意味が出てきます。
その時初めて来院しても、患者さんの予後(治るか、治らないか)は大きく変わらないと思われるのです。
厚労省は4日以上の風邪症状または発熱、呼吸苦、強い倦怠感がある場合(高齢者、心臓病、糖尿病、呼吸器疾患がある方は2日以上)に、病院ではなく「相談センター」に相談して指示を仰ぐようにせよという指針を出しています。
これは、上記のような根拠に基づいています。
以上にしておきます。
なお、お断りしておきますが、私は医師とは言えど感染症の専門家ではありません。
ですが、現時点でほぼ正しいであろうと思われる内容をまとめました。
少しでも知識が広まり「正しく怖がる」一助になりましたら幸いです。