これまた、以前(だいぶ前💦)WOWOWプラスで放送した1978年版『ナイル殺人事件』(Death on the Nile) を録画したまま放置していて、昨日ようやく観ました。

 

 

原作はご存じ、名探偵ポワロが活躍するアガサ・クリスティーの『ナイルに死す』

 

エジプトのナイル川をめぐる豪華客船の中で、美しき大富豪の娘リネットが何者かに殺害される事件が発生。容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員だった。(映画.comより)

 

1978年版は往年の名優ぞろいです。主人公ポワロを演じるのはピーター・ユスティノフ。ドラマで有名なデヴィッド・スーシェよりもリアルに恰幅よく、とぼけた好々爺的なポワロ像。こちらのポワロも雰囲気あるなあと思います。

 

 

殺される富豪の令嬢リネット役はロイス・チャイルズ。非常に美しくて親友ジャクリーンの恋人を略奪するのだけど、確かにこの美貌と財産にはどんな男もなびきそう。

 

 

そのジャクリーン役はミア・ファロー。とりたてて美人でもなく、むしろ恋人だったサイモンと彼を奪ったリネットを執拗に追いかけハネムーンにまでついてくる異常性をうまく醸し出し、絶対この人はヤバい、捨てて正解と思わせます。

 

 

その他、富豪の老婦人スカイラーに、私も訳した『イヴの総て』(1950) の大女優ベティ・デイヴィス。ハスキーで語尾を伸ばす独特のしゃべり方ですぐに分かります。

 

 

そのスカイラーの付き添いで看護師のバウァーズに、『ハリー・ポッター』でおなじみマクゴナガル先生役のマギー・スミス(声と顔が特徴的ですぐ分かる)。

 

 

また、作家サロメの娘ロザリー役に『ロミオとジュリエット』(1968) のオリビア・ハッセー。相変わらずお美しい。(この2年後に布施明と結婚するのね~♡)

 

 

↑今は無き「池袋スカラ座」(1995に閉館)のポスター「映画.com」より

 

 

1978年版は、名優もさることながら古い映画なので雰囲気がとても良かったです。

 

 

イギリスの伝統的な村の風景とメイドがいる古くて大きなお屋敷。そして一転、砂が舞い熱気ムンムンのエジプト、ピラミッドやアブシンベル神殿。豪華宮殿ホテル「オールド・カタラクト」とナイル川を静かに進む客船。

 

 

ホテルや客船の中の個室や調度品、金持ちの乗客たちの服装や荷物などもじっくり写され、観ていて趣がありました。

 

 

犯行のトリックには時間的にちょっと無理があるような気もするのだけど、この時代の金持ちたちはあまり走り回らず優雅に歩くので、医者を呼びに行くのに時間がかかったのかなあと思わせる雰囲気もありました。

 

 

船自体も小さめで品のあるカルナック号。実際の船は「スーダン号」を使っていて、こちらは今もナイル川クルーズで乗れるそうです。

 

 

ただし、クリスティが泊まったスイートルームは予約2年待ちですって!⤵

 

こちらはスーダン号の公式HP。動画で映画と同じような世界が観られます⤵

 

 

日本からも予約できるサイトを見ると、6~8日のクルーズだけで1人50~60万円とあります。しかも今は円安だからもっとかかるかもですね。そしてスーダン号はきっともっとお高い!(映画を観て満足しよう)魂が抜ける

 

 

同じクローズドサークルものの『オリエント急行殺人事件』に引き続きということで、この映画の最後には、他の事件の話を聞きたいというご婦人に「最近面白い経験をしました。オリエント急行で」とポワロが話していますニコニコ

 

 

2022年、ケネス・ブラナーの監督・主演でも『オリエント急行~』に引き続きこの映画が製作されました。こちらは現在 Disney+で配信中。

 

 

 

 

今回はこちらも続けて観て比べてみました。

 

 

まず、映像はさすがに新しいほうがダイナミックできれい。上からも撮るから、ピラミッドやナイル川の様子がすごくリアルに迫って来る感じがあります。

 

 

新作の船は「スーダン号」ではなく、もっと大きい客船。(犯行に)走るにはさらに時間がかかりそうなものだが滝汗

 

 

そもそも出だしからして全然別もの。

 

 

旧作はイングランドの伝統的な村(おそらくコッツウォルズではないかしら?)の素敵な風景とお屋敷から始まるのに、新作は戦場のシーンから。ポワロが顔を負傷してそれを隠すために口ひげを生やし始めた話から入り、一瞬別の映画を観てるのかと思いました。← 顔の傷はかなりえぐれてて鬚では到底隠せない感じだったが。

 


現代版ポワロのケネス・ブラナーは恰幅はイマイチでスマートな(頭の切れる)探偵像。そして、ポアロの助手役は原作と旧作ではレイス大佐ですが、新作では『オリエント急行~』の鉄道会社重役のよしみで?友人のブークを登場させています。

 

 

リネットとジャクリーンはやっぱり顔が現代的すぎる。特にジャクリーンは気が強くて美人。ミア・ファローに比べてグラマーだし、男に捨てられる感じではない滝汗

 

 

あと、最近のハリウッド映画に多い黒人の多用。オリジナルの時代を考えると、乗客は金持ちの白人ばかりという設定のほうが自然でしょう。

 

 

特に、旧作でオリビア・ハッセーが演じたロザリー役を黒人女性がやってて驚いてしまった。別に他の作品で黒人が出てくるのは全然かまわないけど、ポリコレ(政治的・社会的配慮)を意識しすぎてて何だか興ざめしましたえー?

 

 

黒人を登場させるために旧作で出てくる作家のサロメが歌手になってて(だから娘も黒人)、音楽もアメリカンジャズっぽく、どうしてもクルージングのシーンがニューオーリンズのミシシッピ川に見えてしまった。。。無気力

 

 

さらに、その黒人娘はやたらとポアロを批判して敵視する(ポアロは彼女を褒めたのに)。なんだか、余計な脚色が多すぎてとても気になりました。

 

 

ということで、私の個人的な感想としては、1作目のほうがシンプルだし上品で趣があってよかった、新作は旧作をオーバーにしただけで、内容的には越えられなかったと感じました。

 

 

でも、逆に新作を先に観た方は、旧作がシンプル過ぎて物足りないと思うかもです。機会があったら、ぜひ見比べてみてください♪

 

 

 

 

 


字幕は旧作が柴田香代子さん、新作が松浦美奈さん