前回ご紹介した映画『ナイアド~』、字幕担当は私のお師匠さんと書きましたが、その先生がおススメしてくださったのが、今回アカデミー賞の短編実写映画賞を受賞した『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』でした。

 

 

Netflixでは『奇才ヘンリー・シュガーの物語』というタイトルにもなっていますが、とても変わった映像で、ストーリーも変わっている。観終わって調べたら、原作はロアルド・ダール。それこそ、原作者が「奇才」なのでした!

 

 

 

大金持ちで働いたことことがなく、賭け事が大好きな男ヘンリー・シュガー。ある時、目を使わずにものを見ることができるという導師の存在を知った彼は、その力をギャンブルでイカサマをするために利用しようとするが……。(映画.com)

 

 

何がどう変わっているかというと、まず、登場人物たちが時々カメラ目線で語り、まるで物語をそのまま読んでいるようにト書きの部分もしゃべっていきます(「~と私は言った」など)

 

 

そして、セットが出たり入ったりする様子をそのまま見せているので、舞台上で芝居が進行しているようにも感じられるし、背景の大きな絵が次々に入れ替わる際には、まるで大きな紙芝居を観ているようにも感じられます。

 

 

目を使わずに物をみる修行をする導師やヘンリー・シュガーは、ヨガの修行中に空に浮くのですが、それは座っている箱の裏側が背景の絵と同じで透明に見えるだけ。トリックがわざとアナログでクスっと笑えます。

 

 

原題は "The Wonderful Story of Henry Sugar" ですが「ワンダフル」には「素晴らしい」の他に「不思議な、奇怪な」という意味があります。この話は「素晴らしい」というより「奇怪な」というほうがピッタリ。

 

 

ロアルド・ダールの物語は、原作を英語で読むと面白くて不思議な世界が広がります。『チャーリーとチョコレート工場』『マチルダ』など、映画も楽しいですが、原作が一番想像力をかき立てられて楽しめるのではないかと思います。

 


ネトフリではこの表題の短編だけのものと、他に『白鳥(The Swan)』『ネズミ捕りの男(The Rat Catcher)』『毒(Poison)』の3作が収録されている短編集があります。

 

 

『白鳥』は、実際にイギリスで起きたいじめ事件が題材になっているようで、かつていじめにあっていた少年が大人になった姿で当時のことを語るという形を取っています。

 

 

『ネズミ捕りの男』は、これまた昔、どの家にもネズミが出て駆除に苦労した実際の話が元になっているようですが、ちょっと気色悪い話でした。

 

 

『毒』は、ヘンリー・シュガーも演じたベネディクト・カンバーバッチが、寝ながら本を読んでいる時、毒蛇に腹の上で寝られて動けなくなるという男を演じています。(同居の?)友人が帰宅して異変に気づき、医者を呼びに行き、みんなで彼を救おうとするのですが…という話。

 

 

どれも不思議なストーリーでした。

 

 

こちらの短編集の字幕者名は、風間綾平先生と石田泰子さんの2人が併記されている珍しいパターンでした。短編にしてはセリフが多くて、訳すのは大変だっただろうなあと思いました(役者も長セリフで大変そう)💦


どれも俳優たちの独白劇のようになっていて、やはり舞台っぽい演出でした。舞台でもできそうだけど、映画だといろいろな背景・風景が使えるのでより立体的というか奥行きが感じられる作品になると感じました。

 

 

タイトルバックが流れてから、ロアルド・ダールの言葉らしき「小説家になるための資質」が語られるので(吹替でもここは英語)、最後までご覧になるとよいです。

 

 

書き上げてからも満足せず

何度でも書き直すこと

 

You never be satisfied with what you have written until you've rewritten it again and again

 

 

ロアルド・ダールほどの作家でも、たくさん書き直すんだなあ、とここはとても共感できてうれしかった♪ブログも書籍も、後から何度でも読みなおして書き直す私)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり、ついでに…