現在、G20(20か国首脳会議)が行われている議長国インド。

 

 

今年、人口が14億人を超えて世界一となり、経済や科学技術の躍進が著しい新興国であると共に、古代インダス文明発祥の長い歴史と文化をもつ伝統国家でもあります。

 

 

先月は、そんなインドの近未来的なドラマと、伝統的な古典音楽のドキュメンタリー映画の字幕を担当し、やけにインドづいていました。

 

 

ドラマの配信はまだだいぶ先になると思いますが、ドキュメンタリーはすでに今月1日から「アジアンドキュメンタリーズ」で配信されたので、少しご紹介します。

 

 

タイトルは『心躍るラーガ 北インド古典音楽の旅』(原題 "Raga Revelry") です。

 

 

 

 

ドラマの2本目とちょっと重なってしまって忙しかったのですが、こちらはちらっと観たところ音楽が多くてセリフ少な目、少し楽かな~と思ったのですが、とんでもありませんでした!

 

 

何しろ、インド古典音楽については何も知らなかったので、調べ物がてんこ盛り。

 

 

そもそも、「ラーガ」とは何ぞや?というところから。今でもちゃんと理解しているとは言い難いのですが、一言で言うと「ラーガ」とはインド古典音楽の "旋律に関する理論" です。

 

 

「ラーガ」はサンスクリット語で「色彩」「感情」などの意味があり、「音の響きによって人々の心に様々な感情の彩りを与える」という精神世界の音の旋律を生むのだそうで、通常演奏されるのは200~300ほどの種類があるとされます(理論的には何千も作れる)。

 

 

また、「ラーガ」と共に大切な柱が「ターラ」です。こちらは "リズムに関する理論" ということになります。

 

 

何しろ驚いたのは、楽譜というものがない!ということです。昔からグル(師匠)に弟子入りして生活を共にしながら口頭で伝承されてきたのだそうです。

 

 

このドキュメンタリーでは、初めてこの古典音楽を体系的に子どもたちに伝えるための学校(グルクル)を作ったヴィジェイ・キチュル氏の話を中心に、音楽と楽典の旅へといざなわれていきます。

 

 

独特の旋律とリズム、西洋音楽とは違う音階(サ・レ・ガ・マ・パ・ダ・ニ)+半音階5音を持ち、一定の上昇と下降を繰り返しながら元の「サ」に戻っていきます。この主音の「サ」は音楽家によって音階の中のどの音でもよいというのも驚きでした(いったん決めたら、その曲での「サ」の音は変わらない)。

 

 

メロディーに和音や和声はなく、すべて単音で成り立っています。そして、リズムのサイクルが11音でできていて、2/3/2/4 拍で1周というのも非常に特徴的です。

 

 

こういった細かいルールがあるものの、音楽そのものは即興で歌われ演奏されます。まさに、熟練の技。

 

 

予告編でも、師匠がタカタカタカ…と口ずさんだ早口のリズムを小さい子どもが覚えて、タブラという伝統的な打楽器を叩いていますが、その正確なリズム感には圧倒されます(どうやって1回であのリズムを覚えるんだろう???)

 

 

ビートルズのジョージ・ハリスンなどがシタールの音を楽曲に取り入れ、インド古典音楽を世界に広く知らしめたとおり、これまでに多くの西洋の音楽家たちをも魅了してきました。

 

 

奥深いインド古典音楽の世界、こちらの予告編も翻訳していますので、ぜひ覗いてみてください。

 

 

最初に歌っているおじいちゃんは、当時103歳で現役の歌手でグル。3オクターブの声で3~4時間はずっと歌っていられたそうですびっくり