さて、前回呪いや魔女が出てくるメキシカン・ホラーのお話をしましたが、翻訳が終わってからは、同じく魔法世界の『ハリー・ポッター』シリーズを観直していました。

 

 

こちらはホラーではなく夢のあるファンタジーのお話ですが、なぜ今『ファンタビ』ではなく『ハリポタ』を観ているかというと、来週、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を観に行くことになったからです。

 

 

原作も翻訳本も読んだのはもう20年も前。映画も何度か観たけど、細かいところは忘れつつあったので、Netflixで一通りおさらいをしておくことにしました。

 

 

私が好きな作品は、何といっても1作目のクリス・コロンバス監督『ハリー・ポッターと賢者の石』"Harry Potter and the Philosopher's Stone" (2001)です。

 

 

原作の発表が1997年、日本語版の出版が1999年、本を読まなかった子供たちが書店に列をなして買いに行くほどの社会現象になりました。

 

 

私が読んだのは2000年だったと思います。確かにすぐに惹き込まれ、分厚い本なのにページをめくる手が止まらない面白さでした。

 

 

その翌年、映画化。あの独特の魔法世界を映画にするのは難しいだろうと思われましたが、原作のファンタジックな世界を映像に体現してあまりある、素晴らしい作品になりました。

 

 

とくに1作目は、ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフがかわいかったですね~もう、あのあどけなさと健気さがたまらなかった照れ(今はすっかりひげ面に…汗

 

 

 


印象的なシーンがたくさんあります。

 

 

ハリーは生まれてすぐ魔法使いの両親を亡くし、伯母夫婦であるダーズリー家で虐げられながら育ちますが、自分が魔法使いだと知らされていなかったため、たびたび自分の周りで起こる不思議な出来事について彼自身も理解していませんでした。動物園でのヘビとのやり取りや、いじめっ子のダドリーをやっつけるシーンはなかなか痛快。

 

 

11歳の誕生日に自分が魔法使いだと知らされ、ホグワーツ魔法学校 (Hogwarts School of Witchcraft and Wizardry) へ入学します。一気に不思議で夢のような魔法の世界が広がっていきます。入学準備のために訪れた ダイアゴン横丁(Diagon Alley) がまたリアルな雰囲気で実に楽しい音譜

 

 

迎えに来てくれた半巨人のハグリットや、列車で仲良くなったロン&ハーマイオニーとの友情。魔法学校での授業の様子やハウス(寮)ごとの競争、クィディッチという箒に乗って空中で戦うスポーツ、両親が亡くなったいきさつと宿敵ヴォルデモートとの対決…などなど。

 

 

1つの作品にしては、本当に盛りだくさん!最後を変えれば、これだけで完結作品といってもいいくらいです。著者のJ.K.ローリングも、当初この1作目の売り込みには苦労したようです(子供の読みものにしては長すぎるから)。

 

 

私は、特にクリスマスのシーンが好きです。ホグワーツに雪が降りしきる情景は本当に美しいし、ハリーの寂しい心情と相まってせつない雪の結晶

 

 

 

 

ハグリッドが雪の中もみの木を引きずっていき、幽霊たちが広間を飛び回る中、クリスマスツリーが飾られます。子供たちが一斉に家に帰れるホリデーシーズンの華やいだ雰囲気と対照的に、親がいないハリーと親が外国にいるロンは寂しくホグワーツに残ります。

 

 

でも、ハリーがプレゼントに「透明マント」(Invisible Cloak) をもらって学校内を探検するところからワクワク、ドキドキな展開に。

 

 

この時に、ハリーはある部屋で「みぞの鏡」(Mirror of Erised) 鏡を見つけて魅了されます。"erised" は "desire" の 倒語(逆さ読み)なので、訳語も「のぞみ」→「みぞの」になったのですね。

 

 

つまり、自分の深層心理で叶わないと思っている願いごとが映る鏡。ハリーはそこに亡くなった両親と自分の姿を見て、何日も何時間も鏡の前で過ごします。ハリーの深い悲しみと心の傷が描かれていて、ほろっとくる場面ですぐすん

 

 

このあともずっと、ハリーは両親がいない悲しみと対峙しながら、それを乗り越えて両親や多くの魔法使いの命を奪ったヴォルデモートと戦っていくことになり、7作目の『死の秘宝』(2011)まで続くわけですね。

 

 

この一連の大叙事詩ともいうべき大作のプロットを、ローリング女史は恋人のいたマンチェスターからロンドンに戻る列車の中でひらめいたというからすごいですよね!でも確かにイギリスはおとぎ話の宝庫。あの低い丘が続く美しい田園風景は、想像力を掻き立てる不思議な魅力がありそうです。

 

 

しかし、この時、彼女は30歳。小説家としては全く売れず、貧困の中、結婚と別れを繰り返し、流産したり母親が若くして亡くなったりして一時はうつ病になり、自殺を考えたこともあったそうです。

 

 

この体験が、物語を後半、陰鬱で悲惨なものへと変えていきました。4作目『炎のゴブレット』(2005) からは、ヴォルデモートが復活し、大切な仲間や身近な人たちが死んでいく非常にダークな展開になっていきます。このあたりが普通のファンタジーや冒険ものと違う点です。

 

 

それにしても、1話目からのいろいろ細かい伏線が最後全部(と思うのですが)回収されていてみごとです。さらに言うと『幻の動物とその生息地』という魔法教科書の作者で『ファンタビ』主人公のニュート・スキャマンダー(の足跡)👣 が3作目の『アズカバンの囚人』(2004) に出てきた「忍びの地図」に登場していたというのも驚きです。そこまでの構想があったとはびっくり

 

 

改めて1作目から観直して、ああ、これはこういうことだったのかと分かり、最後まで観てもまた最初から楽しめるという無限ループに…まさに魔法の世界。久しぶりに童心に戻って楽しめました。

 

 

有名な映画なので、多くの方が鑑賞したでしょうし、多くの詳しい解説ページが出ていますが、以前「翻訳裏話13 戸田奈津子さんのこと」にも書いたとおり、すでにこの作品を知らないという若者が結構いることも事実です。

 

 

確かにもう最後の作品から10年以上経ちましたもんね…驚き

 

 

戸田さんは1作目と4作目『炎のゴブレット』の字幕を担当されたようです(シリーズ全作じゃなかったんですね)。

 

 

1作目、ハグリッドの「ほ~れ」など「~」がついた字幕は、私だったら直されてしまうと思いますが、さすが大御所。それに、魔法界の言葉だからちょっといつもと違う字幕でもさほど違和感はありませんでした。

 

 

それにしても、『ハリー・ポッターシリーズ』が終わったと思ったら、すかさず『ファンタスティック・ビーストシリーズ』が始まり、昨年からは物語の19年後を描いた『呪いの子』が舞台になるという、これも何だか無限ループに入り込んだ感じになっています。

 

 

しかも、今年は豊島園跡地にハリー・ポッターのミュージアム『ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 -メイキング・オブ ハリー・ポッター』がオープン予定。これからもブームは長く続きそうですね。

 

 

 

 

とりあえず、舞台の魔法の世界も楽しんできたいと思いますビックリマーク

 

 

 

*写真はネットよりお借りしました。