一昨日、勤務先の神田外語学院のお話をしたところですが…。

 

 

実は、ずっと書きたくて書けずにいたことがもう1つあります。

 

 

なんと、大・大・大先輩の(なんていうのもおこがましいのですがあせる)映画字幕翻訳の第一人者、戸田奈津子さん が先月学校にいらっしゃって直接お会いできたのですビックリマーク照れ

 

 

これも、「勤務先に」と書くとどこだか分かってしまうので、退職するまで公表を控えてました。(やっと書ける~~)音譜

 

 

講演会は2月15日(火)の、17:15~18:45でした。

 

 

なぜいらしたかというと、戸田さんは神田外語学院のスペシャル・アドバイザーだからです。

 

 

毎年、入学式でお話をされると伺い、保護者のフリをして入り込もうかと思いつつ実行したことがなく(笑)、また私が勤務してから講演会は初めてのことで、まさに最初で最後、千載一遇のチャンスビックリマークでした。

 

 

2週間くらい前に学内の電光掲示板に出ているのを見て、即!担当の先生に掛け合い、席を予約してもらいました。ちょうど火曜の4限は授業(17:00まで)なので、そのすぐあとです音譜

 

 

学生向けに話をしてくださるのですが、講演会は戸田さんにとっても今年で最後とのこと。ここはぜひ、学生の間に潜ってでも話を聞かねば!と思ったら、始まってみれば会場の1/3くらいは教員。私たち世代では有名な方ですからね。むしろ、学生の方が戸田さんのすごさを知らなくて・・・滝汗

 

 

直前の4限の授業で、「あの 『スター・ウォーズ』 とか 『ハリー・ポッター』 とか字幕翻訳した人だよ!」 と言ったら 「その映画を知らない」って。「ええええええ~~~!!」とのけぞりましたガーン そりゃ、『地獄の黙示録』 とか 『ゴッド・ファザー』 あたりなら知らなくてもしょうがないけど、この辺ももう知らない世代になってるのか。かなりショックでしたチーン

 

 

そもそも、配信系のメディアやゲームなど、娯楽はたくさんある若者たち。TVさえ観ないんだから、コロナじゃなくてもわざわざお金出して映画観に行かなくなってますよねー。映画受難の時代…汗

 

 

私は映画館に行くと、ほとんどの洋画が戸田さんの字幕だったという世代だし、同じ字幕翻訳の世界にいる者としてあこがれの存在。朝からドキドキ、ワクワク。自分が話すんじゃないのに、落ち着かず昼もほとんど食べられず…(どんだけ~~)あせる

 

 

始まる前は、戸田さんの健康具合を心配してました。なにしろ、御年85歳とのこと。うちの母は82歳で車イス生活になり、83歳で亡くなったので、つい杖をついてるんじゃないかとか、ひょっとしたら車イスなのでは?と思ったのですが…全くお元気ビックリマーク

 

 

スッと姿勢よく歩いて入ってらして、1時間半ずっと熱く英語や仕事のことを語ってくださいましたラブラブ

 

 

戦後、何もなかった時代に突然アメリカからやってきた映画の世界に魅了された青春時代、大学を出ても女性に字幕の仕事はもらえなかったこと、しゃべれないのに英文科を出てるからと通訳をやらされて、来日したコッポラ監督を案内し、字幕をやらせてもらえたお話など…結構メディアの記事などで知ってましたが、直に伺えてよかったです。

 

 

40歳から本格的な映画の字幕を始め、そこから1,500本!歴代の興行成績の高い作品は、ほとんど戸田さんが手がけました。映画産業が盛んだった時代だったので、映画1本を1週間で仕上げ、毎週のように別の作品の依頼が来て、1年で50本翻訳したといいます。

 

 

ネットでは、戸田さんの字幕は誤訳が多いとか、情報を見ないで訳してるとか書かれているものも見かけますが、これだけの作品を短時間でさばいてきたんです。多少は仕方ないでしょう。しかも、昔は今のように映像を手元にもらえず、試写室で1~2度観ただけで翻訳しなければいけない時代もあったとか。私ならそんな神業できません(何度見ても大変なのにムリムリ)。

 

 

いや、もちろん誤訳や間違いはないに限ります。でも、どれだけ調べて見直して万全を期したつもりでも、どうしたって間違いや勘違いは毎回あります。人間だもの。

 

 

そのためにチェッカーさんがいる。でも、チェッカーさんも人間だから見落としたり、直したところが直ってないまま出たり、もよくあること。

 

 

しかも、彼女ほど大作をたくさんやってると大勢の目に触れるので、それだけ批判も受けやすい。世の中、誤訳を探すのが楽しい人もいるみたいだし…(こわっ)チーン

 

 

でも、戸田さんは気にしてないそうです。以前、インタビューでそうおっしゃってました。気にしてたら続けていけないですけど…強いなあ。

 

 

それに、とにかく毎週毎週、違う世界に入り込めて楽しかったそうです。楽しくなければ続かない。好きなことをずっと続けていけば、きっとうまくなっていく、とおっしゃってました。

 

 

そう、やってる間は座りっぱなしで、肩も凝るし腰も痛くなるし、調べ物は大変だけど、字幕翻訳は楽しい♪

 

 

母の80代での急速な老いを見て、やれるのは80までかと思ってましたが、今日のお元気な戸田さんを見て、私も元気でいられれば、生涯、好きな字幕が続けられるかも、と希望がもてました照れ

 

 

それに、あれだけの大御所なのに、下訳なし、お弟子さんなしで、すべて一人でこなされているそうで、びっくりです~~~びっくり  絶対お弟子さんがいると思いました!

 

 

女性が字幕をやるなんてとんでもないという男社会の中で、先がけとなってたくさんのいい作品を観られるように世に送り出して下さった功績は、本当に大きいものがあるし、心から感謝したいと思います。

 

 

実は、こっそり戸田さんにお手紙を書いてきたので(いわゆるファンレター?年甲斐もなく…フフフ)、講演終了後に控室に行ってお渡ししてきました。直接お会いできてめっちゃ、うれしかったですドキドキ

 

 

この時も、神田外語に勤めていてつくづくよかったなあと思いました音譜 今だから語れる、幸せなエピソードでしたスター