前回『クイーンズ・ギャンビット』について書きましたが、この『令嬢アンナの真実』も、同じ Netflix Limited Series. こちらは第1話~第9話までの9話で完結です。

 

 

 

 

原題は "Inventing Anna" ← invent は発明する、作り上げる、でっち上げ。

 

 

ドイツの大富豪の令嬢 "アンナ・デルヴェイ" として、NYの銀行家や投資家、資産家、有名人たちに取り入って金品をだまし取った、若き女詐欺師の話ですが、なんと実話なんです!

 

 

数年前にNYではかなり話題になり、連日裁判の様子がメディアやネットに乗り、衣装や出で立ちなども含めて注目されていたそうです。(アンナは裁判用にお抱えのデザイナーを雇っていた) ← なんと、HBOやNetlix などがすでにドラマ化を進めていて費用を出したとか…。

 

 

本名はアンナ・ソローキン。ロシア生まれで、のちに家族でドイツに移住。両親とも健在で、弟が1人います。

 

 

イギリスの美術学校に入学するも、ほとんど通わず。その後、フランスのファッション雑誌『Purple』でインターンとなり、そこで有名人たちと知り合ったのを皮切りに、今度はNYに現れて、上流階級の人たちとの交流が始まります。

 

 

パーティーピープルとの交流でさらに人脈を広げ写真を撮ってはインスタにアップ。「誰それの友人」ということで信用を得ていくのです。すでにインスタグラムでは数万人のフォロワーがいる有名人になっていました。

 

 

アンナ・ソローキン(「NY Wonder マガジン」より)

 

 

それにしても、大の大人たちが、しかも生き馬の目を抜くと言われるNYで、たかだが25~6歳の娘にコロッと騙されて大金を出すはてなマークはてなマークはてなマーク

 

 

と誰もが思うことでしょう。

 

 

これを『New York』誌の記者ジェシカ・プレスラーが、関係者への取材、ライカーズに拘留されていたアンナへの面会を丹念に繰り返し、経緯をたどり、なぜ大人たちが騙されたのか、いやそもそも、アンナは騙す気があったのか否か、真相を探っていきます。

 

 

この取材結果をまとめた記事 "How Anna Delvey Tricked New York's Party People" (アンナ・デルヴェイはいかにしてNYのパーティーピープルを欺いたか)が、今回のドラマの元になっています。

 

 

ドラマは、このジェシカがモデルとなった『Manhattan』誌(ドラマ上の架空の雑誌)の記者、ヴィヴィアンが接触したアンナの関係者たちの証言や回顧シーンによって構成され、日本語のサブタイトルとは別に、毎回の映像にはその話の中心人物の名前がクレジットされています。

 

 

第1話:クレジットはありませんが、このエピソードの中心人物は雑誌記者の ヴィヴィアン・ケント(Vivian)。上司には "Me Too" の記事を書くように言われますが、彼女はLAで逮捕されNYで勾留されたアンナの事件に注目し、いいネタになると踏んで取材を始めていきます。

 

 

第2話:ヴァル(Val)。彼はファッション業界で活躍する若きスタイリスト。アンナのセンスを高く評価し、彼女のことを"生まれつきの令嬢だ" と断言する。彼の話から、アンナにはチェイスという実業家で金持ちの元カレがいて、彼に付き添って世界中を旅行したり高級ホテルに泊まったりして、かなりインスパイアされていき、セレブへの道を歩み始めたと分かる。

 

 

第3話:ノラ(Nora)。大成功した実業家で慈善活動もしている大金持ちの女性。ヴァルを自分のファッションの指南役として屋敷に住まわせている。慈善活動で知り合ったチェイスとも交流があり、ある夏にチェイス、アンナも屋敷に住まわせた。この時にアンナはノラからビジネスセンスやルール、お金の使い方などを学ぶ。また、ノラに使い走りにされるたびに、彼女のクレジットカードを無断で使いこんだ。

 

 

第4話:アラン・リード(Alan Reed)。NYの大物弁護士で、アンナの事業、ADF(アンナ・デルヴェイ・ファウンデーション)というアート財団の設立に尽力する。最初は金持ちの小娘のたわごとと一蹴し協力を断るものの、何度も必死に食い下がり理想を語る彼女に、わがままで何もやろうとしない自分の娘の姿をだぶらせ、また父親からの援助を受けられない彼女を不憫に思うようになる。アンナの豊富な人脈と知略によって、まんまと騙されていく。

 

 

ここまでで、周りの華やかでお金儲けの才能があり成功した人たちから、アンナがいかに学んでいき、アンナ・デルヴェイを作り上げていったかが分かります。まさに、invent されていった過程が描かれるのです。ここまでの人物たちについては、調べた限り確認ができなかったので作品上の名前やアレンジが加えられているようです。

 

 

そして、後半戦の第5話からは、 実名で友人3人と弁護士の話が出てきて、実際のエピソードやアンナの人と成りが徐々に明らかになっていきます。

 

 

第5話:ネフ(Neff)。アンナが3か月もタダで居座ったホテル「12 George」のコンシェルジュ。実際のホテル名はソーホーにある「11 Haward」。アンナは気前よく従業員たちに毎回100ドル札でチップを渡し、ネフとも仲良くなる。レストランもショップもホテル内で済ませ、代金はすべて部屋にチャージさせたため、被害額は3万ドル以上(約350万円)ほどに膨らんだ。 ← アンナはネフにも立替させていたが、ネフのことは好きだったようで、ホテルとネフだけには後日、全額返金した。 

 

 

第6話:ケイシー(Kacy)。アンナのパーソナルトレーナー。有名人に顧客が多いため、アンナが近づいたが、ネフや次に出てくるレイチェルと共に4人でよくつるんで遊んでいた。穏やかで優しい性格。すべてが宇宙のエネルギーによって導かれていると考えている。最初は、取材を断り一切名前が出るのも嫌がっていたが、結局モロッコでの出来事について分かる範囲で話してくれる。

 

 

第7話:レイチェル(Racheal)。雑誌『Vanity Fair』のフォトジャーナリスト。アンナから全額費用を負担するからと誘われて、ケイシーやビデオ撮影に雇われた同僚ノアと共に、モロッコにある超高級リゾート「ラ・マムーニア」のリヤドに宿泊する。が、全額負担すると言っていたアンナのクレジットカードは使えず、海外送金も銀行のせいで届かないと言われ(これがいつもの手口)、自分のカードを一時的な保証用に差し出すことに。結局そのせいで全額をチャージされ、アンナからの返金がされずに大変な被害を被る(これは第6話で語られる)が、ヴィヴィアンの連絡には答えず、この話を雑誌『Vanity Fair』に発表する。

 

 

第8話:アンナ(Anna)? とサブタイトルには「はてな」が付く。というのも、誰に話を聞いてもアンナの語ることはいろいろで、本当の姿が見えてこない。彼女の正体はいったい何か?彼女がこうなったのは家族に問題があるのでは?また父親が本当はロシアの富豪かマフィアでどこかに大金を隠しているのでは?など、世間の噂の真偽を確かめるため、ヴィヴィアンはドイツに飛ぶ。アンナの近所の人たち、学校の友人、家族・・・と取材を進めて、分かった真実とは?

 

 

第9話:トッド(Todd)。逮捕され起訴されたアンナの弁護をした実在の弁護士。個人事務所でアシスタントが1人しかいないのに、多くの罪状と膨大な資料に加え、アンナのわがままに振り回され、被害者の1人ではないかと思うくらい大変な思いをし、家族を犠牲にしながらも常にアンナの味方をして支えた人。最後は刑期を短くするために策を弄す。勾留中のアンナとの怒鳴り合いは圧巻!

 

 

そして、最後にこの方たちの実際の姿が、演じた役者さんの顔と共に出てきます。この裁判のあとどうなったかもインスタから分かります。みんなアンナと関わって人生変わってしまったけど、それぞれ新たな出発ができたので結果オーライというところです。

 

 

そしてアンナは、最後まで自分が人を騙したとは思ってないし、事業の立ち上げはお金さえ貸してもらえればうまくいった、とずっと信じていました。アンナに関わった人たちはみんな彼女に魅了されていったし、ウソも本当に思える。根っからのソシオパス。詐欺の才能があったんだなあと、妙に感心させられました。

 

 

彼女は去年のちょうど昨日、仮釈放され、今は移民局に拘束されているとのことです。それを踏まえての昨日の配信かなあと思いました。