さて、2回続けて映画の話題ですが『グリーンブック』を観た後でいろいろと調べていると、『最強のふたり』という映画が結構あちこちで引き合いに出されていました。
『ドライビング・MISS・デイジー』も “白人の老婦人と黒人の運転手の心の交流と友情を25年の時の流れの中で描くドラマ”(映画.comより)とあるとおり、『グリーンブック』の逆バージョンだと思ったのですが。。。 ← 実はまだ 『MISS・デイジー』 も観ていない…
『最強のふたり』はやはり Netflix に入っていたので、先にこちらを観てみることに。2011年のフランス映画です。
ちなみに原題の "The Intouchables" も英語ではなくフランス語。英語で言えば "The Untouchables" の意味と同じだそうですが、そうすると「触れられないふたり」?
でも、このポスターの上に書かれている言葉によると、
"Sometimes you have to reach into someone else's world to find what's missing in your own." (時には、自分自身の世界にはないものを見つけに、他の人の世界に行ってみるものだ)
とあるように、普段はお互いに接触する機会がない者同士、という意味なのかもしれません。または、ハチャメチャをする「マジで触れられないふたり」なのかな?だから「最強」?
“首から下が不自由な大富豪が介護役に選んだのは、前科持ちで介護経験なしの黒人青年。共通点ゼロの2人は衝突しつつも友情を育んでいく。実話に基づく物語”(Netflixサイトより)
と、この説明だと、確かに「共通点ゼロの2人」という点と「実話に基づく物語」という点は 『グリーンブック』 と同じです。
違うのは、ドライバーが黒人で雇い主が白人。粗野なのが黒人、品があるのが白人、と逆であること(まあ、よくあるパターン)。
雇い主の白人フィリップが、パラグライダーの事故で首から下の感覚を失った障害者であること、黒人のドリスが彼のドライバーだけでなく、身の回りの世話をする介護者であること、と設定はだいぶ違います。
フィリップは、首から下を動かせないため介護が相当たいへんなのと、堅物で気難しいので、介護者がすぐに辞めてしまいます。新しい介護者を募集したところ、書類を出しに来た中に、全く場違いなドリスがいました。
ドリスは働き口を探しに来たのではなく、失業保険をもらうために不採用の書類にサインが欲しいと、それだけのために来たのでした。
粗野で失礼な態度のドリスですが、なぜかフィリップは彼に興味を持ち、周りの助手や秘書たちの反対をよそに、ドリスを雇って屋敷の中の豪華なひと部屋を与えます。
家を追い出されたばかりのドリスは、とりあえず最初の1か月は試用期間と言われ、フィリップの世話を始めることになりました。
ドリスは、言動も雑で品がなく、介護もまるでダメダメでしたが、フィリップを特別扱いせず普通に人として扱い、誰かれ構わずタメ口であるところがとても平等 (?) です。そんなところがフィリップには好ましかったのでしょう。
気難しいフィリップが、ドリスといると楽しそうでよく笑うようになります(このフィリップ役の俳優さん、笑うとダスティン・ホフマンそっくり)。
初めは眉をひそめて彼のことを胡散臭そうに見ていた周りの人も、だんだんと陽気でフレンドリー(というか厚かましい)ドリスのペースに慣れていき、試用期間が終わってもフィリップの世話をし続けることになります。
車椅子ごと車の後部座席に移す様子を見て「馬でも運ぶみたいだ」と言い、フィリップを抱きかかえて助手席に乗せたり、パラグライダーに連れ出したり…普通に考えたら、とんでもないと思われることをするドリス。
でも、障害者にしてみれば、親切でしてくれていると分かっていても、特別扱いされたり、やる前からムリだと言われることに辟易することもあるかもしれません。
今、ちょうどパラリンピックで活躍する障害者の方たちの姿を目にしますが、彼らも人一倍努力して、ごく一般的な健常者には出せないような結果や記録を出しています。
もちろん、親切にすることは大切だし、困っていたら声をかけたり手を貸すのはいいと思うけど、あまり特別扱いせず、普通に友情を育むことも大事だと気づかせてくれた映画でした。