前回のブログ「目標はできるだけ高く!」の中でも触れましたが、「速読・速聴」はトレーニング次第で鍛えられますという話。もう少し掘り下げてみたいと思います。

 

 

速聴は、音声を出す媒体のスピードを上げればいいのですが、速読は自分で目を速く動かすしかありません。

 

 

そのためには、眼球を上下左右に動かして視野を広めるトレーニングなどもありますが、実際に英文を読むときに、ただ目を素早く動かしても意味がつかめなければどうしようもありません。

 

 

意味をつかみながら速く読む方法に、チャンク・リーディングがあります。スラッシュ・リーディングともいい、高校の英語教育の場でも、もう何年も前から取り入れられているので、学校で英文にスラッシュを入れながら読む方法を教わった人もいるかと思います。

 

 

古い英語教育を受けてきた私たちの世代は、ほぼ後ろから訳して日本語にするという「訳読式」で英語を読んできました。この方法だと、英文の意味はよく理解できるようになるのだけれど、前から読んだものを、いちいち後ろからまた前に読み戻していくので、時間がかかります。

 

 

これを、頭から読んで、意味のかたまり(チャンク)ごとにスラッシュ(/をつけていくのがスラッシュ・リーディングです。日本語はやや不自然になりますが、自分の頭の中で意味が分かればいいわけで、特に時間が限られた入試やTOEIC、英検などの試験や、実際に読んですぐリスポンスしなければいけないビジネスの世界では有益な読み方と言えます。

 

 

たとえば、2019519日付の “Asahi Weekly” の記事の中からひとつ英文を読んでみましょう。「英語で案内してみよう!通訳ガイドのおもてなし指南」(著者:海生郁子さん)による、納豆を説明した一節です。

 

 

 Natto is a traditional Japanese processed food that is made from soybeans fermented by the natto-kin bacterium. In some regions, it is considered an indispensable side dish for breakfast.

↓ ↓ ↓

「納豆は、大豆を納豆菌によって発酵させた日本の伝統的な加工食品です。地方によっては朝食に欠かせない副食として普及しています。」

 

 

という文ですが、これを速く読むためには意味のかたまり(チャンク)で区切り、スラッシュをいれていきます。(もちろん頭の中で!)

 

 

Natto is / a traditional Japanese processed food / that is made from soybeans / fermented / by the natto-kin bacterium. // In some regions,/ it is considered / an indispensable side dish / for breakfast.

↓ ↓ ↓

納豆は / 伝統的な日本の加工食品で / 大豆でできている / (その大豆は)発酵されている / 納豆菌によって //  いくつかの地方では / それ(納豆)は考えられている / 欠かせない副食として / 朝食用に。

 

 

ブツブツ切りではありますが、意味は分かります。

 

 

これが慣れてくると、もう少し長めのチャンクで切れるようになります。たとえば、fermented という受け身を表す過去分詞以降、fermented by the natto-kin bacterium は大きなチャンクと捉えて読むことができますし、最後のan indispensable side dish for breakfast もつなげて一気に読めます。

 

 

このように、意味のかたまりのチャンクごとに目を動かしていき、そのスピードが上がればいいわけです。

 

 

どこがチャンクになるかというと、たとえば次の文で細かめにスラッシュを入れるとこうなります。

 

 

John and Tom / have been playing tennis / in the park / since this morning / because / they / will have / a big tennis match / held in Tokyo / this summer.

 

大まかに言うと、主語チャンク (John and Tom, they)動詞チャンク(have been playing, will have)形容詞チャンクheld in Tokyo 副詞チャンク(in the park, since this morning, this summer) などに分類されます。

 

 

これも、慣れてきて速く読めるようになれば、主語と動詞部分は一気にチャンクとなるし、名詞とそれに係る形容詞句(節)もチャンクとして読めるようになります。

 

 

また、速読のトレーニングとしては、チャンクごとに速く読む 訓練が必要ですが、同時にチャンクごとの音読練習 もしてみてください。

 

 

英検の2次試験(英語面接)では、最初のパッセージの音読の出来不出来で、その人の英語力がだいたい分かります。

 

 

英語ができる人は、意味が分かって読んでいるので、チャンクで区切って自然な読み方になります。逆にチャンクの切り方が不自然だと、意味を分かって読めていないので、次の質問にトンチンカンな答えをしてしまうのです。特に3級~2級の受験生に多く見られます。

 

 

2015/3 2級面接カード

 

 

過去問のカードを使って、最初の黙読の時に、どこで切って読むか考えましょう。練習なら上の写真のように、スラッシュやSVなどの文型、節のかかる範囲 [    ] などの記号を入れるのは効果的です。

 

 

準1級の受験生になると、さすがに英語力が高いので、変なところで区切る人はほとんどおらず、自然な英語で読んだり話したりできています。(あとは語彙力をつけて自信をもってしゃべりましょう!)

 

 

英文の自然な読み(速読も音読も)には、チャンク・リーディングが大切です。かたまりを意識して読んでみてください。