「英語ができるように(使えるように)なりたい」という場合に「勉強はいらない」という人がいます。
確かに、英文を聞く・読むは慣れたらできます。量をこなせばいいんです。語彙数を増やし、スピードをあげて大量に聞いたり読んだりすれば、いずれ分かるようになります。
が、正しく、ネイティブの人たちに誤解を与えないようなきちんとした文を、書いたり話したりするには訓練が必要です。その訓練に必要なのが、語彙力・文法力です。文法を学ぶ意義は、以前こちらに書きました。
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まず大事なのが「語順」です。日本語とは文を成り立たせる構造が違うので、日本語の順番で文を作るととんでもない文ができます。
語順についてはこれまでに文法①~⑤「5文型」で説明してきました。
今日は 「冠詞」(a / an / the) について書いていきます。
「冠詞」の概念は日本語にないので、私自身 ン十年、英語を勉強し、かつ教えてきているのに、いまだに釈然としないやっかいで不思議なものです。アメリカの大学院で論文を書いた時も必ず直されるのが冠詞でした
いったい「冠詞」とはなんぞや?
たいていの日本の文法書には、「冠詞」とは名詞の前に「つける」ものと説明されています。
a … 初めて話題に出る1つの普通名詞の前につける。
an … その普通名詞の音が母音(長く伸ばせる音=a,i,u,e,o ) の場合に an になる。
the … 前に話題に出たもの、もしくはお互いにそれとはっきりわかるもの、限定するものなどに使う。国名、橋、建物、川、には the をつけるものがあるが、つけないものもある。(つける例とつけない例がたくさん…訳わからん)
私なども文法の教科書や参考書、問題集に従って長年そのように教えてきました。
が、アメリカ人で明治大学教授のマーク・ピーターセン著『日本人の英語』には、目からうろこの説明があります。
それは「冠詞は名詞につくアクセサリーではない」ということです。
著書では、「どの名詞に a がつくか、つかないか、どの名詞にa がついてどの名詞に
the がつくか」という考え方は、滑稽で無意味だと。もし「つける」で表現するなら、「 冠詞 に名詞をつける」としか言いようがない。と書いてあります。
たとえば、これらの文の違いが分かりますか?どれも文法的には正しい英文です。
1 I ate chicken.
2 I ate a chicken.
3 I ate the chicken.
英語では、1つの具体的な形が見えるものが可算名詞 で、「1つ、2つ…」と数えます。ということは、 a をつけた2番の英文は、形のある chicken であるニワトリそのものを指しています。つまり、「私は(形のある)ニワトリを丸ごと1羽食べた」と言っているのです。
3番は、ある特定のお互いにそれと分かるもの ですから、「例のあのニワトリを食べた」となります。どちらも不気味な話ですね…。
1番の何も冠詞がない chicken が、形も大きさも決まっていない材料や食料としての「鶏肉」を表しています。
だから「どの名詞にどの冠詞が正しいか」ではなく、まずは「言いたいことありき」で 冠詞が決まり、次に名詞が来るのだということです。この場合、chicken につく冠詞はどれでも文法的には 〇 なわけで、言いたいことによって、初めに a を使うか
the を使うかが決まるのです。
また、定冠詞 the の用法ですが、先ほどの説明にもありましたが、例外が多すぎて覚えられません。これも、理屈で考えると分かりやすいとのこと。
the U.S.A = the United States of America
これで the がつくのは、国名だからではなく、states(州)という普通名詞があるからだ、と言っています。つまり、the states which are united (連合した州の集まり)ということです。
また、川の名前も、The Mississippi River と the になっているのは、river という普通名詞があるからで、これも、the river named Mississippi の意味を表している、と説明されています。
しごくスッキリです!
同様に、同じwood でも言い表したい内容によって、次のように使い分けられます。
【 a wood 】 複数種類があるうちの1つの種類の木
(例)Pine is a wood which is appropriate for tables.
「松はテーブルにピッタリの木だ」
【 woods 】 木のさまざまな種類、1つに決まらない
(例)What woods would be most appropriate to use?
「どの木を使うのがふさわしいか」
【 wood 】 木材そのもの、材料、~というもの
(例)There are several types of wood. 「いろいろな木材がある」
Wood retains a warmth of texture. 「木材は暖かな手触りを保つ」
と、言われてみればなるほど、と思います。
「冠詞をつけるか、つけないか」「a なのか the なのか」というよりは、「何を言わんとするか」がまずありきで、英語の「言いたいことから先に出す」という思考力で考えていくことが大切だということです。
また、この本には「余分な the 症候群」という項目があり、日本人が抽象名詞に the をつけ過ぎる、という指摘もあります。
ネイティブは、the とあると「どれのこと?」と思うので、文章の1番初めに the があると不安になるそうです。
「国際理解」なんて抽象的で難しそうな表現には、ついつけてしまいがちです。(The
international understanding is~. ⇒ 特に限定する「その国際理解」という意味でなければthe は不要。逆に、限定するならあっていい)
そして、「冠詞の使用不使用は 文脈 がすべて」とも言っています。
文脈次第では、the Mr. Suzuki もありえます。(「例の、あの鈴木さん」)
ということで、「冠詞」は、言いたいこと、伝えたいことによって使い方が変わるということを自分への自戒も含めてまとめてみました。詳しくは本書を読んでみてください。
よろしくお願いします。
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