「せっかくだし、少し歩かない?」

いつもの気まぐれな彼女の誘いに

今夜も笑顔で乗ってみる


いざ外に出てみると

先ほどまで暑く湿っていた空気は

いつの間にか落ち着きを取り戻し

また優しく流れる風もあるせいか

思ったより心地良く感じる


「気持ちいいね」

彼女は軽やかなステップで

僕のニ、三歩先を進んでいく

街灯に映し出された彼女の影が

不規則に地面に幾重に重なって

ぼんやりと揺らめく



うっかり口にしてしまいそうな

浅はかでとても危険な言葉を

僕は音を立てずに深く呑み込む


近くを国道を走り抜ける車の音が

遠い耳鳴りの様に夜闇にこだましている