数時間後ゆうくんが帰宅。
ソファーに座り2人で毎週楽しみに観ていた録画したドラマを再生し始めた。

🙋‍♂️「俺、荷物まとめて出て行けなんて一言も言ってないからな。」

🙋‍♀️「わたし仕事辞めたくないから出て行くよ。」

🙋‍♂️「早く仕事辞めろよ。こっちにいればお前働かなくても家のことだけやってればいいだろ。」

🙋‍♀️「散々働けって言って仕事して、今度は辞めろって勝手すぎるよ。」

🙋‍♂️「まあすぐ辞めれないなら離婚だな。」

🙋‍♀️「なら荷物まとめてすぐ出るから。最後の晩餐しよ。」

🙋‍♂️「俺今日飲み会なんだよ。」

🙋‍♀️「そうなんだ。いってらっしゃい。」

そう言って荷物をまとめるとゆうくんは冷蔵庫を開けてなにかを作り始めた。
いい匂いがした。

🙋‍♀️「飲み会なんじゃないの?」

🙋‍♂️「飲み会だよ。でも俺飲み会行くとなな可哀想だから。ななにごはん作ってる。」

🙋‍♀️「ゆうくんの飲み会なんて今に始まったことじゃないし、いつもテキトーに食べてるからこちらのことは気にしないで。」

🙋‍♂️「いや、なな可哀想だから食べて。」

そう言ってチャーハンとスプーンをテーブルに用意してくれた。

🙋‍♂️「栄養考えて野菜たくさん入れたから。なな痩せたからいっぱい食べな。」

なにが起きたのだろうか。
ゆうくんに料理を作ってもらうのは結婚してから初めてに近い。
たまに休日の朝ごはんでオムレツを作ってくれるくらいだった。

🙋‍♀️「こんなことされてもわたし許さないよ。」

🙋‍♂️「俺は仲直りしたくて作ったわけじゃないよ。なながなにも食べれなかったら可哀想だから。」

🙋‍♀️「わかった。ありがとう。」

わたしはゆうくんに優しくされたら急にお腹がすいてきた。
ごはんを作ってくれるなんて今までなかったから少しでも反省して成長してくれたのだと思った。

🙋‍♂️「今日は必ず早く帰るから。ななごめんね。」

謝られたのも初めて、この日は本当に早く帰って来た。
日付が変わる前に帰ってくるのなんて結婚してから初めてで気づいたらどこかで喜んでいるわたしがいた。

今まで「離婚して仕事を続けよう」と思っていたけど、変わっていくゆうくんに時間をかければ仕事のことを理解してくれるんじゃないかと思うようになった。

今思えばこの頃からわたしはゆうくんの「飴と鞭」に洗脳され始めていた。
DVを受けている女性の気持ちがわかった。

これがまた事件の幕開けになるなんてこの頃は思ってもいなかった…。