「今私たちの居る所は、
地球から観て、乙女座銀河団の中の渦巻き銀河の、中心部に近い位置なの」と、
ドクターが教えてくれた。
人類は、異星人にアンドロメダ、乙女座銀河に連れて行ってもらっていた。
異星人の宇宙船は,地球人の宇宙船とは違い、エンジンなどの推進力で航行するものではなかった。
光の波長に乗るというか,光そのものになって航行するということらしい。
ドクターは、アンドロメダから来ている。
地球からは、230万光年の距離だ。
ここは、地球から6000万光年離れた、乙女座銀河団の中心部に近い位置だ。
今現在は、時間の感覚は無いが、地球を出発して3000年経っているらしい・・・。
しかし,地球は2000年前に無くなってしまったと聞いた。
もう帰る地球は無い・・・。
異星人達の星は、乙女座銀河団にあるということだったが、中心部近くでは無くかなり離れた、外側に近い位置だと聞いた。
乙女座銀河では、銀河同士の衝突もあり、超新星爆発も起こり、若い星も増えてきているらしい。
地球人を救った異星人は、乙女座銀河の中でも特殊な種族らしく、知能が非常に高いと言うことだった。
戦争なども起こすことは無く,平和な世界と言うことらしい。
何処へでも瞬時に移動することが出来るため、時間の概念というものも無いということだった。
この異星人達は、地球が出来る遙か昔から存在していて、異星人の宇宙船は銀河系にも多く来ているらしい。
銀河系には,多くの生命体が居たと言うことだが、地球とは環境が違うため、姿形は全くちがうものがほとんどで、
また生きていた年代も違っていたため、地球人と会うことは無かったと、教えてくれた。
ねえドクター、僕は思ったんだけど、異星人達は時間の概念というものが無いということだけど、
それだったら、僕が地球に住んでいた頃へ、連れて行ってもらえるんじゃないかな・・・?
3000年前の地球へ、帰ってみたいんだ。
異星人に、頼んでもらえないかな・・・。
・・・。
そうね・・・。
そう思うのも、あたりまえだわ・・・。
異星人の宇宙船に乗っていれば、地球からここまですぐに来れるから・・・。
そう言うと、ドクターは黙ってしまった。
・・・。
ドクターどうしたの?
地球に戻ってみたいんだよ。
異星人には、時間の概念が無いから、過去にも戻れるんでしょ?
・・・。
よく聞いて・・・。
もう地球は無いのよ。
2000年前に、無くなってしまったのよ。
あなたの居た時代から3000年経っているの!
わかってるよ、それは!
だから、異星人の宇宙船に乗れば、時間の壁を関係なく過去に戻れるんだろ!
違うのよ、よく聞いて・・・。
あなたが地球を出発して,3000年経過してるのよ。
これはわかるでしょ。
だから、わかってるって言っているじゃないか!
いいえ、あなたはわかってないわ・・・。
地球へ戻っても・・・。
時間も空間も飛び越える事が出来ると言ったけど、
過去に戻ることは、出来ないのよ。
あなたは、地球からアンドロメダまで、当時の宇宙船に乗って来たの。
そこで、私の乗っている宇宙船に乗り換えたわけ。
あなたは、その時の記憶は無いはずよ。
薬と精神療方法で、消してしまったから。
この宇宙船に乗り換えるには、それが条件だったから、
あなたも、了解したのよ。
乙女座銀河団に行くには、アンドロメダから異星人の宇宙船に乗り換えないと、行けないから。
アンドロメダまでは、そんなに時間は掛からないで着くと、教えられたと思うんだけど、
光速で航行すると、宇宙船内の時間は地球時間に比べて、ほとんど経過しないから、
そう感じるだけ・・・。
もう地球時間は3000年経っているから、太陽系に地球は無いのよ・・・。
でも・・・。
ドクター・・・、
アンドロメダまで230万光年あるから、
光速では230万年経過しているんじゃ、ないの・・・?
あのね、あなたは地球時間で3000年掛かって、アンドロメダに着いている・・・。
こんな事言うと変だけど、あなたは3000歳・・・。
確かに地球からは、230万光年あるから、230万年掛かると思うわよね・・・。
でも実際には、そんなに掛からないのよ。
宇宙空間ではね、宇宙船の速度が光速の99.99%に達すると、変化が起き始めて、
光速に達すると、宇宙船は急に加速し始める。
そこからは、減速しない限り速度がどれくらい出ているか、わからない。
これが、本当のところなのよ・・・。
宇宙空間では、どんなことが起こるか、わからない事が多いと、言われている。
この事は、異星人から、艦長そして副艦長、ドクター達くらいにしか、知らされていない事だから、
あなたが、疑問に思うのも当然のことだわ。
乗客の人達がこういう事を知ると、パニックになってしまう場合も多いから。
乗客の健康状態などは、ドクターや医療スタッフが全て把握してるから、
あなたには、本当の事を話をしても大丈夫だとわかっているから、教えたのよ。
その時、心の中で恐怖を感じている自分が居た。
僕の顔色が変わったのが、ドクターにはわかったのだろう。
ダメよ!
悪い方に考えないで。
あなたは私に言ってくれたじゃないの。
「僕は、いつも良いほうにしか考えないよ」って
「僕はいつも、前向きに考える性格なんだ」って
大丈夫よ、私が居るから。
心配はしないで。
そう言って、ドクターは抱きしめてくれた。
抱きしめてくれたドクターの、身体の温かさを感じて、僕の気持ちは落ち着いていった。
続く。
今日も最後まで、観ていただきまして、感謝します^^