採用ネタ


マツケンサンバを鼻歌でフンフン歌いながら 

気持ちよく足の爪を切っていたのだが 

薄暗い部屋が良くなかったのか 

ふっ飛んで行った親指の爪が見つからない 

 途中で割れてしまうこともなく 

「完全体」と呼ぶにふさわしいほど綺麗に切れた爪である 

もう一度その崇高な姿を拝みたく 

諦めきれない私は愛用のプリントゴッコを取り出すと 

「私の親指の爪、求む!」と書いたチラシを50億枚印刷 

世界中の家のポストにねじ込みまくった 


 翌日
「これがあなたの爪ではありませんか?」
という手紙と共に 

見知らぬ人の親指の爪が送られてきた 

見ただけでわかる水虫の跡が残る 

実にきったねえ爪である 

確実に私の爪ではないが 

わざわざ送ってくれる親切な人もいるものだなあと 

なんとなく爪を捨てられずにいた私のもとに 

一通、また一通と 

爪入りの手紙が届き始めたではないか 


 北はグリーンランドから 

南は南極の昭和基地まで 

世界中のあらゆる場所から 

5億通の爪入り手紙が届いた 

あまりの質量に私の家は倒壊 

コンクリートの基礎は粉々になり 

地面には巨大な穴があいた 

 いくら50億枚のチラシをポスティングしたからといって 

こんなにも沢山の爪が届こうとは 

我ながら「ツメが甘い」なあと思ったのも束の間 

地面深くあいた穴の底がボコボコ言い始め 

勢いよく湧き出た温泉にふっ飛ばされて 

私は空へと舞い上がった 


 ちょうどその時
東の空から三日月が昇りました 

ああそうだ 

あの爪もちょうどこんな形をしていました 

ふっ飛んだまま行方知れずとなった私の爪は 

そう 

お月さまになったのですね 

世界中の親切な皆さんありがとう 

私の爪は今 

お空に浮かんでいますよ

ボツネタ


1月17日 土曜日

休日の朝に限って早く目が覚めてしまうものだ

午前2時

日の出まではまだ4時間以上もある


ここで違和感があった

よーく時計を見直してみると

1月17日 金曜日

と表示されている

日付は確かに変わっているのに

まだ金曜日だと言うのだ

そういえばさっき見た夢のなかで

美の女神フレイアが大塚愛を歌いながら「もういっかい!」と叫んでいたような気がしなくもないが

フレイアを語源とするFridayがもういっかいやってくるなど

あっていいものだろうか


そんなことを考えていたら気付いてしまった

これは大チャンスなのではないか?

私の部屋の壁にかかっているものも含め

世界中のありとあらゆるカレンダーでは1月17日は土曜日なのだ

つまり

世界には1つも「正しいカレンダー」が存在していないことになる

私は居ても立ってもいられず

愛用のプリントゴッコを取り出すと1月17日が金曜日になっている「正しいカレンダー」の量産に取り掛かった


「正しいカレンダー」を作ることで

ローマ皇帝ジュリアス・シーザーとアウグストゥスが7月と8月にその名を残しているがごとく

私も世界の時を支配するのである


なんとか朝までに100億冊のカレンダーを作り終えた私は

近所のコンビニからレターパックで世界中の家庭にそれらを郵送

世界の隅々まで私のカレンダーが行き渡るまで数時間といったところだろうか

大手出版社が大慌てで新しいカレンダーを作ってもこのスピード感にはかなうまい

プリントゴッコの勝利である!


こうして世界中の時を支配した私は

目論見通りに世界の支配者となった

各国の大統領、首相、王

どんな人間も私には命令できない

トイレに行ったあと手を洗わなくても怒られないし

新車の後部座席でうまい棒をボロボロこぼしながら食べても平気なのだ

私は有頂天のまま夜を迎え

ゆっくりと目を閉じ眠りに落ちた


私は夢を見た

美の女神フレイアが大塚愛を歌っている夢を

「もういっかい!」の声が響き渡った瞬間

私は冷や汗とともに飛び起きた

時計を見ると日付は変わって1月18日

金曜日、である

あのクソ女神、やってくれたな!!!

気まぐれな女神の力によって

世界はまたも金曜日を迎えていた

そう

私が昨日作った「正しいカレンダー」は

もう正しくないのだ

世界の時を支配できなければ

私はまた庶民に戻り

トイレに行ったあとは手を洗わないと怒られるし

新車の後部座席でうまい棒をボロボロこぼしたらぶん殴られることになる


私は決意した

もう一度「正しいカレンダー」を作り直して世界中にばらまくのだ

鼻息も荒く愛用のプリントゴッコを取り出した私は愕然とした

ピカッとやるためのランプはもう1つも残っていなかった

これではプリントゴッコは使えない。。。

私のカレンダー作りには「もういっかい!」が無かったようである

私はがっくりと肩を落とし

そのまま朝を迎え

ゆっくりと登る太陽を眺めた

そう

本当であれば今日

1月18日はSunday

太陽が輝くSundayなのだよ

世界は美しい

今日がたとえ

Sundayじゃなかったとしても

ボツネタ


寒い!寒すぎる!

こんなに寒い中を出かけるなんて無理がある

私はこのまま地面に穴を掘って

2月末くらいまで冬眠することにした

皆さん春にまたお会いしましょう

おやすみなさい。。。


って、終われるかーい!

凍死してしまうわ!


そうだ

ダウンジャケットが温かいのは

ふんわりと空気を含んでいるからだと聞いたことがある

空気の層をまとえば寒さなんてへっちゃらだ


私はたまたま持ち歩いていたホースの先を自分のヘソに突き刺し

もう片方を口にくわえて思いっきり息を吹き込んだ

4万CCの肺活量を発揮し

皮膚と筋肉の間の隙間に空気を充満させていく


数分後

私の体は見事

バルーンのように膨らみ

私は大量の空気を身にまとうことに成功した

やった!もう大丈夫だ!


。。。しかし

相変わらず寒いのである

それもそのはず

本来であれば体の外側に空気の層を作らなくてはいけないのに

私は内側に空気を吹き込んでしまったのだから

もろ出しの皮膚はもちろん寒いのだ


ガーン!

アタイのマヌケ!

私が舌をペロリと出して自分の頭にゲンコツをポカリとやった刹那

奇跡の風が吹いた

今日は元々強い北風が吹いているのだが

上空の気圧配置とか山とか谷とか色んな要素がすこぶる前向きに作用して

街路樹をなぎ倒し

看板を吹き飛ばすような

信じられない強さの北風が私を直撃

私はフワリと宙に浮かび上がり

そのまま風に乗って空へと舞い上がった


強い強い北風は

私をグングン南へと運んでいった

一緒に風にさらわれたのだろう

いつの間にか私にしがみついていた猫ちゃんを頭の上に乗せ

私ははるか長い距離を旅して南の海に出た


ちょうど夜が明けた


私は猫ちゃんに頼んで

爪でお腹をプスッと刺してもらって空気を抜き

南の海のど真ん中の

小さな島に降り立った

「タッカラプト ポッポルンガ プピリット パロ!」

突然背後から声がした

どうやら島の住人が

日の出の空から舞い降りた私を神だと思いこんで

祈りの呪文を唱え始めたようだ

私は急に恥ずかしくなってきた

体を風船のように膨らませて飛んできたため

私は裸なのだ

こんな姿で崇められるなんて恥ずかしすぎる

せめて下半身を隠すものくらい持ってくればよかった

困り果てた私が弱々しく

「猫ちゃーん。。。」

とつぶやいたその刹那

「にゃにゃーん!!!」

猫ちゃんは前足と後ろ足の間の皮膚をムササビのように広げ

面積を大きくして私の腰にふんどしのように飛びついた!

「なにこれあったかい!」

しっぽをクルリとのばしお尻まで隠してくれる完璧な気遣いに私は泣いた

島の住人たちも泣いた

朝日はゆっくりと昇った

極彩色の鳥が鳴いた

そうだね

今日は私の誕生日

ハッピーバースデー新しい私

今夜はすき焼きが食べたいな

なのだ