採用ネタ
マツケンサンバを鼻歌でフンフン歌いながら
気持ちよく足の爪を切っていたのだが
薄暗い部屋が良くなかったのか
ふっ飛んで行った親指の爪が見つからない
途中で割れてしまうこともなく
「完全体」と呼ぶにふさわしいほど綺麗に切れた爪である
もう一度その崇高な姿を拝みたく
諦めきれない私は愛用のプリントゴッコを取り出すと
「私の親指の爪、求む!」と書いたチラシを50億枚印刷
世界中の家のポストにねじ込みまくった
翌日
「これがあなたの爪ではありませんか?」
という手紙と共に
見知らぬ人の親指の爪が送られてきた
見ただけでわかる水虫の跡が残る
実にきったねえ爪である
確実に私の爪ではないが
わざわざ送ってくれる親切な人もいるものだなあと
なんとなく爪を捨てられずにいた私のもとに
一通、また一通と
爪入りの手紙が届き始めたではないか
北はグリーンランドから
南は南極の昭和基地まで
世界中のあらゆる場所から
5億通の爪入り手紙が届いた
あまりの質量に私の家は倒壊
コンクリートの基礎は粉々になり
地面には巨大な穴があいた
いくら50億枚のチラシをポスティングしたからといって
こんなにも沢山の爪が届こうとは
我ながら「ツメが甘い」なあと思ったのも束の間
地面深くあいた穴の底がボコボコ言い始め
勢いよく湧き出た温泉にふっ飛ばされて
私は空へと舞い上がった
ちょうどその時
東の空から三日月が昇りました
ああそうだ
あの爪もちょうどこんな形をしていました
ふっ飛んだまま行方知れずとなった私の爪は
そう
お月さまになったのですね
世界中の親切な皆さんありがとう
私の爪は今
お空に浮かんでいますよ