夫婦げんかの原因には、家事分担の負担などの生活態度、コミュニケーションエラー、お金の使い方、と様々です。



中でも、金銭をめぐる問題は、面と向かってけんかできるほどオープンなら良いですが、



どうしても具体的な金額に触れるので、お互いの収入を知らないでいる場合は、探り合いのようになって、気持ちの良いものではないですよね。



「結婚して幸せになる」「愛があるから大丈夫」、というイメージの結婚ですが、結婚とは、そもそも国の制度なのです。制度というだけに、夫婦に対して、多くの決まりごとが定められています。



実際のところ、夫婦間のお金の配分までもが法律で定められていることを、きちんと把握できている人が、どれだけいるでしょうか?



民法には、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定められています。



結婚生活の維持にかかるお金のことを法的に「婚姻費用」といい、夫婦の収入から税金と生活に必要な経費を引いて残ったお金を夫婦で平等にわけるためのものです。子どもがいれば子どもも入れて、相応に平等にわけられるのです。



お互いの収入から、どれをどちらが払うとか、お財布を分けるかひとつにするか、お小遣い制にするか精算制にするかなど、お金の使い道は、もちろん、それぞれの家庭で決めれば良いのです。



しかし、その決めたことが、どちらかにとって理不尽であったり、不平等に感じて、それを夫婦だけでは解決できず、夫婦の信頼関係が壊れて、お金をめぐって司法の場で争うことになると、驚くことに、法のもとで強制的に、お財布をひとつにされてしまうのです。



夫の所得、妻の所得、子どもの数と年齢から、家庭裁判所でほぼ機械的に算定され、所得の多い方が所得の少ない方に支払うよう、支払い命令が出されます。



その支払いは絶対的なもので、婚姻費用の支払いが滞ると、給料や預金など何でも差し押さえられてしまいますから、まともな仕事をしている人なら逃がれることは困難です。






女性の肩を持つとー

夫が高収入にも関わらず、妻には生活費として必要最低限しか入れてくれないのに、夫は多額のお金を自由に使っているのが理不尽と感じて、夫にかけあっても解決されないなら、


婚姻費用分担調停を起こせば良いのです。そうすると、第三者が客観的に、収入の多い方が少ない方に、支払い命令を出してくれます。


婚姻費用を受け取る側は、ほとんどは女性側ですが、夫が高収入であればあるほど、妻との収入差があればあるほど、妻はまとまった婚姻費用を受け取れることになります。



さらに、妻が子どもを連れて出て行けば、夫に非があるように見せて、やむにやまれず別居しているフリをして、妻と子どもの分の婚姻費用を、夫の顔も見ず、搾取し続けることができます。



こうなっても、日本の裁判所は、簡単には離婚を認めませんので、いつか離婚が認められるまでの間ずっと、受け取ることができます。



妻が働き始めて収入を得るようになれば、婚姻費用も減ることになりますが、実際は、別居中の妻が働いているかどうか、夫にはわかりませんから、延々と満額払い続けることになります。



こういうのをコンピ(婚姻費用)地獄というそうですが、別居中の妻と子どもの分の婚姻費用は、給料の3分の2ほどになるでしょうか。妻子に出ていかれた夫は、自身が稼いだ給料の3分の1しか使えません。正に地獄ですね。



コンピ地獄に陥った夫は、妻への愛がその金額に満たない、となると、夫から離婚を申し立てることになるでしょう。愛はお金ではありませんが、お金は愛なのです。



離婚するときには、婚姻期間中に築き上げた動産、不動産を含む財産を、夫と妻で概ね半分にするという運用がなされています。



さらに、夫の不貞の証拠でも掴んでおけば、夫からの慰謝料が発生しますし、不貞相手の女性からの慰謝料は、離婚成立後に請求すれば倍以上に跳ね上がることもあります。



離婚を念頭に置いているなら、夫の不貞に気がついたら、責めるのではなく、静かに、証拠を掴んで不貞相手の女性を突き止めることです。





一方で、女性が社会に出ることが珍しくなくなり、男女の所得格差がなくなってきている今、パートナーよりも高収入の女性が婚姻費用や離婚時の財産分与を支払わなければならないケースも多くなってきているそうです。



本来の結婚の意味を知った上で、あえて自分より低収入の男性と法律婚をするか、制度の枠外である事実婚も選択肢に入れるか、後悔しないようによく考えたいものですね。



男女共に意思と法律の知識がある前提なら、制度の枠の外でふたりで自由に決められる事実婚のほうがお互いに良い、ということもあるでしょう。



事実婚夫婦の子どもの権利や補償が、相続、年金や税金などが、法律婚と同等になるよう法的整備が望まれます。




男性側の肩を持つとー

結婚はお金の面では、収入の多い方が少ない方に、月々の婚姻費用と財産分与を支払って、お互いが使えるお金を平等にしよう、ということですから、



少し考えればすぐに気付くはずですが、高収入な男性ほど、専業主婦と結婚することが、あるいは、結婚や出産を機に妻が専業主婦になることが、とてつもないリスクを背負うことになる、というのは一目瞭然です。



「この女性になら、何をされても構わない」と心底思えるくらい惚れ込まないと、専業主婦とは結婚する気になれないでしょうね。家庭のことを妻任せにできる代償が、どれほど大きいリスクを生むことか。



経済的に自立して輝いている女性と、家事育児を二人三脚で共に生きて行く方が、お金のリスクも低い上に、刺激あり、夢あり、希望あり、有意義な人生になることでしょう。




あるいは、リスクを回避して結婚しない、という手もあります。が、それはオススメできません。何故なら、結婚こそ、自身のこれからの人格形成に大きく関与するからです。



結婚は、生まれ育ちの違う二人が家族として共に生きて行く、ということです。実際のところ結婚生活は、楽しいこと辛いこと様々な中で、数々の理不尽に共に向き合う作業の連続です。



環境や立場が人を作る、と言われるように、自分の思いどおりにならないことから逃げずに正面から向き合う家庭内の多くの経験が、広く深く豊かな人格を作るのです。そうして、いつの間にか、その人格でもって社会に貢献しているのですよ。



一度も結婚することなく年齢を重ねた男性は、また、結婚して子どもがいても家庭のことを奥様に任せきりにしてきた男性も、そういった経験に揉まれることがない分、許容範囲の狭い、残念な人になりがちです。



もちろん中には、人格的に素晴らしい人もおられることも事実で、おそらく結婚以外のシチュエーションで、責任をもって様々なご苦労をされてきたのではないでしょうか。



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日本は女性と子どもに対して、本当に厳しい国です。女性が輝く社会を謳いながら、実態は、女性に「働きなさい」と言っているだけで、依然として「家事しなさい」「子どもを産み育てなさい」とも言っているのです。


また、待機児童問題、低収入のシングルマザーへの支援や、離婚後の養育費が8割も支払われていないことの対処も進んでいるとは言えません。



文化や社会通念や体制が変わらないまま法律と仕事が変わった今、女性にとって苦しい時代ですが、男性に媚びることなく組織のトップになるような女性が増えたら、また、男女ともに子育てと仕事を両立する経験をもつ人が増えたら、日本はもっと変わっていくはずです。



今が、未熟な社会から成熟した社会に進化していく過渡期だとすれば、大事なのは、私たちの手で地道に、家庭内での平等を作っていくことではないでしょうか。