う~ん。やっぱりマカオだな~、マカオだよ‥‥。毎年恒例のマカオGPだけど、実は昨年、15年連続で取材していたマカオを欠席している。理由は、マカオGP翌日に鈴鹿でARTA FESTA が開催されて、そちらに行くことにしたから。
 しかし、ここで大後悔するハメになった。鈴鹿に移動しても、時間を見ては携帯電話からマカオの情報を引き出していると、なんと小林可夢偉選手が絶好調で、土曜日の予選レースを制したというじゃないか。こりゃ大変だ。すでに2001年に佐藤琢磨が日本人初制覇を達成しているのだが、日本人2人目のマカオ勝利は目前だ。オレは鈴鹿に居ていーのか? 自問自答し始めるとともに、いたたまれない状況に地団駄を踏み、鈴鹿にいる自分を呪った。せっかく15年も連続でマカオに行っていたのに、肝心のその瞬間をついに逃すことになるのか‥‥!?
 レースは可夢偉選手が後方に沈み、結局その悶絶は杞憂に終わるのだが、それは良かったのか、悪かったのか。でも、その時にしっかと腹に決めた。2007年は絶対にマカオに行くぞ!と。



 たった1年ぶりなのに、マカオは大変貌していた。豪華絢爛、大きなカジノが乱立し、街並みも大きく変化。話によると、マカオでギャンブルされているマネーの総額は、すでにラスベガスを越えているのだとか。まあ、あまり大金と大成功に縁のない僕としては、近づける場所でもないけれど、せめてレースだけは見せてくれ。
 今年のF3事情については、さすがに疎くなっていた。ユーロF3も数回しか見ていないし、ブリティッシュF3も見ていない。一生懸命、事前情報を仕込んでサーキットに向かう。
「あ~、お前、去年来なかっただろ?」ヨーロッパのメディアも、そういうことだけは良く覚えていた。
 今年のレースは完全に全日本勢VSヨーロッパ勢という構図だった。
 特に全日本F3を制したトムスの大嶋和也とオリバー・ジャービス、それに2年目の出場で、ユーロの名門マナー・モータースポーツからのぞむ塚越広大。フォーテックから出場する伊沢拓也。これにユーロ勢の代表格として迎え撃つ小林可夢偉‥‥。日本人選手は若干少ないがものの、誰もが上位争いを出来る実力を兼ね備えている。特に可夢偉選手には、日本、ユーロを問わずメディアが追い続ける。マカオではトヨタF1サードドライバーに内定を発表し、もっともレギュラードライバーに近いところにいる可夢偉選手。どのジャーナリストも優勝候補筆頭に挙げていた。
 木曜日からプラクティスが始まりトムスの2人と、塚越選手が好調。可夢偉選手はプラクティスからペナルティを食らうなど、ここへ来ても向かい風が吹く。
 予選でポールを取り、大嶋、塚越、アスマーなどが上位につけて、全日本勢がグリッド上位を占領したのだ。



 土曜日に行われる予選レース。レース直後に可夢偉選手はいきなりのエンジントラブル。1コーナーでは、塚越選手がもらい事故で大きく順位を落とした。
 う~ん、やっぱり難攻不落のマカオである。ブルーノ・セナも大クラッシュし、レースは赤旗終了となった。トムスのジャービスが、圧倒的なストレートの速さを武器に圧勝し、予選レースを勝利した。不運な塚越選手は、なんとか9番手からリカバーしてみせた。
 一喜一憂のレースだったが、要は決勝レースなのだ。ジャービスはフロントロウからアスマーをいったん前に出す巧みな戦略で、スリップを使って山側直前でまたトップに。大嶋もこれらに続いた。
 ジャービスがリードし、大嶋も2位に上がったが、さらにレースはセイフティカーで動くことに。後ろからはバンバン追い上げてきた塚越選手が大嶋選手の背後を狙い、タイヤが冷えてしまった大嶋選手を仕留めて2位に上がった。日本人vs.日本人の争いはヒートアップ! ジャービスは何事もなかったように、あっさり優勝をさらったが、日本人バトルは、見物だった。さらに可夢偉選手も最後尾から目を見張る追い上げをしていた。
 マカオ史上初の日本人ふたり表彰台という結果に終わった07年。これ以外にも大逆転チャンプ決定のWTCCなど盛りだくさんだった。
 おかげで今年はARTA FESTAは欠席となったけど、来年は? 絶対、マカオでしょ。 (h)