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本当に久しくこのコラムを休んでしまった。冒頭からではあるが、関係諸氏には大変ご迷惑をかけました。誠に申し訳ありません。ちょうどスーパーアグリがF1が危機を迎え、撤退した頃であったから、「マツモトさんも一緒に撤退しちゃったんですかぁ~?」というおたずねもいただいた。大丈夫、私は撤退してません。生きてます‥‥。窮状は似たり寄ったりだけどね(苦笑)。
だが、F1GPの取材と撮影を続けていても、モチベーションが上がらないのは本当だ。どんなにルイス・ハミルトンが快走しても、ライコネンがスーパーラップを叩き出しても、コバライネンが優勝しても、なぜか満足感、充実感は得られない。
弱小のスーパーアグリだったが、ポイントを取り、アロンソをオーバーテイクするような奇跡を見せられたから、心底爆発するような喜びと感激をファインダーの中に収めることが出来たんだと思う。
だからこそ、それが出来ない今は、むなしくて、寂しくて、しようがないのである。
スーパーアグリがスペインGPを最後にパドックを去ってから、3ヵ月が過ぎた。彼らがいたのは、もう遠い昔のようだ。F1の時間の流れは、マシンよりも速い。
そして、多くのみなさんが心配されているであろう、佐藤琢磨の行方である。
モナコGPには元気な姿を見せて「次にF1のパドックに現れる時は、おそらくドライバーとして戻ってくる時でしょう‥‥」とコメントしていた。それ以来F1のパドックには来ていないし、公の場所に出る回数も減ってしまった。
琢磨は、F1日本人最多出場という記録も目前にしていたし、SAF1で過ごした2年半の逆境を経験して、脂ののりきったドライバーになっていたと思う。その矢先の撤退であったから、乗りべきマシンを失ったことを本当に残念に思う。「今なら、どんなマシンでも最大限の速さを引き出して、走らせることが出来る‥‥」琢磨も自らそう言っていた。
ドライバーとしての熟成期に入っていた琢磨はいなくなってしまったが、では、いつF1に戻ってくるのだろうか? そもそもF1に戻って来れるのだろうか? F1のシートは、わずか20しかないのだ。「何チームかと交渉中ですし、話も進んでもいます。F1以外にもオープンホイールのカテゴリーやスポーツカーのお話もいただきました。でも今はF1に戻ることだけを考えてますし、そうなるように頑張っています。テストをするという話もありましたが、F1のレギュラーに戻るという可能性がなければ、テストだけというのはないでしょう‥‥」。
各チームは、そろそろ2009年に向けての陣容を発表し始めている。シートは日に日に埋まっていく。こればっかりは、われわれも朗報を待つしかなさそうだ。
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当の琢磨は、夏休みを迎えて家族と一緒に日本に一時帰国していた。7月にはイギリスでメディアとカート大会をしたり、同じく日本でも8月に富士スピードウエイでファンとカート大会を行い、元気な姿を見せた。富士では途中猛烈な雷雨が襲い、イベントが一時中断する波乱もあったが、カートレースは無事に行われ、元気な琢磨がカートをドライブする姿を見て、ファンも大喜びだった。
また琢磨もパーソナルスポンサーの挨拶回りや、メディアの取材、テレビ出演など多くの仕事をこなし、その合間にも自転車に乗ってトレーニングも欠かさなかった。「明日戻ってきて、F1に乗れ! って言われても大丈夫なように、いつでも準備は出来てますよ」と琢磨は笑う。
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幸か不幸か、夏休みを家族で過ごせる時間が出来た琢磨だが、夏を惜しむようにモナコに帰って行った。
F1はこれから終盤戦に向かう。どのドライバーも来年以降のシートを賭けて必死の思いでレースを戦うだろう。
そして間もなく日本GP。琢磨が帰って来るかどうか決まっていないが、F1デビュー以来、琢磨は日本GPを欠場したことはなかった。「ファンの前でパフォーマンスを見せられないのが本当に残念‥‥」と琢磨は言うが、琢磨を見れないファンも本当に残念がっていることだろう。
願わくば、F1が鈴鹿に戻る2009年に、琢磨も鈴鹿に戻って来てくれればいいと思う。 (h)