広報という言葉があります。
英語では、public relationsと言いますが、略してPR。
PRという略語は、私たちにとってなじみ深いものです。
どちらかというと、宣伝に近いニュアンスで使われていますが、本来はパブリックリレーションズというように、広く公に自分の信頼と理解を得ようとする活動です。
福島原発事故は、野田前首相の「収束宣言」にもかかわらず、まだ収束にはほど遠い状況で、最近も海への汚染水の流出が深刻な事態であることが分かりました。
「1リットル当たり23億5千万ベクレル」という高濃度の放射性セシウムが、敷地海側のトレンチ(地下道)にたまっていた水から検出されたことを、7月27日に東京電力が発表しました。
5月以降、観測用井戸で高濃度汚染水の検出が相次いでいましたが、東電は海への漏出をなかなか認めず、公表が遅れていたと言わざるを得ません。
そのため、規制委が自ら対策の検討に乗り出すことになったと報じられています。
東京電力の広報は、深刻な事態にもかかわらず、なるべく軽微なものという印象を与えようという姿勢が見え見えです。
汚染水が海へ漏出している問題についても、「地下水が開渠内の海水と行き来している」というような一読しただけでは何のことか良く分からないような表現をしていました。
あるいは3号機建屋から昇っている湯気については、「PCVから大気への直接アウトリーク」と表現してました。
一部の専門家を除いて、どういう現象か理解できる人は少ないでしょう。
これは、格納容器の内部の気体が外部に漏れている」ことです。
このような表現は、大震災発生の初期の官邸の発表を思い出させます。
福島原発事故が起きた当初の官邸の発表を思い出さざるを得ませんでした。
・福島第一原発で、何らかの爆発的事象があった
・放射能の濃度は直ちに健康被害を引き起こすレベルではない
・サプレッションプールと呼ばれる箇所に欠損がみられる
・・・・・・
1回聞いただけでは、深刻な事態なのかどうか分からない・・・・・・
後で、「国民がパニックに陥らないようにストレートな表現を避けた」というような言い訳(?)を聞きました。
確かにパニックは起こさなかったでしょうが、政権に対する深い不信感が残ったのではないでしょうか。
総選挙と参院選という2回の国政選挙で、民主党が惨敗ともいうべき結果に終わったのは、この不信感が原因であるように思います。
わざわざ分かり難くすることを、カモフラージュといいます。
日本語では迷彩。
自衛隊の戦闘服などに使われるパターンです。
情報に迷彩を施したのが暗号です。
有名な暗号小説に、シャーロック・ホームズの『踊る人形』というものがあります。
下図のような、一見すると何の意味がないような人形の絵が、メッセージを伝えるものだったという内容です。
暗号は、そのルールを知っている人だけに意味を伝えるものです。
一般の人には、その意味が分かりにくいものほど良くできた暗号ということになります。
東電の広報は、公に自分の信頼と理解を得るどころか、不信感の種を蒔いているようなものではないでしょうか。