第1話「衝撃的な死…」
第2話「親父の死亡診断書」
第3話「親父の居た場所」
そして午後には、親父が勤めていたタクシー会社に行くため、再び親父の住んでいた方に向かった。
前日、一般道で5時間以上かかった場所…
やはりこの日も、5時間以上かけて一般道で向かった…
今考えれば、なぜ高速道路を使わなかったのか…?
色々ありすぎて、みんな思考能力が鈍くなっていたのかも知れない…
親父の勤めていたタクシー会社に着くと、すぐに応接室に案内された。
そして対応してくれたのは、タクシー会社の社長と営業所長だった。
最初に話し出したのは所長さんだった。
「あの日…公休明けの出勤日のはずが、出勤してこない…今迄、無断欠勤なんてなかったので、身元保証人だったお兄さんのお宅に電話したんですよ…まさか、こんな事になっているとは、非常に残念です…」
「病気(糖尿病)だった事も聞いていて、インシュリンを打っているのも知っていました…」
隣の社長さんも…
「地元じゃあまり稼げないから、家族の為にこっちに出稼ぎに来たって言っていたんですよ!」
「勤務態度も真面目で、売上もよかったのに…」
と、肩を落としていた。
あの親父が真面目に仕事を…⁈
地元のタクシー運転手時代、クレームが多く、のべつサボっていた親父…
その親父が真面目に?
…かつて無謀な独立起業し、多額の借金が残ってしまった時に、それを返す為にめちゃくちゃ真面目に働いていた時期があったっけ…
親父は切羽詰まった時だけ、真面目に働く…
親父は一人ぼっちになり、相当切羽詰まっていたんだなぁ…と思った。
そして所長さんは最後にこう言ってくれた。
「本当は見習い期間中の死亡なので、社会保険の死亡給付などはないのですが、これだけ真面目に頑張った方ですから、なんとか手続きをしてみますから!」
僕らは丁重に頭を下げて、タクシー会社を後にした。
真面目に頑張った方…
真面目に頑張って、いつか家族の元に帰りたかったのかな…?
そして僕らは、次の日の親父の火葬の準備の為、またまた一般道で帰った…
続く…
今回のタクシー会社での話…
親父は本当に真面目に働いていたらしく、所長さんが僕らの為に、社会保険事務所に頼み込んで社会保険の死亡給付などの手続きを完了させてくれました。
この話の1ヶ月後に、母がもう1度タクシー会社に行った時に所長さんが、
「いや~本当に大変でしたよ!給付金の資格まで数日足りなかったんですが、なんとか頼み込んで、向こうに認めさせました!これも、○○さんのご家族の為ですよ!」
と話していたそうです。
かつて何度も職を変え、タクシー会社でも経営陣と平気で喧嘩をしていた親父でしたが、最後にこんな素晴らしい会社に入社できて、本当によかったと思いました。