おそらく、1970年代のPearl(パール楽器製造)製のスネア・ドラムと思われる。サイズは、14×6.5インチの深胴。「楽器」は、使われないのが一番可哀想だと僕は思う。

 

日本製ドラムが姿を消した昨今、昭和時代の日本製のドラムはたいへん貴重なものだ。…と思っているのは、実は僕だけのようで、この辺りの製品だと、リサイクル・ショップなどでも全く相手にされないのか、驚くほど安価なプライス・タグが付いている。

 

今回救出した個体も、そういう楽器だった。

 

 

黒いエンブレムは、70年代のものだろう。10テンションだから、中級以上のモデルかな…と、淡い期待をしてみたが、ネットで調べる限りでは、そうでもないようだ。おそらく、定価でも24,800円とかで買えた代物だと思う。

 

メタル・シェルだが材質は分からない。まさかアルミではなかろう。フツーのスチールと思われる。

 

1980年半ばごろは、パール製品をいろいろ見てきたのだけれど、70年代となると、全く詳しくないのである。

 

錆は全く出ていない。これならレストア可能と踏んで入手した。なんとアルミのハード・ケースが付いて、1万円しなかった。それでも「高い」と思う人がいてもおかしくはないのだが。

 

 

フープはフツーの薄いトリプル・フランジ(1.6mm厚)。歪みも錆もなかった。

 

パーツを全て分解し、研磨とシリコン油脂の塗布だ。研磨剤は100均のクリーム・クレンザー(オレンジ配合)、油はYAMAHAのピアノ・ユニコンである。

 

2時間ほどの作業で、綺麗に生まれ変わった。ここんとこ、仕事が忙しかったから、良いストレス解消になった。

 

 

日本製のものは、70年代のものでも錆びてないものが多い気がする。磨いたらピカピカになった。

 

 

新品ヘッドは、表面に「レモ・コーテッド・アンバサダー(スムース・ホワイト)」、裏に「レモ・アンバサダー・スネア」を装着。スナッピーもパールの新品(内面当たり)に換えた。これらは、自分の中でのド定番。

 

 

アメリカのドラム・メーカーのコピーのようなストレイナーが付いている。換装されているのかと思ったが、ちゃんと「Pearl」のロゴがあった。

 

 

かっこいい!

 

センターに溝が何本も入ったデザインが懐かしくもある。10テンションだからか、あまり安物には見えない…かな。

 

実は、驚きだったのは、外観ではないのだ。その音なのだ。キンキンと広がるようなメタル・トーンを奏でるかと思いきや、全然違って、実にまとまりのある(芯のある)音がする。ブラインド・テストしたら、10人中8人が「YAMAHA製」と答えるかもしれない。

 

近所迷惑だからあまり叩けないのが残念。

 

いやあ、いい買い物をした。さて、この楽器はいつ「使われる」ことになるのだろうか…。