ベストエフォート【べすとえふぉーと】 | ことばのチカラLite

ベストエフォート【べすとえふぉーと】

「誠に恐縮ですが、ご依頼いただいた件、まだ解決しておりません。鋭意対応中ですので、もうしばらくお待ちください。」「そうですか、わかりました。では、ベスト・エフォートで結構なので、お願いします。」

 私の脳裏に一瞬そのことばがひらがなで躍った。『べすとえふぉーと?』
 私の古ぼけた国語辞典には載っていないが、ネットの辞書で調べてみるとさすがに載っており、説明も詳しい
 〔ベスト-エフォート(best effort)は最大限の努力の意〕
 品質を保障しないデータ通信の方式。また,それを提供するサービス。通信速度などについて可能な範囲で最大の品質を確保するものの,ネットワーク全体の利用状態によっては,その品質が低下する場合もある。

 「プルルルル」電話が鳴る。「はい、あっ、お電話いただきまして、恐縮です。その件ですが、なおベスト・エフォートで対応しております。もうしばらくお待ちください。」
 そのとき、ハッとした。すでに自分のことばとして口をついて出てきたことにではなく、先ほどまで何とかがんばって成し遂げようという気になっていたのが、一気に消えうせていたことについて驚いたのだ。すでにあきらめモードになり、言い訳として使っている自分が情けなかった。

 「ベスト・エフォート」なるほど、これは大変便利なことばだ。しかし依頼する側が使うときとそれを受けた相手側が使うときとでは微妙に意味が違ってくる。最大限の努力とは自分で言うことではなく相手に評価してもらうことだからだ。
 お願いする側が使う場合は「相手への配慮」と肯定的に受け取られるが、受ける相手が最初から「『ベスト・エフォート』でがんばります」というのは「善処します」とか「トライはして見ますが、保証はできません」という意味になってしまい、「やる気はありません」と取られかねない
 便利なことばだが、注意が必要だ。